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単発シナリオ集
【invS08】巨大ナニカ移送作戦
(2011/05/31)

『もぞもぞするっ!』
 巨大ナニカの表面に描かれた文字に全員がげんなりする。
 クロスロードから北に約70km
 なに一つ無い荒野のどまんなかにぽつんとできた穴があった。
 そこに沈むのは巨大な『ナニカ』。先日まで『怪物』化していた自律防衛兵器である。
この兵器、量産能力は素晴らしいのだが、いかんせんAIと言うか性格がウザい。要らない事をべらべらと喋りまくるが、研究者たちは解析のためにそれを調べなければならないので、どうみてもからかい半分の言葉に自然とストレスが上昇していっているという具合だ。
「おそらはだめ?」
「こちらの有視界内であれば安全ですが」
「うん。そのつもり」
「では、よろしくお願いします」
「うん」
 ふわりと宙に舞う美夕。ある程度の高さまで行くと四方が遠くまで見える。
 ……まぁ、特に何も無いのだが。
「……どこまでもおんなじ」
 この世界は地球と同サイズの惑星である事が推測されている。多少空を飛んだところで見える範囲はそう変わらない。
「んー」
 きょろりと周囲を見渡してみる。広がるは荒野のみ。
「んーーー」
 ずーっと先まで目を凝らしてみるが、特に動くものも見当たらない。
「……へいわかも」
「気を抜かない方が良い」
 下方からの声に視線を向ければ
「ひぃっ!?」
 巨大な獣がぬっと横に並んできた。
「かいぶつ?」
『……一般的にはな。連中とは違うぞ』
 やや憮然とした声が返ってきて、美夕はほんの少し考え
「……そうみたいだね」
 ザザの言葉にあっさりと頷きを返す。
『……まぁ、いい。あれにちょっかい掛けるやつがいる可能性が高い。監視は怠らない方が良い』
「……やつ?」
 そこに怪物以外の何者かの存在を感じ取り、小首をひねる。
『ああ、この前の一件に怪物じゃないやつらが関わってた。
 ……正確にはどうかはわからんがな』
「そいつらがくる?」
『かもしれん』
 本当にそうかと言えば難しい所だ。
「どんなひとたち?」
『……一人らしいな。猫の獣人だとか……』
「んー?」
 美夕はその言葉にやや考えて
「じゃあこない気がするよ」
 と呟く。
『来ない……? 何故だ?』
「ねこさんなんでしょ?」
『……気まぐれとでも言いたいのか?』
「んー、というよりも、あきたらもうどっかに行っちゃうんじゃないかな」
 適当にも思える言葉だが、返す言葉も見つからずにむぅと眉根を寄せる。
『だが、警戒するに越した事は無い』
「そうだね。じゃあけいかいしてくるよ」
 言うなりその姿を戦闘機に似せたものへと返ると、彼女はぎゅんと加速して周囲を旋回し始める。
『……』
 ザザはその姿をしばらく眺め、ひとつと息を吐く。
 その先に輸送本隊が迫ってきていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ふむ」
 驚異度は「低」。その判断を下しながらスティルは拳を振う。
 巨大ナニカを運ぶための大荷物のために、近くの怪物たちがどうも寄ってくるらしい。
 今のところ致命的な怪物は出ては居ない。オークをブン殴りながら順調だと判断する。
 護衛部隊の参加者は思ったより少なかった。流石に相手がついこの前、クロスロードに恐怖をもたらした原因とあっては気が引けるのも無理は無いが。
「しかし、割り当てが多いと大変です」
 どうやらMOBの集団と当たったらしい。次々と襲い来るオークを蹴散らしながらポリゴンロボは周囲を見渡した。
 とはいえ、流石にオークごときで参るメンバーでは無いらしく、もうしばらくすればカタは付きそうだ。
 位置データを参照する。
 この戦いが終わったら辿り着くまでにそう距離はないようだ。
「予定外のトラブルが無くて何よりです」
 場合によってはと思っていたが今回についてはそんなことはなかったらしい。
「さて、もう一仕事ですね」
 オークたちの数もかなりまばらになってきた。
 スティルは手近な一匹をブン殴って前方を眺め見た。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「なんなのこれ。生物なのかしら?」
 機材の設置を手伝っていたKe=iは表面にナニカで描かれる文字にうんざりしながら表面をつついてみる。なんというか、ゴムボールのようだなぁと思う手触りだ。これが災いしてロープをうまく負けていないというのが現状だったりする。
「切ってみても良い?」
「意外と弾力があって切れないんですよ、これ。あと、斬ろうとするとそこにナニカを発生させる性質があるようで……研究者の一人が爆発しました」
「……それは厄介ね」
 自動防御と言う事だろうか意外としっかりしている
「これをクロスロードの所まで運ぶのよね?
 ……大丈夫?」
「会話はできているので何とかなるでしょう。あとは帰りに問題が無ければ、ですが」
「フラグ?」
「最近はフラグを立てまくると回避できるらしいですよ?」
「そう言う物なのかしら?」
 Ke=iは真っ白の壁を見上げて嘆息。
 本格的に参戦はしなかったがあの爆発する白の大軍は背筋が寒い思いをした。ちゃんとクロスロードの防衛をやってくれるのなら確かにありがたい戦力だろう。
「とはいえ、これが必要無い状況が一番なんだけどね」
「まったくです」
 振り返れば南側が騒がしい。
 どうやら輸送部隊と護衛部隊が到着したようだ。
「さて、ざっと3時間の帰路ね。何も無い事を祈りましょうか」
 Ke=iの言葉に隣に居た技術者は「それもフラグですよ?」と苦笑を零した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 新暦3年6の月

 クロスロード北砦の傍にでかい饅頭がひとつ鎮座する事になる。
 これがどういう結果をもたらすか。
 今のところ、誰にもわからない。

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 やふーい神衣舞だお。
 今回は特に何事もなく移動完了ということになります。
 ある意味歴史が動いた瞬間ではありますが……

 これでクロスロードは南側に『森』、北側には『(=ω=)』を有する事になります。
 面白い事にどちらもまだ完全な制御ができていない状態なのが……ね?(うひ
 ともあれ今後の展開にご期待くださいということで、ひとつw
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