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【inv02】『世界(あした)へのアプローチ』
明暗
(2010/1/7)
「どういう事だ……!」
 男は戦慄に身も声も震わせて、目前に立ちはだかる『怪物』を睨む。
 彼は重厚にして堅牢な金属鎧を纏っていた。だがそれは泥に汚れ、内外から浴びた血を黒くこびりつかしている。
 すでに両の足で立つこともできず、膝を突き、愛用の武器ポールハンマーを杖代わりに身を起こすのが精一杯という有様だ。
「イアーサ! ヨーレィン! 返事をしろっ!」
 ゼェゼェと鈍い音の混じる呼吸をしつつ声を張り上げるが、応じる仲間の声は無い。
 未だに戦いの音は響いて居るが最初の幾分の一にまで減ったか。
「バケモノ……化け物めがっ!」
 何一つ無い荒野。それがこの多重交錯世界の光景だ。だが今、彼の前には見上げるほどにそびえたそれがある。
 呆れるほどにゆっくりとした動き。だがその所以たる超質量が巻き起こす惨劇は身に心に絶望的な結果を刻み付けている。
「リーダーっ!」
 転がるように駆けてくる若い声。手にロングボウを握り締めた少女がパーティの核たる男の視界に入る。
「ヤーツェ、無事だったか……」
「みんながっ!」
「分かっている……。聞け」
 恐怖と痛みに見慣れた笑顔をぐしゃぐしゃにした少女に胸を痛めながら、彼はリーダーとしての決断を告げる。
「ヤーツェ。お前はすぐにクロスロードに戻り、管理組合にありのままを伝えろ」
「っ! でも、みんなが!」
「皆死んだ。生きていてもお前ほどに動けない」
 彼女は見てのとおりアーチャーだ。ひ弱な弓矢ではあの化け物に傷も付けられないと早々に悟ったためか、比較的傷は浅い。
「リーダーは!?」
「俺も無理だ。もう体がろくに動かん。だがお前はまだ動ける。走れる……」
「できないよっ! 私がリーダーを連れて行くから!」
「ぐずぐずするな! 行けっ!」
 立てないと言った足を腕の力だけで立たせ、脳髄を焼くような痛みを無視して仲間の少女に背を向ける。
「死ぬ事は探索者───冒険者としては最低の愚行だ。
 だが、その中でも最低最悪の「犬死」にしてくれるな」
 重鎧を貫通した衝撃は肋骨を砕いて内臓を破壊している。こみ上げてきた血をぐっと飲み込み、声を揺るがせない。
「行け。……行けぇえええええ!」

 大地が震撼した。

 一瞬の静寂。直後に巻き起こるのは石と砂の暴風。ビスビスと不快な音が恐怖と言う槍で心臓を射抜く。
 まるでミサイルでも着弾したかのような凄まじい爆風に小柄な少女の体が持つはずも無い。
 あっさりと地面を離れて木の葉のように転がる。その最中に己の体を最大に広げ、自分への飛礫を、暴風を壁の如く防ぐ姿が垣間見えた。
 とっさに身を丸めても軽く数十メートルは転がっただろうか。余すことなく痛む体で起き上がり見上げた光景。そこにはすでに信頼すべきリーダーの姿は無かった。
「う……あ……」
 膝が震えた。
 少しでも気を抜けばそのままそこで倒れてしまいそうで。そうした方が楽になるとすら思いながらも彼女はよろけるようにして一歩を踏み出す。
 彼の─────最後の願いを果たすために。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ええと……」
 愛用の魔道書を胸に抱きつつ、足元の装置を見る。
 唐草模様の風呂敷に包まれたそれはひょこひょこと左右に揺れ動いているが、駆動機がついているわけではない。
「どうした?」
 装置の下からの声。
 しゃがんで覗き込めばそこに子豚が居る事はすでに彼女の知るところである。一回覗き込んだし。
「余ってる所に同行させてもらうつもりだったんだけど……ね?」
 一人ごちて女性───セリナは苦笑いを浮かべる。
 彼女が選らんだ仕事は斥候。その主な仕事は子豚ことイベリが担いでいる観測装置を所定の場所に埋めてくる事である。
 1つ1つの大きさは野球ボール程度。これを80m間隔で埋めていく。多重交錯世界では100m以上の通信は不可能のため、こうしたリレー方式以外の方法が無いのだ。電線でも100mを超えるとダメになるのだから他に手はない。
「まさかこの子と二人と言う事はないですよねぇ?」
 自分が非力だと言う事は重々理解している。
 でもそれを補って有り余るとはどう考えても納得の仕様が無い。巨大化とか変身とかするのだろうか?
「いやお待たせして済まない」
 少しばかり不安になりつつあった頃、一台の軍用トラックが近くに停車し、運転手が声をかけてくる。
 トラックには天使の羽のマークが刻まれている。エンジェルウィングスの所有物なのだろう。
「予定が変わって少々到着が遅れた」
「予定、ですか?」
 出発時間が遅れるほどではないので気にする事でもないとは思いつつ、トラックの後ろから飛び降りたり荷物を受け渡す探索者を見る。
 自分達を入れて10名。これが自分が属するパーティとなるらしい。
「ちょっと遠回りをすることになったんだ。本当はもう3時間は早く着くはずだったんだが」
 僅かに渋面を見せる運転手を見上げていると「お嬢さんは17隊の人?」と彼女のおなかくらいの背丈しかない少年が声をかけてくる。どうやらホビット種のようだ。
「ええ、そうです。よろしくお願いします」
「よろしく頼む」
 追従してきた声に少年に見える彼はきょろきょろと周囲を見渡す。
「この機械しゃべるのか? 面白いなぁ〜」
「あ、いえ……」
「喋るぞ」
「おお。よろしくな、機械」
「違う。俺はイベリだ。イベリ=ヤポンスキー三世」
「イベリーか。どれがイベリーだ?」
 担いだ籠の中に転がる観測機の1つ1つを手に取りながらこつこつと叩いて確かめるホビットと「俺はここだ」とやたらキリッとした声で主張する子豚。
「大丈夫ですよね?」
 まぁ、そんな珍妙なやり取りをする二人の向こうに居る面子はそこそこ真っ当な探索者に見えますしと一人ごちて彼女は雲ひとつない晴天の空を見上げた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「平和だなぁ」
 メイスを肩に担いだ男がのんびりと空を見上げる。
 トラックの荷台。その左右には地平線が壮大に広がっている。彼のふるさとである日本では北海道辺りにでも行かなければ到底拝めない景観だろう。
「何事も無い方が楽でいいさ」
 大振りのバトルアクスを磨いていたドワーフの男がカッカと笑う。
「まぁ1度も『怪物』に遭遇しないこともないだろうが、俺達は隊の中央辺りに居るからな。気をつけなきゃいけないのは先鋒が何かと遭遇して停止した時くらいだ」
「そんなものですか」
 環はまるで世間話をするようだなぁと思いつつ自分の置かれた状況の異常さに苦笑する。
 朝会社に行こうとして玄関を開けたら異世界に着いてしまった彼にとって、このファンタジーの世界はどうも現実味が薄い。妙なアクティブさでメイスなんかを担いで今はドワーフのおっさんと壮大な広さの荒野で雑談をしているし。
「前発の隊はゴブリンのでっけーMOBとぶち当たっておおわらわだったらしいしなぁ」
「でっかいMOB?」
「ああ。千匹は居たって話だぜ」
 それほど脅威でない怪物の群れを《MOB》と称する事はもちろん知っているが千とは想像も付かない。
「まぁ、ゴブリンなら時間が掛かるだけで大した事はないけどな」
 がっはっはと豪快に笑うドワーフに環はとりあえず追従しておく。
「それにしても、この世界でもお日様は東から昇るんですよね?」
「んん? 確か地球世界基準で四方の方角を決めたとか聞いたな」
 とすると、彼がうすうす感じていた違和感は誤りではないようだ。
「じゃあなんでまっすぐ南下しないんですか? どうもグネグネ曲がってるように思えるんですけど」
「ああ、知らないのか?」
 ドワーフのおっさんは少しだけ声のトーンを落とし神妙な顔をする。
「おめえ、『フィールド』とか『巣』って言葉知ってるか?」
「……特殊な意味があるのならたぶん知りません」
 彼はうんうんとうなずき
「最近分かった事らしいんだがな。すげえ『怪物』の中に周囲に特殊な空間を発生させるヤツが居るらしいんだな」
「特殊な?」
「ああ。噂だとそこじゃ全力で戦えないんだと」
 ますますゲーム設定だなぁと思いつつ黙って続きを待つ。
「んでな、どうもその開拓地とクロスロードをまっすぐ結ぶ道の間に、その『フィールド』を発生させる『怪物』がいるらしいんだよ」
「……そいつを回避して進んでるって事ですか?」
「ああ。そういうこった。だが元々はまっすぐ進む予定だったらしいんだわな」
 秘密を話す人間特有の声音にどこかうそ臭さを感じつつも、あまり無下に聞き流す話題でない事を薄々感じる。
「有力な探索者を集めてどうやらその『怪物』の討伐部隊を作ったらしいんだよ」
「結果は?」
「俺達が迂回しているってのが結果さ」
 彼の話の全てが正しければつまり失敗したと言う事だろう。
「幸いな事にそういう怪物は自分のテリトリーから出ないらしくてな。そんなバケモンにいきなり襲われる事はないってこった」
「それも噂ですか?」
「まぁ、な。いきなりどーんとかこられた日には俺達オダブツだ」
 がははと笑うドワーフに笑みを合わせつつ、実はあまり笑い事ではないのではないかと内心一人ごちる。
 そんな事をまったくに気にする風もなく、ドワーフはごんと自分の斧をひと叩き、
「ま、俺たちゃ自分達の仕事をやればいいんだ」
 と口の端を吊り上げた。
「それもそうっすね」
 今の話をとりあえず胸中に仕舞い、何事も無い事をとりあえずお天道様にでも祈っておく事にしたのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「おや?」
 背後からの声に小さな魔女ノアノが振り返るとそこにはアフロがあった。
「……、えーあー」
 ちょっとした衝撃にしばらく停止しつつ「酒場でお会いしましたね」とフレンドリーに話しかけられて思考をリスタートさせる。
「アフロさん」
「いやだなぁ、私の名前はピートリーですよ」
 超考古学者を名乗る「増えるアフロ」に圧巻されつつ、ノアノは自分がここに居る理由を思い直す。
「ノアノさんも『彼女』に会いに来たのですか?」
「ええ。そのとおりです」
 どうやら目的は同じらしい。
 二人が居るのはロウタウンの一角にある家だ。それぞれ今回の衛星都市建設計画に対し水源発見の経緯が気になって調査したところ、最終的にここに辿り着いた。
 情報通りならばここには水源を発見したパーティの生き残りが居るはずである。

 二人がそれぞれ得た情報は単純にして興味深い物だった。
 女性が属するパーティは未探索地域へのアプローチにおいては一、二を争う実力を持って居た。次の一歩を刻む水源の発見という大ニュースについても、「彼らなら」と人々の口に言わせるほどである。
 しかしその評価は詳細が判明するにつれ人々の眉に困惑のしわを刻む事になる。
 たった一人クロスロードに帰還した彼女は管理組合にただ水源の場所のみを伝えた。
 他の仲間については一切語らず、そのまま閉じこもるようにして家に閉じこもっていると言う。
 心配した知り合いが何度か尋ねたものの、まるで話にならなかったらしい。ただ壮絶な戦いと仲間の死を伺わせるうわごとだけが彼女の経験を髣髴とさせた。
 「彼ら」とは言えそれを脅かす『怪物』の存在は疑うべくも無い。サンロードリバーに巣食う水魔にしても『七日間』で姿を見せたという神話級の『怪物』にしてもたかだか数人で対処できるとは思えない。
 探索の第一線に立つ彼らもついには不運を引き当ててしまった。それが大勢を占める見方だった。

「ユエリア・エステロンドさんか」
 唯一の生き残りは魔術師だと聞く。その力たるや分厚いゴーレムの胸板を一撃で砕く程だそうだ。
 ノアノは多少隣に立つアフロの異常性を気にしつつも呼び出しのボタンを背伸びして押す。
 一分経過。
 待っているとなぜかアフロがもぞもぞと動く。
 二分経過。
 もしかして「これ」がやばそうだから出てきてくれないのだろうかと疑う。
 三分経過。
「むうぅ。遅いな」
 不意にアフロが、じゃない、ピートリーがうめきのような呟きを漏らす。
「ちょっと見てくるんだカーター」
 もぞり一際大きくアフロが揺れてノアノは思わず「ひぃ」と後ずさる。それに関してはまったく気にせずアフロの中から飛び出してきたのは球形の何かだ。
 ひゅんと飛んだそれは窓から伺い見るようにフワフワと暫く浮遊。
「……これって覗きじゃないですか?」
 機械のようだが使い魔の一種だろうか?と、我に返ったノアノの少し温度の低い言葉にびくりとゆれるアフロ。そのまま右にゆらり左にゆらり揺れて、またびくり。
「ひぃっ!?」
 びっくりしているノアノを他所に、ピートリーはいきなり不法侵入を開始する。
「ちょ、アフロさん!?」
「緊急事態だ。そして私はピートリーだ」
 きょとんとしている間に玄関前に辿り着いたピートリーがどんどんと玄関を叩くが反応は無い。窓に回って同じくどんどんとやるがやはりムダだ。するといきなり石を拾い上げてがんがんと窓を叩き始める。
「ちょ!?」
 かなり激しく叩いているが割れない。窓ガラスのように見えるが耐衝撃性能はずいぶんと高いのである。でなければこの無法都市で安寧に暮らす事なんでできやしない。
「アフロさん! 賞金かけられちゃいますよ!?」
「そうか、管理組合か!」
 不意に腕輪をガン見してどうやらPBとやりとりをする。やおら玄関に戻るとなぜか鍵の開い扉からずんずんと中に入ってしまった。
「え? えええ?」
 PBに依頼したからとおいそれ他人の家に入れるわけがない。小さな魔女は頭に大量のクエッションマークを量産しつつ、ままよと玄関に向かう。
「おい、しっかりしろ!」
 入った瞬間聞こえてきたのはそんな声。慌ててそちらに向かうとぐったりとした女性を抱きかかえているビートリーの姿があった。
「アフロさん! まさか……!」
「恐らく脱水症状か何かだな。医者を呼んできてくれないかな」
 案外まともに応じられて少しだけノアノは赤面する。それから実はそれ所ではないと思い直し、慌ててPBに問い合わせて近くの医者まで疾走を開始する。
 ピートリーはそれを横目に見送り、周囲を見回す。
 聞いた話ではずっと閉じこもっていたはずなのに生活勘が薄い。
「緩やかな自殺、でしょうかね」
 本人にそのつもりがなくとも、このまま彼らが来なければ彼女は間違いなく死んでいただろう。
「パーティの繋がり、命を共にする者のそれは血より濃いとか誰か言ってましたねぇ」
 酒場で耳にしたのか、そんな言葉を呟きつつ、彼は脱脂綿か何か水を含ませるに適当な物が無いか探し始めた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「報告が来たわ」
 物静かな声音が響く居室で2人の男が彼女の方を振り返る。
「討伐部隊は壊滅。損耗率は80%以上。軍隊でない事の弊害がここにも出たわね」
「畜生……だから俺が行くってったんだ!」
 どんとテーブルを叩き赤髪の男が憤慨を隠そうともせず怒鳴る。
 損耗率80%など戦争ではまずありえない話だ。軍が軍として機能するためには30%を超えてはならない。通常損耗率が30%を超えた部隊は全滅扱いとするのがセオリーだ。
 これが探索者になると話は更に悲惨になる。
 探索者のパーティは違う能力を持つ者が集まり全体補完する形になりやすい。これは誰か1人でも倒れると雪崩のように瓦解する危険性をはらんでいる。
 また、軍とは一線を画す信頼関係を構築しやすい。故に引き際を誤る。
「俺達が行けば良かったんだよ。それなら殿にでもなんでもなれた!」
「無駄な議論だ」
 女性のメタリックブルーのそれとは異なる青い髪の青年が赤髪の言葉を一刀に葬る。
「俺達はここを離れられない。唯でさえ守りに秀でたアースが不在なんだ」
「だからってよ!」
「いい加減にしろ。セイ」
 語尾を荒げる事無く、青の青年は言い放つ。
「集まったデータからしても勝算は充分にあった。
 それでも勝ちを得られなかった事にお前の在、不在など意味が無い」
「そういう問題じゃねえだろ!
 一人でも指揮官がいりゃぁ違ったはずなんだ!」
「どうとも言いがたいわ」
 まさに水を挿すかのように、冷たく会話にもぐりこむ声。
「確かに『フィールド』による混乱に対しては有能な指揮官一人居れば立ち直る事も早かったかも知れない。
 けれども十人十色の特色を持つ探索者の各パーティを効率よく運用するなんて真似、誰にできると言うの?」
「……っ!」
 良くも悪くも彼は武人で、血気盛んだが馬鹿ではない。「俺なら」という威勢だけの言葉は口を吐いてこない。
「どう評しても結果論だわ。限られた時間で集められた戦力では勝ちを取れなかった。
 それだけの結果が私たちの前にあるだけ」
 噛み付く勢いで二人を睨み、彼は行き場の無くなった怒りを抱えたままどかりと椅子に座る。
「私たち4人でアレと五分の戦いができるという試算くらい知っている。
 だが、お前も、スーもそして私も果たすべき仕事を果たすためにここに居る。
 愚痴くらい聞いてやるがムダに備品に当たるな」
「アースが居なくて苛立つのも分かるけど、私は彼女みたいになだめられないから」
 青髪の男の苦言はともかく、スーと呼ばれた女性の冷静かつオブラートのない言葉にセイは撤回の言葉を求めるように口をパクパクさせて、むぅと黙り込む。
 青髪はちらりすまし顔の女性を見て、言葉を紡ぐ。
「副長達だってクロスロードに座して黙する連中へのけん制のためにむやみに動けない。
 その「果て」の方々が重い腰を上げてくれるなら話も変わるんだが……」
 クロスロード成立から2年。その兆候など欠片も無い事は管理組合員である彼らは重々承知している。
 ちなみに「果て」とはクロスロード外縁部のことを示す隠喩だ。そこにはそれぞれクロスロードでも特殊な特区法が敷かれている。
 別名『天界』と『魔界』。座するだけで場を聖域、魔域に変えるほどの存在が集まるような場所である。もちろんその力もまた並々ならぬ物であることは想像に難くない。世界が変われば神にも値する者がクロスロードには居るのである。
「君が説得して回るかい?」
「できるわけねーだろ……ったくよ!」
 それができるなら何を措いても実行している。しかしケタはずれの力を有した存在は世界の制約によって自らも縛られている。おいそれ動く事は悪い結果しか生まないのである。
「ままならねぇなぁ……!」
「なに、遠からず彼らの敵討ちの機会は訪れるさ」
「ああ? どういうこった?」
 ノータイムで自分で考える事を放棄した問いに青髪の男は窓の外を透かし見ながら失笑。
「少なかれ、我々は強大なる者に抗う宿命を持っているのさ。
 それは親であり、圧制者であり、獣であり、魔物であり、神であり……」
 成長する者の性。強大なる力を超える事で超越者となり、それもやがて超えるべき壁とし歴史に消えていく。
「その時、君に機会があるかは知らないけど、その時に力振るう者のためにも私たちは私たちの仕事を果たそう」
 セイは「ちっ、綺麗にまとめやがって」と悪態をつき、同じく窓の外、はるか南の空を眺め見る。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『報告書』
 新暦1年11の月末日 記
  水源への到達物資 予定の82%
  探査装置の配置 予定の87%
  水源までの行き来に対する被害 軽微。予測以下。
   ……
  フィールドへのアタック 失敗

 通達:交通ルートをパターンBに変更。
    移動時の襲撃率が上昇するため、警戒されたし。
    なお、衛星都市の防壁設立は予定通り実行されたし。

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●主な登場人物●
・ヤーツェ:フィールド攻略組みの生き残り?
・ユエリア・エステロンド:衛星都市の元となる水源を発見したパーティの生き残り。
・メルキド・ラ・アース:管理組合の人。東砦管理官。衛星都市へ出張中
・スー・レイン:管理組合の人。北砦管理官
・セイ・アレイ:管理組合の熱血バカ。西砦管理官
・青髪:名前でなかったけど南砦管理官

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というわけで第一話をようやくUPしました。
予定から実は半月遅れです。ホントは今頃第二話をUPする予定だった……
まぁ、言ってもしゃーないので、楽しく進めてまいりましょう。

……ってまぁ、第0話から失敗する可能性があるだわ、今回はフィールドの攻略に失敗してるだわ問題ばっかり発生しております。
ちなみにこれらはPCの行動に関係なく発生するイベントなんで気にしつつ気にしないでください☆
さて、次回は新暦1年12の月前半の行動となります。
エンジェルウィングスが行路を作っているため、何事も無ければクロスロードと衛星都市は1日程度で移動する事ができます。
次回PCがどちらに居ても構いません。

提示されるメインアクションはありますが、臨機応変にいろいろやってみるのも面白いかもしれません。
以上(=ω=)でした。

……最近ホント、HN(=ω=)でいい気がしてきた☆ 
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