わたしは永遠にここにある
わたしはやがて死を受け入れる
見上げる月は手を伸ばしても届かない
触れる大地を冷たく感じる
わたしの世界は暗い塔
本の挿絵とどれほどの差があるというのか
たった一つの窓から見える帳色の世界
現実も心も全ては灰色に閉ざされるばかり
ああ
ああ
わたしは
わたしは
───────
────────
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一人の女性が走っていた。
年のころは人間種なら15かそこから。背を風受けてなびく髪は美しく、着ている物もデザインはシンプルだが良く見れば絹で作られていると分かる。
見目麗しい顔───意志の強さを垣間見せるだろう凛とした顔が困惑と焦燥にゆがんでいる。
しきりに後ろを気にしているのは追われているからだろうか。
周囲の人は女性を見て、しかし特に何かをしようとする様子は無い。なにしろここでは何が起きてもおかしくない。助けを求められれば手出しをしようとする者ももちろん居るかもしれないが、理由も察せられぬ事態に介入しようとする物好きは
「どうしたんですか?」
……まぁ、わりかし居たりする。
その人物は急に横合いから声をかけられた女性が驚いて足をふらつかせるのを見て、「あら?」と気の抜けた声を伴い受け止める。
介入者もまた女性だった。しかも超が付くほどの美少女だ。走る女性よりも華奢に見えるのに難なく受け止めて小首をかしげる。
「貴女は……?」
「え? 私ですか? 通りがかりですよ?」
助けた形になった女性は背景にお花かデフォルメされたお日様の光でも輝きそうなまじりっけの無い笑顔でピントのずれた回答をする。
「何かお困りですか?」
見た目は年下の女の子。そこに不安────というよりも「巻き込んではいけない」という責任感を覚えたのか、口ごもる女性に近づく男一人。こちらもずいぶんと走ったのか息を切らせている。
「見つけたっ!」
女性の体がびくりと震える。それで察した少女はくるーりと振り返り、男の姿をロックオン。
「ストッカーとか言うのですかねぇ」
残念ながら『ストーカー』という単語の存在しない世界出身の女性には突っ込みはできない。まぁ、できても呆然とこの少女を見上げるだけだっただろうけど。
「その女性を渡してくれないか?」
「ヤです☆」
ぽんと女性の肩を叩いてバランスを保たせると、くるんと半回転。スカートがふわりと浮かんだと思うとある一点で加速のすべてを一方向に収束させる。
まさに一閃。ドンという音と共に男がぽーんと3mくらい横に飛び、余った慣性でストリートを転がっていく。
周囲から「おー」というなんともヒトゴトな歓声があがるのを「どーも〜」と笑顔で応じ、少女はぽかんとする女性の元に戻って「じゃあ行きましょうか?」と微笑む。
「行くって……」
「事情をゆっくり伺えるところですよぉ」
まるで世間話でもしようかという陽気さに追いつかない頭のまま、女性は手を引かれて行ったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あのゴーレムの言う通り、面妖な場所だな」
厳つい顔の武人が入市管理所を抜けた光景を見て呟く。
近代的な町並みは彼には見慣れぬ光景だ。ましてやそこに歩いているのは人間だけでなく亜人や下手をすれば化け物と呼びかねない存在である。
エルフやドワーフならば多少なりと城下で見かけることはあるが、この光景は仮装行列にしか思えない。
「人と魔物が争わぬ世界か……気色悪いな」
「そう言う物ではありませんよ」
たしなめる様にやわらかい声音で彼に声をかけるのは司祭服に身を包んだ初老の男だ。
「神の教えを理解した魔物が人と共に魔を討ったという話があります」
「ふん」
聞く耳を持つつもりは無いとばかりに鼻を鳴らし、ずかずかとニュートラルロードを歩き始める。
「大丈夫っすかねぇ。変に騒ぎを起こさなきゃいいけど」
司祭の後ろにひょっこり現れたのは若い男だ。身なりこそ初老の司祭に近いがどう見ても衣装に着られている。
「余計な心配ですよ。彼とて国政に関わる人間ですから、外交の初歩は心得ています」
「なるほど。で? 俺は何を?」
「今はおとなしくしておいてください。場合によっては貴方の手を借りる事になりますから」
「へいへい。んじゃ宿とか探してきますよ。夕暮れ頃にここらで落ち合いましょう」
「頼みましたよ」
すっと人ごみに消えていく男。司祭はふぅと一つ息をついて見えなくなりつつある武人を追いかけるのだった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
はい、総合GMの(=ω=)です。これを定着させたいキモチでいっぱいです! 嘘だけど。
新しいシリーズを始めます。大体3話くらいで終わらせたいと思ってます。
この序文でどーしろと!? って感じですがちゃんと依頼掲示板には依頼を書きますのでよろしくお願いします。
ちなみに同時進行中の「世界へのアプローチ」とは微妙に違う時間軸と思ってもらって結構です。
ではよろしくお願いします。
『月映の塔』はこの国が出来たときからある古めかしい塔だった。
王城の裏手にあり、びっしりと蔦と苔に覆われたそれは城下の人間にとって怪談話のメッカだった。
曰く反逆した貴族が閉じ込められ、憤死した。
曰く気のおかしくなった王族を閉じ込めるための場所だ。
曰くかつてこの地域を恐怖に陥れた魔女を封じるための場所だった。
人影を見たと証言する者は後を絶たず、魔女の笑い声や手当たり次第に壁を叩く音を聞いたという話もある。
そんな場所は恐怖と同時に好奇心を掻き立てる。
酒の席で売り言葉に買い言葉となった俺はなし崩しにその塔へ行く事になった。
所謂肝試しというヤツだ。
この肝試しには2つの意味がある。一つはもちろんお化けに対する物。
もうひとつは森の中とは言え王城の一部だ。見つかって捕まっても怒られる程度としても、できればそんな事態は避けたい。そういう意味での度胸試しだった。
酒の勢いも失せかけ、さっさと行ってしまおうと森を歩く俺は尖塔の窓に彼女の姿を見止める。
噂の幽霊を見た。その驚愕よりも彼女の美しさに驚き、俺は足を止めた。
結果から言えば彼女はお化けでもなんでもなくれっきとした人間だった。なんでも生まれたときからそこに居て一度も外に出たことがないそうだ。
それから幾度と無く俺は彼女と会い、外に出たいという彼女の願いに応えようと思った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それでこの世界に来た、と?」
セリナの問いかけにグルトンと名乗る青年が深刻そうにうなずく。
「で、こっちに来たら誘拐されちゃったんだ?」
「……ええ。まぁ、そんな感じです」
エドが追従するように問いかけると、困惑にも似た表情を一瞬浮かべた。
「それで、連れ去ったと言う女性の姿は見たのですよね?」
「はい。銀の髪で巨大な剣を持った女性です。その人に殴り飛ばされて……」
エドがちらりとセリナを見上げる。彼女は視線を合わさずにほんの少しだけ頷く。
二人の感想は同じだ。この男性の話は要所要所に隠し事がある。最初の馴れ初めは流暢だったのにクロスロードに至ってからの経緯がどうも歯抜けだ。
「流石に目撃者も多そうですし、すぐに見つけることはできるでしょう。
特徴的な方のようですしね」
「お願いします! 一刻も早く彼女を!」
食いつくような勢いで懇願され、セリナはより一層疑問を膨らませる。
彼の抱く「心配」───その女性に対する親愛は恐らく本物だ。恋は人を狂わせると言うけれど、まさに理性を超えた必死さがある。
「おにーさん、他に話す事は無い? 実はおにーさんが無理やり連れてきたとか」
エドがずばっと聞いて、セリナが息を呑む。
「そ、そ、そんな事はない! 俺は彼女が塔から出たいと願ったから!!
彼女が嫌がるなら塔から連れ出す事だってできやしない!」
こっそりセリナも考えていた事だが……取り繕う雰囲気は無い。
「ま、まぁ落ち着いてください。エドさんも今のは失礼ですよ?」
「えへ。ごめんごめん。ちょっと思いついただけだから」
ぺろり舌を出して謝る吟遊詩人の娘に男は「お、俺も言いすぎた」と座りなおす。
「……とにかくよろしくお願いします。早く彼女を取り戻してください」
「はい」
「はーい♪」
単なる逃避行と誘拐事件。そんな話でない事は間違いないようだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「俺かい? 俺はイゼリアンズ王国聖務省所属の助祭だよ」
つまりは王宮付き神殿の聖職者を名乗る男は、とてもじゃないが神職には見えない。
風体からすればギャングといわれた方がしっくりくる。
その感想を彼は言われずともあっさりと認めた。
「肩書きはな」
「……と、言いますと?」
ノアノの言葉にロウサイアを名乗る男はにぃと笑い「道先案内人。お行儀の良い神官様だけに異世界なんて訳の分からん場所を行かせるわけにゃいかんだろ?」と応じた。
「つまりは僕達と同職か」
「お役所仕事になっちゃ居るがやってることは変わらんさ。だから依頼なんて発想も出てくる」
軽薄さがにじみ出ているが年季が入っているせいかそれが演技かどうかは見抜くに至らない。
「先を話していいかな?」
「うむ。続けろ」
ムダに偉そうな子豚に同意されては流石に鼻白む。ノエルとノアノ、どちらかの使い魔とでも思っていたのだろう。
「悪はどこだ」
「あ、えっと。続けてください」
ノアノの促しに苦笑で応じ頭をひと掻き。
「依頼に書いた通り、誘拐犯の捕縛が仕事だ。
殺しちゃなんないってのは肩書き上の理由でな。ついでに面子の問題からも引っ立てる必要があるんだよ」
「それで……誘拐された方は良いんですか?」
「ん? ああ。そっちは良い」
あっけらとした答えにノエルもノアノも柳眉を動かす。
「業務上の秘密ってヤツでな。とりあえずそっちは何とかなる算段が付いている。
お前さんたちは誘拐犯をとっちめてくれればいいさ」
「……未だに同行して居る可能性はないのか?」
男は窓の外に視線をやる。つられて見るが別に何かあるわけでもない。快晴の青空が広がるばかりだ。
「まー、上司からの命令に倣うなら気にすんなってところだな。
もしも見目麗しい女性が同行してたら気をつけてくれればいいさ」
「よし、悪を討ちに行くぞ」
話が早くていいねぇと茶化すように男は笑う。一方のノエルとノアノはどうしたものかと思考をめぐらす。というのも二人はこの依頼にキナ臭さを感じていたためまずは様子見のつもりで着ていたのだ。
「イベリさん、まだ探す方の特長を聞いていませんよ」
「ふっ……悪が分からぬ道理はないっ!」
ノエルが「これは一体何だ?」という視線を向けてくるが、ノアノだって応えられるわけが無い。
「何故なら、私が行く先に悪があるからふもっ!?」
とりあえず話が進まないので、手近にある布をかぶせておいた。
「誘拐された方を気にしなさ過ぎる」
ぽつりと零されたノエルの言葉に男は「ごもっとも」と肯定。
「だが宗教上の理由ってやつで俺も安易に口外できない。俺がこんな肩書き背負わされているのもその事実を知って良い権利を得るためなんでね。
ただ、この仕事に関してあんたらに不利のある秘密でないことは確約する」
腹の底が読めない男ではあるはが、嘘をついている風でもない。
二人は沈黙の中仕事を請けるかどうかを吟味した。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
●主な登場人物
・グルトン:塔にとらわれた謎の女性と共に来たと主張する青年
・ロウサイア:イゼリアンズ王国聖務省所属助祭の資格を持つ荒事専門家。誘拐犯を追っている。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
というわけで薄氷の表裏 第一話です。
今回は二人の依頼人のお話を聞くターンになりました。本シナリオは3回構成を予定しています。
状況によっては+1回バトルイベントを予定しています。
では、リアクションをよろしくお願いします。
もちろん途中参加でもOKですよ〜
彼女はぐっと口を結んで窓から見える光景に向き合っていた。
見慣れない物ばかりの世界。木と石で作られた素朴な家々はなく、綺麗だが自然味に欠けるものが見渡す限り広がっている。
中には4〜5階建てと思われる建築物もある。話に聞く東大陸の帝国帝都であってもここまでの技術と権勢があると思えなかった。
「異世界、ですか」
自分を連れてきた女性はそう教えてくれた。
ここはあらゆる世界と繋がる地、故に『多重交錯世界』という二つ名を冠した世界。
自分は──────
どうしてここに来てしまったのだろうか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「………」
彼女とて学者を名乗る者である。知識に貪欲であるし、本は好きだ。
だが……
「えー……と?」
例えば壮絶に汚れた部屋があるとしよう。いざ掃除をしようとした場合はたしてどこから手をつけていいものか迷うものでは無いだろうか。
今の彼女はまさにその状態だった。
大図書館。
前々から話に聞いて興味はあったもののなかなか機会がなかった。
依頼の調査ついでに初めて訪れた彼女は、外見の広さを無視したとも感じられる本の迷宮に唖然としていた。
大量の本を見た事が無いわけでない。しかしこの量は異常だ。
もちろん知識の象徴たる書物を収集し、図書館にまとめている世界は他にもあったが、この量は無い。
というのも本とはかなり管理が面倒な代物だ。湿気、虫、熱、光と様々な要素に常に脅かされる。よって必然的に管理できる量が限られてしまうのだ。
科学と魔法での管理制御、さらには書物に関する妖怪、妖魔の管理という特殊な司書を抱えたこの場所はそれらの制限をあっさり打破して呆れる程の書物を次々と飲み込んでいるらしい。
「えー、すみません」
「はい?」
分からないときは聞くのが一番。
セリナは近くを通りかかった司書に声をかける。豊かなブロンドの女性がわずかばかり首をかしげて彼女の方を見た。
「調べたい事がありまして」
「何でしょうか?」
「異世界の事なんですが、『月映えの塔』とか……」
ブロンドの女性は少しだけ考えるようにすると
「世界分類コードは分かりますか?」
世界分類コード、世界コードとも言われるものは数多ある世界を区別するために1つ1つ振った番号だ。
「ええと……00054983です」
必要になるだろうと思って書き綴ってきたメモを確認し応じると、すぐさま彼女は「ええと」とひとつ呟いて
「では、VD021-32の棚に関連書物があります。
貸し出しできない書物ですので館内での閲覧をお願いします」
と答えてくれる。
「……」
PBに確認したのだろうか?と首を傾げるが、その疑問を問う前に彼女は自分の仕事に戻ってしまった。
「あ、ありがとうございました」
慌ててお礼を言うと「いえ」と彼女は少しだけ振り返り笑みを浮かべた。
胸につけられたバッジには『サンドラ・リーブラリィ』とあるのを確認しつつセリナは目的の本を求めて歩き始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いべりさんどこに行ったんでしょうかねぇ」
ノアノが呆れたようにきょろりと周囲を見回すが、やかましい子豚の姿は見えない。
「甘い物の誘惑には惑わされるものかぁ!」と叫びつつ驀進してしまった。果たして当初の目的を覚えているのか不安でならない。
「目撃情報を見つけた」
「ひぃあああ!?」
いきなり背後から声をかけられてノアノが小さく飛び跳ねる。
「どうした?」
片目を少しだけいぶかしげに細め、ノエルが問う。
「の、ノエルさん。い、いえ。変な声だしてすみません」
ずれた魔女帽子を直しつつ心臓が暴れるのを押さえる。
「そ、それで目撃情報って?」
「昨日ニュートラルロードで逃げる女を追いかける男が居たらしい。
女のほうは別の女が男をぶっ飛ばして連れて行ったらしい」
「ええと、その男の人が?」
「聞く限り、容姿は一致するな」
うーんと少し考える。
「連れて行った女の人って、ロウサイアさんの仲間なんでしょうか?」
「すでに助けたというなら人質を気にしないで良いという意味は理解できる。
だが、女は男をあっさり倒したらしい」
「仲間ならその場で男も捕まえますね。つまり第三者の介入という事でしょうか」
「僕はそう思う」
「依頼からすれば追うべきなのは男の人の方ですけど……」
未だに保護できていないだろう誘拐された女性をどうして気にしないのか。それはどうしても気になる点だ。
「ノアノの方は何か見つけたか?」
「何かを探して走り回ってた男の人の話は。
おそらくノエルさんの情報の後ですね」
「だろうな。場所は?」
「『扉の園』の近くですね」
「場所は一致する。その辺りを探すか?」
「昨日の話ですよね?」
「宿は近くにとって居る可能性があるからな」
なるほどと頷く。
「とりあえず今ある手がかりはそれだけですし、連れて行った女の人とかも込みで調べて見ましょう」
「そうなるな。
……あの豚は?」
今気づいたときょろきょろと見回すノエルに
「聞かないでください」
アレを理解できる人も早々居ないでしょうしと内心で呟きつつ捜査の一歩を踏み出すのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「年齢は15歳くらい。
背中までの黒髪のきれーな人。身長は160cmくらいでふわふわした印象っぽいかも。
ただ恋愛フィルターが入ってるからびみょーだよね〜」
エディンロヴンはさらに詳しく聞いた話を元にさらさらと似顔絵を書く。
「名前が無いってのはびっくりだけど」
吟遊詩人であるので専門ではないが、特徴を元に大体のものを書くくらいならできる。
「まぁ、分かればいいんだしね」
「あ、お待たせしました?」
声を掛けられてエドはふいと顔をあげる。
「あ、セリナおっかえり〜」
「どうでしたか?」
「こんな感じの人らしいよ?」
下書き程度のデッサン────モンタージュというよりも似顔絵書きの描き方の絵を見せて笑う。
「上手いですね」
「そうでもないよー。セリナの方は?」
「気になる話がいくつかは。
まず月映えの塔ですが、彼の世界のある国にある塔で国が管理しているものらしいですね」
「城の裏手の塔って言ってたもんね」
「ええ。ずいぶんと古い物らしいですね」
そう前置いて彼女はメモ書きを開く。
「陽と月は交わらず。互いを知らず見ず、流転する。
いずれ訪る光を嫌う者をただ待ちて、月は白きまま塔の中へ。
陽は民の前に立ち、己が運命と向き合うだろう。
永劫に続くべき先の灯火とならんことを」
「歌?」
きょとんとしてエドが問い返す。
「ええ。塔にまるわる歌ということですが……」
ふんふんとエドは絵を修正しながら頷き
「いろいろ解釈できるけど……塔って牢獄かもね」
「やっぱりそう思いますか?」
依頼人が女性と出会った情景とこの歌、そして国の管理というワードを重ねあわせれば必然的に見えてくる事だ。
「何らかの理由で何も知らされないまま塔に監禁されてるのを勝手に連れてきちゃったって感じだよね?」
「となると誘拐犯というのは……追っ手でしょうか?」
「どーだろ?
とにかくあの人が一方的に善人で被害者って感じはしないかな」
セリナもそれには同意しつつ、もう一度歌を思い浮かべる。
「こういう場合、塔に入れられる人って巫女だったりしますよね?」
「だねー。歌が残ってることからも国事だったり、宗教的な何かだと思うよ。
光を嫌う者なんて言葉が出てきてる事を考えるとちょっと良い事じゃない匂いぷんぷんだよ」
まさに災厄を示すような言葉だ。続く句に「向き合う」や「先の灯火」とあることも踏まえればまず間違いないだろう。
「どうにしても。その連れて行った女性を発見する意味はあると思いませんか?」
「まあ、あのお兄さんは悪い人ではないだろうけど、頭の良い人って感じでもないしね〜」
何も知らないまま、運命の紐に足を引っ掛けたかもしれないね。とエドが笑う。
そんな言葉にセリナは微妙な顔をしつつ、冬晴れの空を見上げた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
不覚だ。
まさか焼き芋があるだなんて……!
芋は果たして甘いものに含まれるのか? 確かに甘さはある。だがあれは芋だ。そう、正義を執行するには食事を欠かしてはならない。だから必要な処置だったのだ!
などという自問自答をしつつ芋を齧る子豚がいた。誰かと言うまい。
横には「ぽぴー」と煙突から音を立てる車。のれんには「いしやきも」とあっておじさんが客の対応をしていた。
「おじさーん。4つくださいな〜」
やたら甘ったるい声に「あいよ」と応じるおじさん。
「ふむ?」
そろそろ行かねばと心機一転のイベリーはふと芋を買っている女性が気になった。
能天気を絵に描いたような笑顔の女性だが、どうして気になるのか。
「……はっ!?」
決まっている。つまりは悪なのだ!
自身に内蔵されている(かもしれない)センサーが反応したのだ。
そう……決しておじさんが渡している芋を見てもう少し欲しいかもとかいう理由ではありえない!
「見つけたぞ、悪め!」
「ほえ?」
有無を言わさぬ突撃。ぎょっとするおじさんに対し、女性はぽーっとした顔のままふらりと体を揺らす。
「何っ!?」
くるりとスカートが舞い、そこに突っ込んだかと思うとあっさり流された。一撃を避けてみせた女性は「悪だなんて酷いですねー」と気にした風もない。
こいつ……できる!
その瞬間。脳裏にある光景が思い浮かんだ。
主に彼女が背負っているやたら大きな剣。
「…………!!」
なんかあれで何度もぶん殴られた気がする!
いかんあれは巨悪だ。とても凶悪で強大な悪に違いない! 体が打ち震える。
「どうしたんですか?」
近づいてくる。間合いに入られる前に行動しなければならない!
「戦略的撤退だ!」
だっと駆け出すイベリー。しかし顔は覚えた。悪は必ず倒す。いずれ!
そんなやたら熱い思いを抱きつつ彼はクロスロードの町を疾走するのだった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
●主な登場人物
・グルトン:塔にとらわれた謎の女性と共に来たと主張する青年
・ロウサイア:イゼリアンズ王国聖務省所属助祭の資格を持つ荒事専門家。誘拐犯を追っている。
・女性A:グルトンが連れてきた女性。名前が無いらしい
・女性B:女性Aを連れて行った女の子。イベリーが何度も殴られた覚えがあるらしい。
・サンドラ・リーブラリィ:大図書館の司書長
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
というわけで薄氷の表裏 第2話です。
次回である程度決着がつくと思っています。
……ホントか?(ぉい
いろいろな謎も解けるだけのヒントはあるかと。
では、リアクションおねがいしますね。
レイリー・ソロ・ウィミア
その名前は意外すぎるほどあっさりと出てきた。
というのも彼女は妙に目立つのだ。
性別を問わず人の目を惹きつける美貌を持ちながらいつもへらっとした笑み。口を開けば頭のねじが数本飛んだような可哀そうな発言しか飛び出さず、女性がため息をつくプロポーションに自分が隠れられそうな大剣を背負う。
ついでにエンジェルウィングスの社員でもあり、しかし報告書を書くのが面倒だからとそこいらの店に隠れ潜むので、ニュートラルロード南側半分では知らない人を見つける方が難しい。
情報集めに繰り出した面々はあまりにもあっさりと情報を掴んでしまったため逆に不自然さを覚えつつ、しかし他に方策なしと彼女への接触を開始するのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あんたがレイリーってやつか?」
一応ノエルはそう聞くが……
「ふぁい?」
饅頭にかぶりついたまま首をかしげる娘。
いや、まぁ話の通り間違いなく美人だ。そして話の通りそれをあまりにも見事に台無しにする雰囲気をまとっている。
無駄にでかい剣は邪魔だとばかりに足元に転がしているし、なんかモゴモゴと言ってるし。
「んぐ。はい、そーですけどぉ?」
やたらのんびりな動きでごくりと飲み込み、ふにゃりとだらしなく作る笑みは良く言えば人懐っこい子犬を思わせた。
「あー……数日前に女を一人連れて行かなかったか?」
「ほえ?」
きょとんとしながら饅頭をもう一つ掴んでぱくり。
「もごも」
「いや、口の中に物を入れてしゃべらないで欲しいんだが」
「むぐ」
こくこくとうなずき、お茶で流し込む。
それからもう一回首を捻り直し、「おねーさん、誰ですか?」とか言いながらほわーっとした顔をする。
「……ノエルだ。君が守ったという女性。彼女を追いかけていた男を探している」
「あら。女の人を連れ戻しに来たんじゃないのですか?」
「女も近くに居るのか?」
「いませんよー」
ずずずとお茶をすすり、ほふとひとつ息を吐く。
「朝には居なくなっちゃいました。昨日は夜に戻ってきたんですけどねー」
・・・・・・・
眉間を抑えてしばし黙考。
「それはお前の家に住んでいるとかそういう意味じゃないのか?」
「そうなんでしょーか?」
何がタチが悪いかと言えば、本人に悪意が無い事だろうと気を落ち着かせつつ思う。
これは真性の馬鹿だ。
「……それ以降その男の接触は無いのか?」
「私はありませんよ? 探してるのは見ましたけどお話しすることもありませんし」
まぁ、そりゃそうだろうがとひとりごちていると「会いたいんですか?」と首をかしげる。
「まぁ、そいつを探しているんだからな」
「じゃあ会いましょうか」
よっこらしょと立ち上がり、それから店の出入り口ノ方を見やる。
「案内してもらえますか?」
「……え?」
自分に言われていると勘違いしたのは一瞬。
彼女の視線の先には大きな本を抱いた一人の女性の姿があった。
「……私に言ってます?」
「はいです」
レイリーを探して店に入るなり声をかけられた女性────セリナは少々困惑しつつ、さらに理解できないとばかりの顔をするノエルを見やる。
「この方があの女の子を探してる男の人を探しているんですよー。
……うわ、わっかり難い説明」
「え、ええと……。おっしゃってる事はわからないでもありませんが……
どうして僕が女性を探していると?」
「そりゃぁ、勘ですよー☆」
満面の笑みでそんな事を述べるので二人はぽかんとするしかない。
「あと、今私に声をかけてくる女の人なんて限られてますからね〜」
楽しそうにそう言葉を付け加え、少女はよいこらしょと剣を拾い上げる。
「そんな不思議な事でもないですよー。
依頼の来歴を見れば大体予想がつきますよ?」
着たばかりのセリナは「あ、それもそうですね」と呟くが、おバカな行為を見続けていたノエルとしては
「こいつ……演技してんのか?」と思わざるをえ
「ふぎゃっ」
結局持ち上げた剣にバランスを崩され、すっ転ぶ少女に思考停止。
本気でわけがわらないとノエルは深くため息をついた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「見つけたっ!」
この世界に着て早3日。
かけなしの金で依頼こそしたが、このまま無為に時間を潰せるほどの余裕はない。
今のところ進展は無し。自分もと彷徨っては居るが、彼女を探し出すことはできていなかった。
だが、彼女の姿がそこにあった。こちらに来た時の衣装ではないのは連れて行った女性が着せたからだろうか。町にすら行ったことの無いという彼女が買い物をできたとは思えないし。
そうなると依頼した冒険者の連中が探せなかったのも理解できる。あの女の所から逃げ出したのだろうか?
「待ってくれ!」
とにもかくにもグルトンはもう逃がすまいと彼女を追いかける。ここで見失ったらもう見つからない気がする。彼とて慣れない世界での不安は大きい。多少参りかけた精神が脳内麻薬をどばどばと出してしまう。
焦りを含む声に女性は振り返り、そして驚いて速度を上げる。
「な……!」
なぜ逃げる!?
あの女性は望んでここまで来たはずなのに。問い質さねばと全力を超えた速度を出す。
女性はずっと塔に居たこともあるのか、女の子走りをして彼から逃げられるはずもない。ここはやや裏路地とあって邪魔も入りそうにない。
すぐに走る女性の手を取りやや強引に引き寄せることに成功した男は「痛い」と悲鳴を漏らす女性に、自分の手に力が入りすぎている事を悟る。
「っ、すまない……
どうして逃げるんだ……」
「どうしてって……貴方が追うからです」
「そりゃあ追うさ。連れが行き成り錯乱して走りだしたんだから」
「錯乱など……!」
そこで不意に口ごもりそれから一旦言葉を飲み込むと、
「貴方が私をこの世界に連れてきたのですね」
意志を込めた視線で男を睨み問う。
「何をいまさら……君だって同意した事じゃないか!」
「なら……私の名前を言ってみてください」
「え?」
男は訝しげな顔を浮かべ、「名前が無いと言ったのは君じゃないか」とやや不安そうにつぶやいた。
あまりにも自分の知る女性と態度が違う。それが「もしかしたら人違いではないか」という不安を抱かせたのだ。
「そう……ですか」
しかし女性の表情は怒りでなく、深い悲しみに彩られる。男は理解の追い付かないその変りように────
「私の名前はアムネリジス・イル・デルス・イゼリアンズ」
「……へ?」
その音は彼にとってある種の魔法だった。脳が理解しきれずに呆けた顔になった瞬間
「ええいっ!」
がす。という音を聞いて、彼は意識を遠くへと持っていかれるのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あ、あわわ……やりすぎました?」
そこいらに転がっていた棒を放り捨てて恐る恐る様子をうかがう魔女っ子。
「いえ、助かりました」
男に下敷きにされる形になっている女性が抜けだそうともがくのを慌てて手伝い、男を横にごろんと転がす。
「……あれ?」
完全に白目を向いている男を見て記憶を探ること数秒。
「この人!」
探してた人間だと気づいて改めて女性を見る。
「貴方がこの人に誘拐されたって人ですか?」
「……誘拐、ですか」
身を起こした女性はその言葉を噛みしめるように繰り返す。
「貴方は私を探していたのですか?」
「あ、いえ……そっちの男の人を捕まえてって頼まれてまして……
貴方の方は何となるとか言われましたから」
「……ミルンデルク卿もいらっしゃっているのですね」
確か依頼人はロウサイアとか言う名前だったはずだなぁと。
つまりは彼が案内したという「行儀の良い神官様」の事だろうか。
「お願いがあります」
細身のか弱い女性から発せられる凛とした気迫にノアノは思わず姿勢を正す。
「え? あ? は、はい。何でしょう?」
「この人を見逃してはくれませんか?」
「え?」
でも、という言葉はとりあえず飲み込む。
「貴方の依頼人には私から話をします。報酬も正式に支払わせます。
聞いてはいただけないでしょうか?」
「そ、そんな事いきなり言われましても……」
「改めて自己紹介をします。
私はアムネリジス・イル・デルス・イゼリアンズ。イゼリアンズ王国第一姫です」
「ほあ?」
確かあの依頼人は「王国聖務省なんちゃら」とか名乗っていた。
「ちょ、お姫様が誘拐されてるのになんで……そっち気にされてないんですか!」
「それは……」
ふと彼女は表情を暗くし、それから空を見上げる。
「そのあたりは私たちも聞きたいかもですね〜」
横合いからの声にノアノは慌てて姫と名乗る女性を守るように立ちふさがり────
「あれ? ノエルさん?」
と、+2名が路地に立っていた。声をかけてきたのは先頭に居るおっきな剣を持った女性だ。
「レイリーさん……」
アムネリジスがやや困ったように眉尻を下げるのを見て、レイリーは朗らかに笑みをこぼす。
「じゃあやや話しやすくしてみましょーか?
あむあむあむ……覚えらんないからアムちゃんね。
アムちゃん、二重人格っしょ?」
不躾もここに極まれリとばかりの短縮をしつつ堂々と突き立てた言葉にアムネリジスはわずかに視線を落とす。
「もしかして『陽と月は交わらず。互いを知らず見ず、流転する』って」
セリナの言葉に彼女はゆっくりと視線をあげ、一同を見渡した。
「伝承の句まで知っていらっしゃるのですね。
……わかりました。お話します」
彼女は倒れ伏す男を悲しげに見つめ、決意したようにそう告げたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とある世界の大国イゼリアンズには一つの伝承が古くから伝わっていた
『陽と月は交わらず。互いを知らず見ず、流転する。
いずれ訪る光を嫌う者をただ待ちて、月は白きまま塔の中へ。
陽は民の前に立ち、己が運命と向き合うだろう。
永劫に続くべき先の灯火とならんことを』
「つまり、彼と一緒にこの世界に着たのはもう一人の貴女……という事ですね」
歌を知るセリナの言葉にアムネリジスはゆっくりと首肯する。
「我が国では数百年に一度、私のような魂を2つ有した存在が生まれます。
太陽と月の入れ替わりに応じ、体の主導権が入れ替わるのです」
「ほぁ〜」
そう言う事もあるのかぁとノアノが興味深げな声を上げる。
「だから昼間の貴女はあの男から逃げたのか」
「……はい。夜の私は何一つ知らされることなく塔の中へ軟禁され続けていました。
日が昇れば私は塔から出、日が落ちる前に塔へと戻るのです」
「どうしてそんな事を?」
セリナの問いに彼女はやや間を措いて「そういうしきたりなのです」と呟いた。
「月は白きまま塔の中へ。夜の私は何一つ知る必要無く塔の中で時を待たねばならないのです」
「それにしてはあっさりと連れ出されたみたいですね〜」
レイリーの突っ込みに彼女は瞑目する。
「私がどうやって見張りの居る塔から抜け出したのかはわかりません。
しかし塔の中はもう一人の私の方が熟知しています。あるいは数百年前から存在する古い塔。抜け道や壊れた個所があったのかもしれません」
未だ昏倒している男を見やり、アムネリジスは探索者の少女らに視線戻す。
「私が戻れば全ては解決する事なのです。改めて両方の探索者の方には報酬をお約束致します。
彼を見逃してはいただけないでしょうか?」
そう言われれば否定もし辛いと三人は顔を見合わせる。
三人共々依頼は未達成となるものの、経緯を知ってしまえばそれで全てが解決するような気がする。
この男だって何も知らないもう一人の彼女と恋仲になった(つもり?)から、一国の姫と知らずに逃避行なんてしでかしてしまっただけだし。
……いや、まぁ、十分重罪な気はするが。
「アムちゃん?」
了承しかけた三人を制するようなタイミングでレイリーが声をかける。
「はい……?」
「いずれ訪る光を嫌う者って?」
セリナはエドとの会話を思い出して視線を逸らすアムネリジスを見やった。
「それはお話しできません」
「話をできないほど厄介な存在ってことかな〜?
例えば魔族とか邪神とか」
「……」
その沈黙は誰の目にも肯定として受け止められた。
「話をまとめるとー。
魔王だかなんだかの復活と討伐のための予言詩ってことじゃないの?」
そう言われると確かにそういう風にも聞こえる。
「ただの生贄であれば昼だけ外に出すというのは少々変だけどね」
彼女の雰囲気からすれば例え本当に生贄だったとしても逃げ出すようには思えないが、そうと知れば錯乱してもおかしくは無い。
「ねえ、昼のアムちゃん? 夜のアムちゃんは帰りたいのかな?」
「……」
「彼女、夜になったらずーっと外を見てるんだよね。誰か来るのを待ってるみたいに」
レイリーの視線は倒れた男に注がれる。
「聞かないでください。これは私の国の問題であり、秘密です。
私たちは為すべき事をただ為すのみですから」
「……」
三人は出そうになった言葉を飲み込む。その言葉はもう一人の彼女の行動を否定しているようにしか聞こえないが、しかし彼女の世界の事と言われればまさにその通りだ。
「さぁ、連れて行ってください。私は戻らねばなりません」
彼女の確固たる意志を含む言葉に、レイリーはそれ以上の言葉を紡ぐ事は無かった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
●主な登場人物
・ミルンデルク卿:イゼリアンズ王国聖務省大臣兼枢機卿
・アムネリジス・イル・デルス・イゼリアンズ:イゼリアンズ王国第一姫
・レイリー・ソロ・ウィミア:エンジェルウィングス所属のアホの子。いろいろ台無しな美少女。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
というわけで薄氷の表裏 第3話です。
ほんとはノアノがレイリーを見て錯乱するつもりだったんですが……(笑
オンラインセッションで彼女のドッペルゲンガーが何度もいべりをタコ殴りにした経緯があります。今回いべりがリアクションしてなかったのでここで解説しておきますw
さて、次回のリアクションは1つに集約します。
要は素直に彼女を戻すか否か、ってことになるでしょう。
ちなみに彼女の口添えグルトンの罪を免除する事は可能です。
では次回最終話(予定) リアクションをお願いします。
世界コード00054983、『月映えの塔』並びに『双魂の巫女』の伝承について。
端的に称せば、本件は『魔王』に分類される者を討つためのマニュアルである。
該当世界の破壊者───『魔王』は人として転生を行い、時間を措いて覚醒に至り世界を破壊する。
これに効率よく対応するため、転生者を王族の中に生まれるように調整する装置が『月映えの塔』であると推測される。
かくして王族の中に魔王の転生体が生まれるようになったものの、長い年月の果てにその詳細は遺失してしまったと見られる。
そんな中2つの魂を有して生まれた王女は伝承の断片から『双魂の巫女』と称され、夜の間塔に閉じ込められる事となった。
これは一般には公表されていない。
いくら過去の曖昧な伝承とは言え、魔王の復活などという風聞が流れれば国としても神殿としてもその立場を危うくしかねないというのが理由としての大きなところだろう。
これまで放置していた『月映の塔』も今更厳重に警備して目立つ事を避けている様子である。
最後に、魔王の復活する条件について。
1つは十八の年が流れる事。
これはその世界にある十八の封印に起因しているらしく、現に封印の地ではその効力が順次失われていることが確認されている。
『月映えの塔』と『双魂』という状態が復活する魔王に如何なる影響を与えるかは不明だが、タイムリミットを以て蘇ることはまず間違いないと思われる。
もう1つは物理的な死である。
人間の体は力を取り戻すための揺り篭であるものの、元より強大な力を持つがため十全でなくても脅威である。
人の身が滅びれば魔王はその姿を取り戻し、再びかの世界に君臨するだろう。
余談として
世界コード00054983の科学レベル、魔法レベルは比較的低位である。
脅威度はフィールドモンスターレベルだと推測される。
大図書館 司書長 サンドラ・リーブラリー監修
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
どうも、総合GM神衣舞です。
今回のこれはセリナさんが大図書館に行ったことにより発生した情報です。
これをどう扱うかについては一切何も申しません。
うひひひ
「お話は分かりました。
それではとある方を紹介いたします」
セリナが再び訪れた大図書館。そこで再び見える事になったサンドラは微笑みを浮かべつつふいと右上を見上げる。
「館長、お遣いに行ってきてもらえませんか?」
吹き抜けの二階を歩いていた老人が盛大にずっこけた。
「ちょっ、サンドラ君? わしは館長じゃよ?」
手すりから乗り出し批難の声を挙げる老人は神仙を思わせる髭を蓄えた白髪の男。この大図書館の館長スガワラ翁である。
「存じてますが?」
彼の唾を飛ばさんばかりの批難にサンドラは全く気にした様子もなく応じる。
「他の司書に頼めば良いじゃないか」
「彼らはここの従業員ではありません。ボランティアに近い存在です」
ここで司書を行っている者はただの物好き───本好きである。
「それとも、私に行けと仰られますか?」
目を細めてにこりと微笑むと館長を名乗る老人は「う」としかめっ面をする。やり取りの意味が分からないセリナは呆然とするしかない。
「ふむ。イビーの所に案内するのかや?」
と、生まれかけた緊迫状態にやたら古めかしい口調だが幼い少女の声がやや下から割り込んでくる。
「あら、聞いていらっしゃいましたか?」
「偶然じゃがな。ケイオスタウンにちと用がある。何ならわしが連れて行こうかの?」
館長は見た目は口調相応だが、こちらの少女はやたら小柄で人間ならばまだ10歳かそこらに見える。
やたらフリルやらリボンが付いた服───所謂ロリータファッションなのが更にアンバランス感を生み出しては居るが、口調も装いも昨日今日取り繕った風も無い。
「おおティアロット君、すまんな」
スガワラ翁も代役をありがたいとばかりに声をかけた。
「何構わぬ、ぬしも良いか?」
視線を向けられてセリナは僅かにぽかんとし、「あ、はい! お願いします」と思わず頭を下げた。声音は本当に少女特有のやや甲高い物だが妙な風格がある。
「ではティアさん。よろしくお願いします」
大図書館の二人に見送られ、セリナは甘ロリ少女の後ろを付いていく事になったのだが……
「ここじゃな」
途中、ノアノとも合流して到着したのはケイオスタウンのやや深いところにある一軒の店の前だった。
『花屋イビール』
「……」
「……」
呆然とする二人の様子をちらり見て、別段何のコメントをするでもなく少女は店の中へと足を踏み入れる。
ケイオスタウンとはいえ別に特段おどろおどろしい事はない(もちろんそういう区画もあるが)。店内は色鮮やかな花で充ち独特の芳香を放っている。
「イビー、おるかや?」
その問いかけに応じる声
「なんだ? おお、ティアロット嬢か」
「うぇっ!?」
セリナが思わず素っ頓狂な声を挙げるのも無理は無い。少女の声に応じたのはまるで地獄の底から響いてくるような背筋がぞくりとする重低音なのだ。
続いて店の奥から出てきた存在を見て更に言葉を失う。
ワイシャツにズボン。その上に『フラワー・イビール』刺繍が入ったエプロンをつけている男の髪は即頭部から飛び出すようなツンツンぶり。顔はヘビメタを極めましたとばかりのメイク?に乱食い歯が紫色の唇からにゅっと覗いている。
「久しいな。マンドラゴラでも買いに着たのか?」
「いや、ぬしに用がある者の案内じゃて」
目元を見ると微笑んでいるのだろうが、どう見ても生贄を前にした野獣の笑みにしか見えない。
「あ、あ、あ、あの、こ、この方は?」
そういう存在に多少親和性のあるノアノも流石に程度を超えた妙な威圧感というか、ぶっちゃけ瘴気に近い魔力に少し腰を引かせながら問う。
「元魔王のイビール・ダイレグレンドじゃ。今は花屋じゃがな」
「どうも」
にこやか?に握手の手を差し伸べられて、二人はただただ顔を見合わせた。
このクロスロードには多種多様な存在がある。神族と呼ばれる本来は天上にあるべき存在すら住んでいるという話は幾度と聞いた。そういう存在はクロスロードでも町の外延部近い所に住んでいるため滅多に出会う事はないのだが……
「それで? ティアロット嬢が人を連れてきたと言う事は、別段の用ではないかね?」
これでもかというデーモンボイスで朗らかに問いかけられたセリナは頭を真っ白にしつつノアノに視線を逃がすが、ノアノだって言葉が出てこない。
「サンドラの意図はこうじゃろうて。
『魔王』という存在について説明して欲しい」
イビールは「ほぅ」と楽しそうに笑みを濃くすると「貴女がそのような客を連れてきますか」と意味ありげに言うが、少女が表情を変えることは無かった。
「まぁ、ここでは何ですからあがって下さい。お茶でも出しましょう」
エプロンを畳みながら奥に歩いていく元魔王にティアロットは何のためらいも無く付いていく。
「大丈夫ですよね?」
「え、あー……たぶん?」
やたら華やかな通路を二人は覚悟を決めて続くのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さて」
まぁもちろんその先に玉座があったりするわけでもなく、普通の居間(何故か和風)に通された三人は香りのよい緑茶を前に卓を囲んでいる、と言う状況だ。
「そちらの事情は分かりました。ではまずこう言うべきでしょうか」
乱食い歯で飲み難そうではあるが、やたら器用にお茶を啜っていたイビールはコトリと茶碗を置いてふぅと一つ息を吐く。
「魔王とは意味を持たない存在です」
「「は?」」
ぶん投げるが如くの自己否定に二人は緊張も忘れてぽかんとする。それを面白がるようにしてイビールは一つの問いかけを放つ。
「魔王とは何を目的にする存在と思いますか?」
「ええと……世界を破滅に追い込んだりする、でしょうか?」
研究者でもあるセリナは各世界の事象についてもやや見識を広げていた。その知識をまとめてやや遠慮がちに口にすると、彼はうんうんとうなずく。
「ええ。でもよく考えてください。
それをやって魔王に何のメリットがあると思いますか?」
「メリット……ですか?」
ノアノはむーと考えるがそう言われると困ると眉根を寄せた。
「私もね、魔王をやってるときは世界を滅ぼそうとしてたんですよ」
ずずっとひと啜りして彼は続ける。
「その結果、勇者に敗れまして私の場合は封印されたんですがね。
その封印の底がここの扉に繋がってたらしく、この世界にやってきたのですが。
この世界に来てふと思ったのですよ。どうして私は世界を破壊したかったのだろうと」
何を言いたいのか。それを探るようにする二人を愉快そうに眺める。
「世界によってもちろん差異はありますがね、私の場合、部下の魔軍には普通に食べ物を食べる連中やらいたわけですよ。
世界を滅ぼすともちろんそいつらも消えてしまうし、人間を滅ぼすだけにしても農業技術も知らないあいつらが十分な食べ物を確保できるとは思えないのです」
「まぁ、言わんとしてる事はわかります。でも、少し考えればわかりそうな事ですよね?」
「あ、でもこの世界に来たら……って?」
ノアノは勘づいたように声をあげる。
「世界の枠組みに捕らわれていたんでしょうな。魔王である私は人間を脅かし、破壊を広げなければならない、と。
その理由は簡単だと思いますよ?」
「善を強調するための悪……」
セリナの回答にイビールは満足そうにうなずく。
「他の世界の魔王と飲む事もあるんですがね、彼らも大抵同じような感覚なんですよ」
「悪となる行為の大半は非生産的、反社会的行為じゃからな。魔だろうと存在している以上善と呼ばれる行為は必然となる」
まさしくと元魔王は頷く。
「なにしろ世界を破壊するのに自分の魔城を『造らせて』ましたからね。本末転倒もいいところです」
笑う所なのだろうか。その迷いをなんとか顔に出さないようにしつつセリナは話をまとめる。
「要するに、魔王とは『敵視されるべき者』という意味しかなく、その行いに本人からしての価値はまず無い。
だから世界を離れて役割から解放された瞬間、自我を持てたと?」
「私はそう考えています。もちろん、意味を持って魔王を為す者も居ますが。
ねえ、ティアロット嬢?」
黙して口を挟む事の無かった少女に魔王は視線を向けるが、彼女は口を開かない。彼はフフリと悪い笑みを浮かべ
「さて、貴女方の疑問に対し、これで答えは出せるのではないでしょうか?」
「……この世界で魔王を覚醒させれば、平和裏に解決させることが可能かもしれない……ですよね?」
やや自信なさげなノアノの言葉に彼はゆっくりとうなずく。
「その魔王の魂が無垢なままに育てられたというのも一因でしょう。かの世界に居ればその魂は覚醒共に世界のルールに縛られ魔王としての役割に赴くやもしれませんが、ここではそれがありません。
100%ではありませんがそう低い確率ではないでしょう」
ノアノとセリナは顔を見合わせ小さく頷き合う。
「ただ」
水を差すように、元魔王はぽつり呟く。
「魔王という存在がルールで存在する以上、それを利用する者が存在します」
それは善性を強調したい神であり、希望となるべく勇者であり、そして────
「神殿の方ですか」
イビールは応じず、茶を啜った。
「セリナさん……どうしましょうか」
「そうですね……」
彼女は視線を二人にこっそり向けるが、相談に参加するそぶりは無い。だがこの場を持する素ぶりもない。
恐らく────
「相談いたしましょう」
この二人は致命的な間違いに対しては口を挟んでくるだろう。
そう踏んでセリナは改めて状況と知識を整理しはじめた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして────
「ぐ……」
後ろでじたばたと暴れる初老の男をやや鬱陶しく思いながらロウサイアは猿轡かまされた口に不快感を覚えつつも苦笑を浮かべる。
姫を連れてこの世界を脱しようとした矢先、突然現れた三人組に襲われたのである。
後方に居た二人であればなんとかなった。だが突出してきた少女に翻弄され気が付けば巨大な剣で思いっきり腹をぶん殴られていたのだ。
そうしてる間に確かセリナとか言う女と誘拐犯に雇われた魔女が雇い主をふん縛ってしまった。
聞いた報告から、自分を吹き飛ばした女は姫様を誘拐犯から奪って逃走したという少女だろう。三者三様の立場だった彼女らがどうして結託したのか。
……そりゃぁ、今も意地汚く暴れまわってる雇い主のせいだろうなぁとため息をひとつ吐く。
この男は魔王の再来を切望していた。王にも話していない事だが彼はこの事件の直前まで『勇者』候補を探しまわっていた。魔王の復活に対し神殿の祝福を受けた勇者がそれを討つというストリーを思い描いていたのである。無論それは神殿の権威を明確にし、さらには神殿内での地位を確保するという両得を狙ったものだ。
彼女らは蛮行を詫びた上で姫に事情と自分たちが為したい事を話した。その方法が彼女の運命はおろか、今はまだ無垢な少女でしかない魔王の魂すら救う方法だと論じた。
魔王はどうやっても魔王だ。
彼だってそう思わなくは無い。だが彼女らは別の世界の元魔王に話を聞いたうえでの結論だと言い、信じられないのであれば合わせるとまで言って来た。
そうなると姫に断る理由はほぼ無くなった。例え魔王がやはり破壊の化身として甦ってもクロスロードで復活する限り国に被害が及ぶ事もない。また純粋に彼女を愛するような存在すら居るのに、ただ予言に従うままに敵対してもいいのかという迷いも生まれてしまったのだろう。
諦めな。と胸中で呟く。
それと同時に勇者探しの旅を経験した男はこうも思う。
もしかすると、あの男こそが世界を救った勇者だったのかもしれねぇな、と。
ともあれ、例えここで抜け出してもあの大剣を持った女には勝てる気はしない。抜け出せない事もないがここはおとなしく結果を待とうと決め、ロウサイアは枢機卿のうめきをシャットアウトした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
結論から言えば、彼女たちの目論見はほぼ完全な形で成功した。
覚醒を迎え分離した魔王の魂はその無駄に多い魔力で自らの肉体を構築したが、それは伝承に伝えられるようなおどろおどろしいものでなく姫と瓜二つの姿となった。姿だけでなくその心にも特段の変化は無く、すくりと自らの足で立った魔王はついでに救出されたグルトンにそのままの笑顔を向けたのだった。
アムネリジスはその結果に満足したようで、グルトンに国外追放という処罰を与えるとだけ告げた。
セリナとノアノは意味がわからず問いかけの視線を向けると、「これは死罪よりも重い罪とされている」と王女は微笑みを浮かべた。未だ未開の地も多く時折戦争の起こる彼女の世界で国外追放された者がまっとうに生きて行ける道理は無い。死罪と同等でそれ以上に重い罪となりうるのだ。
最大級の罰を与えられてはミルンデルク卿としても文句の付けようがないはずだと彼女は小さく続ける。どうやら事の流れからかの枢機卿が何を狙っているのか察したようである。
「それでは私は国に戻ります。いろいろとお世話になりました」
王族の優雅さ。綺麗な振る舞いにセリナもノアノも恐縮したように頭を下げるが、「どーいたしましてー」と途中参加してきたレイリーだけは気楽に応じる。
その傍らで平伏するグルトンと、状況をあまり理解している様子でない魔王に彼女は優しげな視線を向けた。
「グルトン」
「は、はい! この度は本当に……っ!」
彼女と同郷でありながら一番状況を理解していないだろう男は緊張で死なないかと心配になるほどの顔面蒼白ぶりで頭を地面にこすりつける。
「貴方への刑罰は与えました。我が国でも最大級の処罰を与えられて感謝されても困ります」
やや冗談めかした口調に彼は改めて深く頭を下げた。
「彼女は私の分身のような存在でもあります。どうか助けてあげてください」
「命に代えても!」
魂の奥底からの言葉にアムネリジスは花のような笑みを改めて浮かべ、自身とそっくりの魔王に視線を転じる。
「貴女に名前を差し上げましょう。
テトラリジス……。イゼリアンズの名を名乗る事は許されませんが、テトラリジス・ロス・デルスを名乗りなさい」
「テトラ?」
きょとんとする魔王に彼女は失笑。
「貴族の名もおかしいですね。貴女はテトラよ」
「テトラ……。うん、ありがとうアムネ」
にっこりと童女の笑みを返す魔王───テトラにうんとひとつ頷きを返す。
「それでは私は枢機卿を助けて国に戻る事とします。
お忍びでこちらに来る事があれば、改めてこの街を案内してください」
「はい!」
「ええ、お待ちしております」
ノアノとセリナの返事に「ありがとうございます」と言葉を残し、彼女はその場を辞す。
それを十分に見送ってから、グルトンは改めて三人に向き直り深々と頭を下げたのだった。
こうしてまた奇妙な来訪者がこのクロスロードに増えた。
それが何を意味するのか、はたまたこの地ではよくあるひとコマの風景なのか。
やや春めいてきた空の下、セリナとノアノは打ち上げでもしようかと会話しながら街中に消えていくのだった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
どうも、総合GM神衣舞です。
というわけで無事「薄氷の表裏」も完結となりました。
ここまで来ればわかるでしょうが、表裏とは魔王と王女の二重の魂を意味しています。
間もなくその境界を失う彼女と何も知らないままに恋におぼれて暴走した青年のお話に悪い枢機卿(笑)が絡むという内容になりました。
ラストについては当初 Vs魔王戦を想定していました。もし彼女が故郷に帰ればそれは実現したでしょう。
しかしクロスロードの状況を鑑みて今回の裁定となりました。如何だったでしょうか。
テトラと名前をもらった魔王の魂(転生体?)はこれからまったりとクロスロードでいろんな事を学んでいくことでしょう。
まぁ何かやっちまうと本物の魔王的な行動に出かねないのが純粋であることの恐怖ですが。
……ま、そうなってもイビールとその飲み仲間(マテ)がなんとかするでしょ。
ということでお疲れさまでした!