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【inv06】『ばとる おぶ せいぎのみかた』
〜その0〜
(2010/5/11)
「ねえ」
 玉座に座る少女が誰にと無く問いかける。
「最近思うんだよね。ヒーローって弱すぎない?」
「ダイアクトー様のお強さ故です」
 代表して全身タイツの1人が応じると「そんなの当たり前よっ」と言いながら蹴りを入れられる。子気味いい音がして黒タイツは壁まで吹っ飛んだ。
「私が期待しているのはそういう言葉じゃないの」
「ダイアクトー様の美しさ故ぐほっ!?」
「じゃあダイアクトー様の可愛いらぶへぇ!?」
「ならばダイアクトー様のげぼぉっ!?」
「俺も蹴ってぶべらっ!?」
「何か最後変なの混じったけど……まぁいいわ」
 玉座に座りなおして睥睨する。
「やっぱりヒーローは正義の象徴。それを無残に潰せば愚民どもは恐怖に怯えるわ。
 でも弱いヒーローじゃダメなの。強いヒーローをけちょんけちょんにしてこそと思うのよ」
 おーと言う感嘆詞と共に拍手。とても統一された───言い換えればコテハンの動きだが、彼女はお気に召したらしい。声のトーンを一段階上げる。
「でも出てくるヒーローはみんな弱いのよ。これじゃだめだわ」
 そりゃあそうだろう。何しろヒーロー役も交代交代で黒タイツが変装しているのだから。間違っても彼女を傷つけてはならないがバレても困るというぎりぎりのラインで戦いを繰り広げている。困る事はあっても危機に陥った事など一度も無いはずだ。
「もっと強いヒーローを探して。いつもの連中はもう飽きたわ!」
「……」
 顔を見合わせる黒タイツ集団。
「返事は?」
 問われれば答えは一つしかない。
「「「「「「御意!!!!」」」」」」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「とは言ったものの」
 黒タイツAが言った。
「どうする? お嬢様に怪我されるわけにもいかんし」
 黒タイツBが言葉を引き継ぐ。
「いや、もう傷を云々という心配をした戦い方じゃお嬢様は納得しないのだろう」
 黒タイツCの神妙な言葉に全員が驚きの雰囲気を漏らす。顔も隠れて居るのでジェスチャーと雰囲気で推し量るしかない。
「だがっ!」
 Dの言葉をCは断ち切る。
「旦那様もお嬢様の教育としてこのクロスロードに留学させているのだぞ」
「あれ? そうだっけ?」
 Eはぽつりと零す。全員沈黙。口にしたCもまた「うん、そんな事実は無かった。スマン」と謝罪。ぶっちゃけ面白そうだからでここに来ているだけである。
「だが我々ではお嬢様を傷つけることがまず許されん」
 F? あー、Bだっけか? めんどくさい。『黒タイツ』が言うと「そこが一番の問題だ」と黒タイツが応じる。
「お嬢様の望みを叶えるには他の来訪者に頼む他無い」
「だが……万が一の事があれば!」
 黒タイツの大胆な意見に黒タイツが食って掛かる。
「無論その可能性もある。だから我々が居る。逆に考えるんだ。お嬢様をサポートすると言う本分に立ち返ることが出来るんだぞ?
 それにいつまでも子供扱いするわけにもいかない。多少の傷はこの際目を瞑るべきだ」
 黒タイツは冷静に諭し、他の黒タイツはうーんと考え込む。
「だが当然KYな律法の翼などには依頼できない。
 一般の探索者の中から選ばなければならないだろうな」
「あいつら容赦無いからなぁ」
 悪の組織を名乗るがため、律法の翼(特に過激派)からはたまに襲撃を受けることがある。
「そういえば最近純白の酒場に来る客でわりかし気のいい連中が居るという噂を耳にしたな」
「ほう」
「その辺りに依頼すればなんとかなるかもしれん」
「だが、腕は確かなのか?」
 黒タイツが神妙な声で問う。
「ああ、そっちの問題もあったな」
 別の黒タイツが呟き、だが答えは誰の口からも出ない。
「なぁ、次々回からにしないか?」
 今まで一言もしゃべっていなかった黒タイツがおもむろに口を挟む。
「何を……お嬢様は次の対戦からを望まれている。それを……」
「次なんだ……」
 その黒タイツの中に篭るような熱のある言葉に黒タイツが息を呑む。
「次が俺が殴られる番というのに。みすみす他人にぶべらぁああああ!?」
 全員の物理ダメージを伴うツッコミに黒タイツダウン。
「も……もっと……!」
 留めの一撃が決まった。
「ともあれ時間もない」
 何も無かった。暗黙の了解の下で黒タイツは皆(一名を除く)に告げる。
「物は試しとも言う。早速行動に移ろう」
「「「「「応」」」」」

 そうして悪の組織は動き出したのだった。
 かっこわらい

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総合GMの神衣舞だぜぃ(=ω=)
というわけで隠れた人気を誇る(どこで?)ダイアクトーとその一味が動き出すコミカルシナリオとなります。
まぁ、今回はジャブなので長くても2話くらいになります。

……むしろ黒タイツ集団@戦闘員の方が気に入り始めたんだが、そこは内緒な?
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ADMIN