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【inv0X】 ・・・・・・・・
VOICE
(2010/05/13)
・・・・・・
 ・・・・・・・

 わ・・・声・・・え・・か?
 ・・し・声・・こ・・す・?

 わ・・は目・・ま・た。
 ・・だけ・時・・ぎ・の・・分・・ま・・。
 し・・わた・・・覚・・・た。

 わ・しの・・で来・・さ・。
 ・願・・・す。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 扉の塔と扉の園。そしてサンロードリバー。
 それ以外はただただ荒野が広がるだけのこの多重交錯世界ターミナルは開かれし日より約4年を経て様々な物を得ていた。
 来訪者の拠点として成立した町クロスロード。
 更なる足がかりとして建設された衛星都市。
 そしてその中間に現れた大迷宮。
 管理組合はクロスロードと衛星都市間の交通のため鉄道の建設を発表。その中間駅として大迷宮の上に簡易的な宿場町が設立されることも決まった。
 そうなると目端の利くものの行動は早い。危険を顧みずに大迷宮へと向かった一部の商人達は大迷宮の第一階層を制圧。様々な世界の建築技術を駆使して地下街を建設してしまった。再来以降怪物の出現頻度は普段どおりになったとは言え、なんとも豪胆な行動である。
 しかし地上、そして二階層との通路にバリケードを作り上げた彼らは見事に宿場町を作り上げてしまったのである。
 彼らは早速管理組合と折衝を行い、駅の建設には全面協力を明言。また他の来訪者の不満を抑えるために出入りの制限を一切行わないとした。
 瞬く間に整えられた街に遺跡探索を好む探索者が集まりだし、半月後にはそれなりの体裁が整うまでになっていた。
 新暦2年5の月。彼らはラビリンス商業組合を発足。大迷宮探索のサポートと銘打って本格的な商業活動を開始したのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「さて、定期例会を始める」
 議長役でもある老人が一同を見渡して宣言する。彼は鑑定のプロでマジックアイテムや美術品等に造詣が深い。主に迷宮での入手品の鑑定、買取を行っている。
「定期と言っても一回目だからのぅ。まぁ、問題があれば挙げてくれぃ」
 軽い調子での発言に集まった他5人が笑みを零す。
「順調ったぁ順調だ。管理組合の丸っこいのみたいな特急の建築はできないが、そのせいで職にあぶれてた大工関係を安く活用できたからな。
 経済は上手く回りつつあるよ」
 製造系をまとめる髭面のドワーフが満足げに発言する。
「エンジェルウィングスが融通を利かせてくれたからな」
 ちらりと視線を送る先にはダチョウが鎮座していた。それがきょろり周囲を見渡し「こちらと儲けに齧れるさかい、ええ話や」と妙なイントネーションで返事をした。彼はエンジェルウィングスの社員である。
「食料、宿泊場所についても今は順調だよ。ただ大迷宮への挑戦者が日に日に増えてるから早いところ寝床の確保をした方がいいかもしれない」
 おばさんな声と口調で話すのは見目麗しい女性だ。だが良く見るとそれは人形かアンドロイドか、そういった物であると分かる。
「けれどもむやみな拡張は迷宮が枯れた時に負債となりませんか?」
 たおやかな声。令嬢という言葉がふさわしい少女の言葉に、人形は「確かにねぇ。今3階層だっけ? 実は4階層で終わりでしたなんていわれたら目も当てられないよ」と苦笑いを作る。
「だが、最低でも100m以上の深度は確認しているのだろ?」
 厳つい体つきのメタリックブラックな肌の男が腕組みのまま問う。警備防衛隊長である彼はコツコツと床を足で叩く。
「音か何かで測ったとか聞いたが」
「音波探査ですね」人形が応じる。「それによると地下2階層から下に100m程度空洞があることが確認されています」
「それ以上先は分からないのですよね?」
 令嬢の問いに「この世界の制約があるからなぁ」とドワーフが髭をしごいた。
 100m先の目隠し。いかなる方法でもそれ以上先の事を遠隔で調べる事はこの世界では出来無い事として認知されていた。
「ただ、横にも広大やろ? 一年で枯れるなんてないやろ?」
 ダチョウの発言を楽観視と見るか、一堂は沈黙で計算式をこね回す。
「クロスロードはその半数近くが探索者じゃ。一気に人が流れ込めばそれもわからんじゃろ」
 老人の言葉に「せやかてなぁ」と羽先で頭を掻く。
「入場制限なんかしよったら、批難轟々やで?」
「当然ね。そこばかりは我々の商運しだいってことかしら」
 人形の発言に皆が苦笑を漏らす。
「……しかし、そう考えると一つ良くない話があるな」
 隊長の言葉に注目が集まる。
「皆も聞いた事があるだろう。『夢』の話だ」
 もちろんこの場の全員が認識している。この大迷宮で寝泊りするとたまに決まった夢を見るのである。それはかすれかすれの言葉で女性が何かを言い続けるというもので、しかしその詳細は『夢』ということもあり一定ではない。
 共通しているのは『女性』が『懇願している』という事くらいだ。
「一部の噂ではこの迷宮の最深部にその女性が居て、助けを求めているという事なんだが……
 もしそうなら、そいつは表層から100m以内に居るということにならないか?」
 率直な意見に誰もが表情を変える。
「いや、すでに二階層からの探査で下に100m以上あるんだぞ?
 そもそも最下層に居るというのは噂だしのぅ。それがこの迷宮の底とは言えまい」
 ドワーフの言葉に「それもそうか」と隊長は深く頷く。
「でも、同時に表層から100mの範囲に意志を持った誰かが居るというのも間違いではないのでしょう」
 令嬢の言葉は今までに判明しているこの世界のルールからすれば恐らく正しいのだろう。
「そうかて、決め付けるものようないんちゃうか?」
「そうねぇ。事実ここはついこの前まで巨大なあり地獄だったわけだし。
 フィールドの中って物理法則が書き換わるって聞いたわよ?」
 ダチョウの言葉に人形が同意する。
「予測についてはさておき、これに対する混乱はあるのかね?」
 老人の言葉に隊長は首を横に振る。
「面白がると言うか、凄い物が眠っているという噂に拍車をかけているだけだな」
「曰くありげだからな」
 ドワーフがにやりとしながら言う。
「おかしな噂に発展しそうであればまた議題にするかのぅ。
 この件については皆別途気にしておいてくれぃ。では次の議題に行こうかの」
 空気を切り替えるようにして彼らは会話を続ける。
 今は深く気にする必要はない。
 そう、その判断はとても正しかった。今は。

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にょーほっほっほ。神衣舞だお。
いきなりなんだよこれ!?って感じですが、説明は一切しません。
うひひひ。こういうのも面白いかなぁって。

次の更新は未定です。うひひ。
Count1
(2010/06/14)
「随分と賑やかになってきたものね」
 令嬢は商館の二階、その窓から通りを見つめる。
「せやな。そろそろ鉄道も着工やからな。ごっつー稼げるで」
 ダチョウが楽しそうに肩翼をぱたぱたと降った。
「まぁ、駅の権利を管理組合に持っていかれたんは気にいらんけどな」
「とは言え、関所のようになってしまえば反感はうちに集まりますからね。
 管理組合が『善意』で動いているというのは困りモノです」
 利用者にとってその善意は有り難いが、商業活動には悪益であるとダチョウは頷く。
「『いつまでもあると思うな管理組合』なんて標語を掲げたいくらいでっせ」
 現状では来訪者の大半は非生産者だ。怪物という天災のために一次産業が成立していないために、二次、三次産業が歪んだ膨らみ方をしている。本来は一次、二次とだんだん先細って行く形になるのが理想だが、今のクロスロードは逆三角形になっている。
「管理組合がのうなっただけで壊滅するんやったらあかん。もうそういうことを考え始める時期やろ?」
「……」
 令嬢は視線をダチョウに戻し、少しだけ目を細める。
「それはエンジェルウィングスとしてのお話かしら?
 ……それとも」
「うちの考えや。あんさんなら興味持つやろと思ってな。
 遺跡にもぐる探索者が増えたのもええ頃合やから」
 令嬢はほんの少しだけ肩を竦めると、「良いでしょう、伺いましょう?」と微笑むのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「現状報告をします」
 メルキド・ラ・アース────再来にて英雄扱いされている女性はいつもの落ち着き払った声音で告げる。
「鉄道の着手は予定通り6の月初旬から開始。敷設完了予定は8の月中旬です。
 列車自体はドゥゲスト氏を初めとした開発スタッフで魔道式動力型を建造中。こちらは7の月頭には試作品が完成するとのことです」
 返答は無い。こちらを注目している気配はあるので言葉を続ける。
「衛星都市への来訪者数は一時期から見てかなり減少しています。未探索地域への探索を主にしているパーティは積極的に活用していますが、大半の探索者はフィールドモンスターの存在が知れ渡った事もあり、二の足を踏んでいます。
 代わりに大迷宮への探索志願者が相当数増えています」
 やはり言葉は無い。なのでアースは少しだけ間を置き「ここまでで質問はありますか?」と問いかけてみる。
「大丈夫です。続けてください」
 応じる声は穏やかに。やや苦笑を滲ませているのが気にかかるが彼女は続ける。
「はい。ではその大迷宮についてです。
 再来後に比べ探索者の動員数は約5倍に膨れ上がっています。ラビリンス商業組合から提供していただいた資料によれば現在最深到達階が地下5階層。出現している敵はやはり多種多様ですがせいぜい中型の怪物しか出現していないとのことです。
 一方で未だに第一階層の全てが解明されているわけでなく、未だに探索が行われています。
 四方2Kmの範囲で迷宮が広がっていることが明らかになっています」
「夢、は?」
 二人目の言葉にアースは一瞬怪訝そうな顔をする。が、すぐに思い出して資料を脳裏から引っ張り出した。
「挑戦者が増えた事もあり、報告数は格段に増えているようです。しかし未だにそれが何を意味するのかは不明。
 助けを求めている、という話が大勢を占めているというところでしょうか」
「……そう」
「で? そのラビリンス商業組合はどんな感じ?」
 三人目の軽い声音に彼女はふと浮かぶ疑念を振り払った。
「今のところ問題なく運営されているようです。
 彼らが科したルールは3つ。
 彼らの管理区域内での一切の戦闘行為を禁止し、違反した者にペナルティを与える。
 治安向上のために野宿を禁止。
 そして管理区域で商売を営む場合の徴税です。そのどれも行き過ぎた様子も無いためおおむね受け入れられているようです」
 ラビリンス商業組合はさすが商人と言うべきか。人心を敵に回さない具合というものがよく分かっているという感触で立ち回っている。
「そ。じゃあこっちから一点」
「え?」
 つい声に出してしまって慌てて手の平を口に当てる。
「あっちに妙な物流があるかもしんないけど、別に戦争準備とかじゃないから気にしないで。今回に関しては、だけどね」
「……それはどういう意味でしょうか?」
「すぐにわかるってば」
 人を茶化す笑み。それが過分に含まれた声にアースはため息をかみ殺す。こういうところを見るとイルフィナと兄妹かかにかじゃないかと疑ってしまう。
「わかりました。報告は以上です」
「ほい、ご苦労様」
 彼女らが去るのを感じつつ、アースはこれからすべき事を頭の中で整理し始めた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「5階層の怪物は随分と手ごわいらしいじゃないかい」
 随分と和風で古風の割烹着を付けた人形が昼飯をかっ食らう隊長の前に茶のお代わりを置いた。 
「ん? なんか聞いたのか?」
「いや、4階層くらいまでは結構なペースで到達してたじゃないか」
「ああ、そういうことか」
 ぐびりと茶を飲んだ隊長はふうと一息。
「最近新しい挑戦者が増えただろ? そいつらが浅い階層でいろいろ見つけたらしくてな。
 無理して先に進むよりきっちり探索した方がいいって考え方にシフトしたんだ」
「はー、なるほどね」
「なにしろ広さは四方2キロくらいだって話だからなぁ。一階層はほぼ探索しつくされたようだが、地図見ても迷うぞ」
 PB経由で送られてきた地図データを参照し人形は苦笑。
「こりゃあ、PBの地図案内機能様様だろうねぇ」
 びっしりと書き込まれた地図にはそれでもまだいくらかの余白が見て取れる。
「一方通行の扉や落とし穴経由でしか行けないところもあるらしいからな。第二階層なんて第一階層に比べれば30%ってところだ」
「まぁ、複雑ならそれだけ客も長居するから、あたしとしては大歓迎だけどね」
 からからと気持ちよく笑うが、作り物めいた(実際作り物なのだが)美貌を有してるためにもう少しお淑やかにとか言いたくなる。まぁ、これはこれで愛嬌があるのだから相対する人は下手に畏まらないでいいのだろう。
「無理に踏み込むより少しでも怪物が掃討された浅い階を探索するって流れってことさ」
 ごっそさんと手を合わせたところでバンと少し強めに扉が開く。
「隊長! 喧嘩です!」
「ああ? 喧嘩くらいお前らでなんとかしろよ」
「それがどっちも有名どころのパーティで、手が出せず……!」
 めんどくせぇなぁと頭を掻いて席を立つ。
「まぁ、自警団の資金増額したんだからしっかり働いてきな」
「わーってるよ。ほれ、いくぞ。案内しろ」
「はい!」
 若い隊員をせかして隊長は後に続く。
「怪我しない様にね」
 威勢の良い声を背に受け、男は軽く手を挙げて応じる。
 ともあれ、今はまだ平穏無事な時間が流れていた。

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はい、不定期更新第二回です。
あれ? 俺リアクションしたのに出てきてないじゃん!?
とお思いでしょうが、確実にリアクションを反映した流れになっています。このあたりは再来を体験した人は分かるのではないでしょうか。うひひ。
まぁ、それだけでは寂しいのでちゃんと経過報酬を用意する事にしますので今後とも上手く楽しんでいただければ幸いかと。
もちろんフラグとなるポイントに触れたりすると色々と登場の機会は生まれます。
では、リアクションをお待ちしております。
Count2
(2010/08/24)
 地下1階層はほぼ解明されたようだ。
 代わりとばかりに第1階層に広がる街、通称大迷宮都市。ここを訪れた探索者は地下2階以降の探索に精力的に動いている。
 先行組は地下5階層まで到達したという噂もあるが、詳細は定かではない。
 大迷宮第1階層の広さは四方約1km程度。その四分の一程度に町並みが広がりつつある。町並みとは言ってもやはり元は迷宮だ。比較的広いフロアに宿や商店が密集する形になっており、慣れない者は目的の場所に行くだけで数時間を要する事もある。
 すでに壁をブチ抜いて拡張したり、部分や新たに柱を立てて崩落を防止したりしている区画もある。しかし、安全面からすると限界がある。一番懸念しなければならないのは大襲撃のように【怪物】大行進が上で起こったとき、崩落してしまう事だ。もちろんこの世界に集う様々な技術を駆使すれば、前述の不安を解消した上でこの第1階層全ての壁を取り払う事も可能だろうが。
「一時のブームが去ったとは言えまだまだ盛況。衛星都市が出来て探索の足が伸びたとは言え、そちらもすぐに壁にぶち当たる。
 そうなれば探索者の足は自ずとこちらへ向くだろうが……」
 向いてもらわなければ金は転がり込まない。そしてそのタイミングまでは無闇に投資を行えない。技術的には可能だがその為にはその投資が回収可能であると確信を持つ必要がある。
「どうにも焦れってー話だな」
 組んだ手を頭の後ろに回してだらしなく座るのは『令嬢』だ。しかしいつものしおらしさは微塵も無く、他に人の居ない空間で椅子をぎしぎしと軋ませる。
「まぁ、それが楽しいっちゃ楽しいんだが」
 身に纏う物は容姿に沿う淑やかで可憐なドレスと変わらないが、その雰囲気は粗野なチンピラのそれだ。彼女を知る者はそっくりの別人か何かと思うだろう。
「お客が参りました」
 扉の向こうからの声に『令嬢』はコンマ1秒で粗暴な雰囲気を消去。
「どなたかしら?」
 今の今までの光景を見ていた者が居たら自分の頭を疑いかねないほど淑やかな声音が返されると、「うちや」と別の独特のイントネーションを持った声が代わりに応じた。
「どうぞ?」
 面会の予定はなかったが、さりとて追い返す理由も無い。「邪魔するで」と入ってきたダチョウに令嬢は花が綻び開くような笑顔を向ける。
「いかがなさいました?」
「儲け話もってきてん。自分なら乗ると思うてな」
 単刀直入な物言いに令嬢は笑顔を崩さぬままに「お伺いしましょう」と応じる。
「地下1階層の制圧はほぼ完了したのは言わんでもええな?
 そやけど街をやたら広げるわけにはいかん」
 まさしく今考えていた事だと心の中で失笑。
「そこで、や。土地の有効活用してみようと思うんよ」
「有効活用、ですか?」
「せや! これ見てみ」
 と、腰に下げた袋から取り出したのは細い管だ。
「これは?」
「光ファイバーケーブルって名前でな。お日様の光をこれで地下にまで持ってこれる」
「はぁ……」
 と言われてもそこにある限りはただの紐だ。
「中にぎょうさん鏡が入ってると思えばええ。それでお日様の光を誘導するんや」
「……それで?」
「農業やらへんか?」
 きゅっと眉根が寄るのは抑えられない。
「つまり。その管で光を地下に持ってきて、空きスペースで農業をする、と?」
「せや! 理解が早いな!」
 それだけであれば単純な話だ。しかし……こんな細い管を何万本用意すれば光を確保できると言うのか。
「無理です」
「なんでやねん?!」
 令嬢の答えにダチョウが独特のポーズで突っ込む。
「仮に光源をこれで確保できたとしましょう。しかし肝心の水が確保できません」
 農業を行うならば光も必要だろうが、それよりも重大なのは水の問題だ。
「雨水をかき集めるにしてもそれを分配する水路を作るのには莫大な費用がかかりますし、当然水源を持たないこの街で飲料水を転用するなどありえません」
 大迷宮都市の水はクロスロードか衛星都市からの定期的な給水でまかなわれている。線路の70%が完成しており、水を運ぶペースもようやく安定してきた所だ。
「それに水はけ、水の逃げ道の問題もあります。ただ種と水を撒いてできるとは思わない方が良いですね」
「自分詳しいなぁ」
「小麦なども扱っていましたので。基礎知識ですよ」
 器用に翼で腕組して困るダチョウを冷ややかに見つめつつ、今の話を別のアプローチで考察する。
 というのも、もしここで農業が可能となれば得られる利益は少なくないと踏んでいる。管理組合が敷いた流通網がある以上、ここで生産される農産物は異世界から輸入される食材よりも高くなるのはまず間違いない。それでも彼が農業をやると言い出した理由には令嬢も気付いている。
 それは不安だ。ターミナルに措ける食料自給率はほぼ0%。食用とできる【怪物】の肉や農業実験で作られる小規模な食材くらいしかない。そんな状況でもしも流通がストップしたら?
 たちまちクロスロードは干上がるに違いない。繋がらない全ての世界が一斉にそっぽを向くというのも中々に無い状況ではあるが、その可能性に至ってしまえば怖くもなる。突然扉が開いたように、突然全ての扉が機能停止する可能性だってある。
 加えて背中に大動脈を持つクロスロードはともかく、この大迷宮都市や衛星都市は常に孤立の危険を抱えている。食料の自給ができるならば是が非でも得たい保険である。ましてや、もしもこのただ広い空間で農業を確立させることができたのならば、この迷宮が枯れた後の価値が残る事になる。
「問題は費用と技術ですね。利益優先は良いのですが、ここは名を売って主導権を買うべきでしょう」
 莫大な投資をして失敗したでは話にならない。令嬢の提案にダチョウは何とかならないかと首を左右にふらふらとさせるが、やがてがっくりと思考停止。
「せやな。ほな話詰めようか」
 切り替えの速さはダチョウの美徳だろうか。
 そんな事を一瞬思い、すぐにプランの作成に思考をシフトする。
 商人の基本スキルかと表情に出さずに再びの失笑をしつつ空想に現実のパーツを詰め込み始めた。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 宝探しに勤しむ探索者とは別に、考古学的な興味で大迷宮都市に来る者も後を絶たない。
 この遺跡は一体どのような目的で作られたのか。『扉の塔』『扉の園』に次ぐ三つ目の人工物はこの世界を知る上で重要な足掛かりになると期待されているのだが、前者2つとの違いに様々な疑問と議論を噴出させている。
 明確な差は施設の耐久度だ。来訪者が何をやっても欠片ほどの傷も付けられない塔や扉に対し、この大迷宮は幾らでも破壊可能だ。石壁という見た目に対しては遥かに高い耐久度を有しているものの、大迷宮都市のように一部を破壊してフロアを拡張する事に成功している。
 また迷宮内では極稀に大小さまざまなチェストボックスらしき物が発見されている。その中身はまさに混沌、文化を計らせまいとしているのかと疑いたくなるほど色々な世界の物が詰まっている。多重交錯世界と呼ばれる程数多の世界と繋がるこの地なのだから別に不思議ではないと言えばそれまでだが、ともあれそう言った箱と中身が安置されている理由は何なのかというのは様々な推論を呼んでいる。
 一番有力な説は『趣味』、あるいは『娯楽』だろう。そもそも迷宮を作る理由なんてどの世界でも変わる物じゃない。『封印』か『趣味』。前者は中の物を外に出さないため。後者は製作者が挑戦者を望んで作った玩具箱だ。宝箱が安置されている以上、製作者の趣味ではないかという意見に傾きつつはある。
 一方でここを墓所と仮定する者も居る。箱は棺、中身は故人の遺品で、死体の代わりに遺品を安置するというものだ。特異な意見かというとそうでもない。精霊種や妖怪種を初めとした一部の種族では死後にその存在を完全に消失してしまう。その場合墓所を必要としないのだが墓所という文化を輸入した場合、このような事を始めても不思議ではないのではないか、という事らしい。
 死体が残らないという意見は元住人の痕跡が何一つ発見できていない事に由来しているのだろう。
 
 ────もっとも。
 大抵の探索者は「聞けばわかるんじゃないか?」と考えているようだ。大迷宮都市の上で見る妙な夢。その相手が居るのであれば直接聞けば良い。それよりもどんなお宝を見つけるかの方がよっぽど問題である。
 現在第1階層の探索はほぼ終了。第2階層も第1階層の広さから比較して7割程度が探索し終わっていると見られている。最深到達は第5階層。ただし第3階層以降は殆ど探索の手が伸びていない。というのも第3階層以降は罠や怪物の脅威度がワンランク上がっており、第5階層への階段も逃亡の末に偶然見つけた物だと伝わっていた。
 そもそもこの迷宮の理由よりも沸いてくる怪物の方がよっぽど不可解だ。別の入り口があるのではないかという噂まで存在する。
 そんな情報を背景に、探索者の多くは第2階層の捜索を優先している。間もなくその流れは第3階層へとシフトしていくのだろう。
 この迷宮の果てはどこか。今日も探索者は挑み続けている。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

『第一階層掃討戦の実施に伴い参加者を募集いたします』
 その通達はある日突然張り出された。
 目的は第1階層の安全確保。第2階層への階段をはじめとし、崩落により外と繋がっている場所などをバリケードで固め、フロアの全てを大迷宮都市として使えるようにするというのが目的である。同時に三度目の大襲撃への備えともなる行動である。
 この大迷宮都市は防衛施設としてはかなりの有用性を見込まれている。怪物が盲目的にクロスロードを目指す事は再来の時に確認された事だ。衛星都市と同様、それよりも安全にハリネズミとしての役割を果たす事ができる。また探索が進めば第2階層を予備のシェルターに改造する事で有事の備えもできる。
 この地における一つの節目となる作戦だが難易度はそれほど高く無いというのが大勢を占める見解だ。衛星都市の時のように狙ったような大軍団が襲ってこない限りは。

 ともあれ。
 新暦2年9の月。
 新たな歴史が一つ刻まれようとしている。

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 どーも、総合GMな神衣舞です。
 最後のはフリじゃないよ?とだけ言っておきます。そんなペースで大襲撃繰り返してたまるか(笑
 というわけで状況はまったり推移中。
 リアクションよろしくお願いしますね。
EX-1 第1階層制圧作戦
(2010/09/09)

「地図をお渡ししますので受け取った人から各班の集合場所に集まってください」
 自警団の腕章を付けた人々が忙しく動き回り、500人ほどの探索者がすでに都市化した区画を誘導に従って歩いている。
 ここは大迷宮都市。大迷宮地下一階の入り口周辺に広がる地下都市である。大迷宮発見後地下第一階層は早々に探索されつくしてしまった。ゴールドラッシュにも似た興味本位の探索者が押しかけたためだ。その結果第2階層まではほぼ解明されることとなった。
「バリケード班は商工議会所前集合です! 鐘のついた建物を目指してください!」
 大迷宮都市は大迷宮をそのまま利用しているわけではない。壁をくりぬき、補強しながら街としての機能を強化しつつ進められている。それでもやはり元は迷宮と呼ばれる場所。路地を一つ間違えると途端に迷子になりかねない都市である。
「PBはダメか……」
 とある探索者が困り果てたようにきょろきょろとする。声は聞こえども反響のためにどちらからのものか分からない。ここがクロスロードであればPBが案内してくれるのだが、この都市は管理組合の管理下ではないためかPBの道案内機能が働かないのである。
「そこの人? どこに行こうとしているのですか?」
 自警団の腕章を付けた男が探索者に声をかける。
「ああ、二階層階段付近の防衛の方なんだが」
「なるほど。案内しますね」
 この都市には簡易的だが法律が制定され、刑法も存在している。特に騒乱と破壊活動に対しては強い厳罰が設定されている。それを取り締まるのが自警団の役割ではあるが、副次的にこういう道に迷った人の手助けも仕事のうちだ。
「PBの道案内が使えればいいんだけどな」
「そこは上に言ってもらうしかないですね」
 そんな事を話しながら、二人は地下二階層への階段へと向かうのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ぐうっ!?」
 壁がら撃ち出された矢を間一髪で避ける。
 その瞬間、追い討ちを掛けるように杭がぎゅんと迫ってくる。
「うぉっ!」
 それも倒れてかわす。
「……だ、大丈夫ですか?」
 べったりと地面に張り付くようにして伏せているガスティにヨンが冷や汗交じりに声を掛ける。
「ふふ、こ、これくらい……」
「いやぁ、これくらいって……」
 ノアノも戦慄を覚えながら背後を振り返る。
「第一階層ってまだ全然探索されてない気がするんですけど」
 矢やら落とし穴やらの跡が延々と続いている通路は恐怖を通り越してコントとしか思えない様相だ。
「ふふ……罠に掛かると思っているので避けるのは造作もないぜ」
 妙な自慢をしつつ立ち上がるガスティは一人だけ汚れに汚れまくっている。先ほどから一人でひたすら罠を発動させては間一髪で避けているのだ。
「この道もガスティさんがスネアトラップでよろけて偶然見つけた通路ですしね。誰も通った事ないのかも」
 ノアノの予想は恐らく正しいのだろう。足跡も見当たらず罠は完璧に残っている。
「えーっと、やっぱり慎重に進みませんか?」
「甘いなヨンさん。俺が歩けば同じさ……」
「そ、そんな泣きそうな顔で言わなくても」
 どうフォローしていいのやら。どこか背中が煤けているガスティにノアノは困ったように呟く。
「さぁ、先に進もう。もしかするとお宝の一つもあるかもしれない」
 と、一歩踏み出した途端、何かがぼとりと
「っ!」
 咄嗟にヨンが踏み込み、ガスティの手を無茶苦茶に引っ張る。踏ん張る暇さえなく後方に投げ飛ばされたガスティは運悪くブラブラと揺れていたさっきの杭に頭をぶつけた。だが、そちらを振り返ってる暇は残念ながら無い。
「す、スライムですか?」
 ノアノが気持ち悪そうに後ずさる。落ちて来たスライムはほぼ透明で彼らが持つ明かりを受けて光を乱反射させている。そのサイズ、というか容量は三人を飲み込んでも、いや10人くらいは楽に飲み込めそうなほどでかい。
 ヨンは近くに刺さっていた矢を引き抜くとスライムに向かって投げつける。それはスライムに触れた瞬間、軸も鏃も見えなくなり、スライムと同化してしまった。
「……これって」
「触るとアウトですね。とんでもない仕様ですよ」
 波打つそれはゆっくりと三人の方へ進行を開始する。
「ノアノさんが居て助かりました」
 言われた意味は重々理解している。スライムに効果的なのは基本で言えば
「いっけぇ!!」
 生み出した炎の矢が次々とスライムに着弾し、じゅうと焼ける音と共に酸に似た刺激臭が鼻を突く。
「うぎゅ……」
「堪えてください! ガスティさん、退きながらやりますから先行をお願いします」
「う、うぉう?」
 まだピヨっているガスティが頭を振りながら立ち上がり、歩き始める。こうなってみるとすべての罠を発動した後なので何の憂いも無く行けるのはラッキーだ。
「えいっ!」
 ある程度距離をとって次弾発射。もうと上がる煙を吸わないように逃げながら次々と連射していく。
 恐ろしいのは地面に落ちていた矢や槍、杭などが触れるごとに吸収されていくことだ。
「廊下や壁が溶けないのは幸運なんだか不幸なんだか」
 ヨンが苦笑しながらノアノが転んだりしないようにサポートをしつつ状況を確認する。スライムは二回りほど小さくなっている気がするが、まだまだでかい。
「っと、落とし穴はここだっけか」
 通路にばっくり開いた落とし穴は壁際を歩けば問題なく通れる。ガスティに至っては翼があるので飛べば済む話だ。
「ここに落としちまえ!」
 一瞬いいのかなぁと思ったが背に腹は変えられない。このまま退治できるかもしれないが既に目や喉がヒリヒリしている。
「じゃあちょっと無理します!」
 次から次に詠唱。通路の温度が上がるほどに炎の魔術が連続発射される。スライムは流石にたまらないと身もだえしながら動きを止める。
「行きましょう。失礼しますよ」
「ふえっ!?」
 ヨンがノアノを抱きかかえてジャンプ。壁際の通路を足場に三角飛びで対面へと着地する。
「っ!!」
 必死にトレードマークの帽子と杖が落ちないようにしていたノアノは無事渡りきった事を確認して安堵の吐息を漏らす。
「さて、この穴って何処まで続いてるんですかね」
 ノアノを降ろしつつヨンが呟いたところで再び進行を開始したスライムの先端が落とし穴へと落ち始める。一分もすると質量の半分が落とし穴の中に入ったためかぬるんと全体が落ちてしまった。
「溜まってる、って事はないから、下の階層におちたのかねぇ」
 恐る恐る覗き込み、光をかざして見るが、スライムの姿は見えない。
「後で自警団の方に報告しておきましょう。火が通用することも含めて。
 残りが無いか注意しながら進む必要がありますね。欠片でも触れると厄介そうだ」
「ともあれ、何とかなったことだし。先に行こうぜ。
 ここまできて何も無いって事はないだろ」
 不幸な目に合うのが基本のガスティはさっさと気を取り直して全員を促した。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ふう」
 こちらへ向かってきたワームらしきものの最後の一匹を弾丸が貫いた事を確認してリロード。
「お疲れさん。あんたいい腕してるなぁ」
 ここはバリケードを設置している場所の1つだ。崩落により外に繋がっているため、外からの怪物がたまにもぐりこんでくる。しかしながら待ち構えている探索者の一斉攻撃に今の所問題なくバリケードの製作作業は続いている。
 エディに話しかけてきたのは体格の良い男だ。肌の色はメタリックブラックで魔族か何かなのだろうと推測がつく。
「そりゃどうも」
 方の『自警団』という腕章を確認し、装弾の終わった銃をホルスターに戻す。
「あんたの話は聞いてるよ。イァイリエムを狙撃して術式をぶっ壊したってな」
 即座に抜き撃ちの姿勢に入ったエディを「慌てんなよ」と大きな手が目前を遮る。
「俺は穏健派だ。イァイリエムなんて『神狂い』の敵討ちなんて真っ平御免だよ。
 ラビリンス商業組合にも平和的な協力をしているだけに過ぎん」
「『律法の翼』ではあるんだな」
「まぁな。俺はクロコトネル。自衛隊の隊長を任されている。律法の翼でも一応幹部扱いだが、過激派は毛嫌いしているんでな」
「それが何の用だ?」
 クロコトネルは人の良さそうな笑みを浮かべて「単なる好奇心だよ」と嘯く。
「あとは、そうだな。あんたくらいの腕利きなら顔を通しておいても損は無いと思っただけだ」
「……」
 どう応えるべきかを考え、今は黙しておくことにする。
「なに、イァイリエムは当分戻って来やしないし、過激派もあんた一人に構うわけじゃない。組織の体面ってやつがあるからな」
「何が言いたい?」
「いや、何も。さっき言ったとおりあんたを見かけたからな。顔つなぎしとこうと思っただけさ。
 気を悪くしたなら謝ろう」
「……不要だ」
「そりゃあ、良かった」
 ニィと笑い、彼は「機会があれば飲もうぜ」と言葉を残し去っていく。
 周囲の好奇の視線が鬱陶しい。嘆息一つ漏らし、エディは別のポイントを探す事にした。

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「随分と暇ね」
 クネスは壁に背を預けて下へと下る階段を眺める。
 階段と反対方向には関所が設けられており、彼女らが突破されても簡単には第1階層に入り込めないようになっている。
 それはそうとして、始まって数時間。平和な時間が続いている。
「まぁ、仕方ないでしょうね。第2階層も随分解明されていますから総数は少ないでしょうし」
 自警団の腕章を付けたエルフ種の女性が苦笑混じりに応じた。
「まだ怪物が残っているのは3階層以降です」
「2階層に居ないわけじゃないんでしょ?」
「ええ、ゴブリンが巣を作っていたって話も聞きますし、もしかするとどこかで増えてる可能性もあります。見つかってない通路とかもあるかもしれませんしね」
「3階層より下から出てくる可能性もあるわけよね」
「あるいは、未だにブラックスポットとなっている箇所に抜け道がある可能性もありますね」
 ふーんと鼻を鳴らし、それからやや考えて
「でも、ここでどうやって生活してたのかしらね。
 食料はまぁ、共食いとかあるかもだけど、水が無いんじゃなかったかしら」
「不要らしいですよ」
 エルフがさらりと応じる。
「不要? そんなはずはないんじゃないかしら?」
「大襲撃や再来の時の足跡というか、通った後を調べても休憩した形跡が無いらしいです。
 当然少なくともクロスロードから100km圏内に水場は無かったわけですから水の補給もしていないはずなんです」
 確かにそう言われてみればそうだ。
「生き物なのよね?」
「死骸を確認する限りはそうらしいです」
 妙な話だと思うが、自分も似通った存在ではある。
「じゃあこの下に怪物の帝国があっても不思議じゃないわけね」
「考えたくないですね、それは」
 自警団員は苦笑を漏らすに留めたが、ありえない話ではない。
「それはそうと」
 クネスは階段の方を改めて見遣り、それから周囲で暇そうにしている探索者を眺めた。
「ここは当たりというかはずれと言うか。楽な仕事だったわね」
 エルフの女性は「そうですね」と笑顔で応じ、自分の仕事に戻っていった。
 結局2階層からの襲撃は一件も無く、途中「スライムがっ!?」と血相を変えて逃げ出してきた探索者を保護するだけに終わったのだった。

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 かくして第1階層の制圧は無事完了した。
 大した問題も発生せずバリケードの製作や補修作業は完了し、大迷宮都市は第1階層のすべてのフロアを利用可能になった。
 それをどう使うかはすぐに分かる事ではないだろうが、大迷宮に挑む探索者にとっては少なからず助けになることだろう。

 それはそうとして。
「……どう思う?」
 ガスティが手にしたカードをひらひらと振る。
 例の通路の奥には1つの小さな箱が置いてあった。それを開くとICカードサイズの金属プレートが一枚、安置されていた。
「『敬愛なる私の主人。私はここに居ます。私は貴女を待っています』ですか」
 それがプレートに刻まれた言葉のすべてだ。確認していないのでこのカードに他の機能があるかどうかは不明だが、
「声の主さんでしょうか?」
 ノアノの予想は誰もが思い浮かべる事だろう。
「声の主は女性を待っているってことか。誰の事だろうな?」
「と、言われましてもね」
 ヨンは困ったように笑みを漏らす。来訪者かもしれないし、かつてここにあった文明の誰かかもしれない。
「ともあれ、このカードどうします?
 ある意味重要なものかもしれませんよ?」
 1枚の何の変哲もない金属プレート。
 それを前にして三人は顔を見合わせるのだった。

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ちなみに前回の話でダチョウが農業やろうZE!と言ったのはエディさんのビル型農場の発言を適用したからです。
はい、どーも、神衣舞です。
今回の一件で無事第一階層は安全フロア化しました。多分。
第2階層にスライムが発生しているそうですが、まぁすぐ退治されるでしょう。きっと。
今回は【inv0X】のシナリオリアクションでフラグを踏んだので派生したシナリオです。
引き続き【inv0X】の方へのリアクションをお願いします。

なお、カードについての取り扱いはご自由に決定をお願いしますね☆
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