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【inv11】『にあですぱらだいす』
にあですぱらだいす
「く……くふ……」
 老人がニタリと笑った。
「できた。ついに……できた!」
 老いた体を歓喜に震わせ、周囲に展開するスクリーンを蹴散らすようにばっと白衣を翻す。
 男は科学者だ。飽くなき探究心からかるーくマッドな道に突入し、色々逃げ回った先で『扉』を潜って来たような存在だ。
 その先で魔法や未来の技術に触れ、狂ったようにそれを吸収し、そしてまた一つの成果を生み出した。
 男は間違いなく天才だろう。殆どの世界に措いて魔術は単なる努力で習得できる物ではない。ましてや男の世界では魔法はオカルトの産物だった。それを実物があるというだけで受け入れ、習得して見せた。
 さらには男にとって未来の産物であろう技術も貪欲に飲み込み、そして彼独特の技術体系を作り出したのである。
「私は神の領域に踏み出すのだ」
 男の前にあるのは種。数種類の種が静かに眠りに就いている。
「さあ、実験の時間だ!」

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「随分と涼しくなったもんですね」
 若い戦士がパーティメンバーにそう話しかける。
「ホントね。夏は嫌いだわ。私の故郷にあんな暑くてじめじめした場所なんてないもの。
 夏の間だけ故郷に帰ろうかと思ったくらいよ」
 エルフの女性が同意し、パーティリーダーの男が苦笑いを浮かべる。
「勘弁してくれ。夏の間は稼ぎ時なんだから」
「別に冬でも怪物は着ますけどね」
 神官服を着た男の言葉に「まぁな」とリーダーは同意する。
「故郷ってやっぱり森なんですか?」
 戦士が興味本位で問う。エルフは気をよくしたようで耳をぴくりと跳ねさせると
「ええ。年中気温が穏やかで綺麗な花や木の実が生るの」
 自慢げに返答をし、それから戦士の顔が感心というよりも惚けているように見えてちょっと気を悪くする。
「聞いてる?」
「え、ええ。聞いてますけど……」
 そういいながらすっと指差すのはエルフの背後。
「あんな感じですか?」
「え?」
 今の会話は『森』についてだ。少なくともクロスロードの周囲に森なんて物はない。
 なかったはずだ。
「な!?」
 森と言うにはやや小さいかもしれないが、そこには確かに緑が繁茂する土地があった。
「新手の怪物!? サクラみたいな……」
 春に大行進してきたサクラの集団を思い出して身構えるが移動している様子は無い。
「昨日までは無かったよな?」
「記憶にないですね」
 神官が神妙な顔で周囲を見渡すと、気付いた者がぽかんとそちらの方を見ている。
「なんか妙な事が始まりそうだなぁ」
 戦士の呟きはおおよそ的を得ていた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「森だなぁ」
 立派な大木や草木が茂り、見上げればみずみずしい果実が多く実っている。
「森というより乱雑な果実園ですね。木の実が生ってる木がかなり多いです」
 男は管理組合のスタッフで、女の方は施術院から駆り出された人員だ。突然現れた森の先行調査にやってきている。踏み込む前に目に付く木がどの世界の植物なのかを確認していると
『うわぁあああ!?』
 奥から悲鳴が響き、顔を見合わせる。
「もう踏み込んだ探索者が居るのか」
「その可能性は高いですね。どうします?」
 女の方が聞くが、男は逡巡する。こんなわけの分からない現象に飛び込むのは間違いなく探索者で、シロウトじゃない。それが悲鳴を上げているのだからただ事ではないだろう。

 ヒュッ

 何かが掠めた。男が自分の頬に触れるとぬるりという感触。溢れた鮮血が顎を滴った。
「矢……!?」
「い、いえ。違うみたいです」
 女が走り、地面に刺さったそれを見下ろす。矢というよりランスだ。細長く茶色い三角錐の棒が地面に深く刺さっている。
「これは……」
「えーっと。多分ですけど」
 施術院では薬草調合を行うために管理組合の協力の下、PBのデータベースに植物、薬品類が追加されている。彼女はそれらを確認し
「栗という植物のイガ……ですね」
「イガ?」
「トゲです」
 確かに材質は植物のように見える。が、表面は金属のようにつるつるで光沢があり、掠めただけで皮膚を切り裂く鋭さとそして速さは実感した通りだ。
「……じゃあ今の悲鳴は」
「このイガに襲われたんでしょうね」
 こんなの直撃したら普通に致命傷だ。単なる調査に来た二人が踏み込むには危険が過ぎる。
「調査は切り上げ。捜索隊を上申しよう。ある意味、充分に調査できたよ」
 男は気遣うように森の方を見て、次にイガを引き抜きバギーに乗せる。
「行こう。運がよければ彼らを助けられる」
「はい」

 こうして突如生まれた森に対し『進入注意』の通達が為され、同時に探索部隊の募集がかけられる事となったのだった。

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どもども。神衣舞です。どーも。
毎度挨拶を無駄に考えてる自分わほーい。それはさて置き。
新しいイベントは森林探索です。森はざっと直径1kmの円状に広がっています。そして植物はやたら巨大だったりします。
この森が出来た理由の調査と、そしてどんな状況なのかを調べるのが目的となります。
さてはて。皆様の参加を心よりお待ちしております。

……まぁ、犯人捕まえても仕方ないケドネw
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