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【inv12】『まっかなはなのぷれぜんと』
まっかなおはなのぷれぜんと
(2010/12/27)
「……」
 Ke=iは空中を舞いながらKe=iは手製の装置を眺め見る。
 爆弾騒ぎと言う事で火薬に反応する装置を作ってみたのだが、
「……」
 上手くいかなかったわけではないらしい。
 単純に───────
「反応多すぎ」
 御存知の通りクロスロードはその半分以上が探索者と呼ばれる戦闘要員で構成される。
 そのうち剣や魔法の世界からの出身者はさておき、マスケット銃が出現する以降の技術レベルの世界出身者は銃器を持つ可能性がぐんと上がる。
 無論その全てが火薬式銃であるとは言わないが、その数は推して知るべしである。
 さらには武具を売っている店も少なくないし、火薬にも色々成分はある。とにかく爆発物を探そうとした結果至る所から反応がありすぎて途方に暮れてしまったと言うわけだ。
「……こりゃ駄目ね」
 あてどなく飛び回っても仕方ない。どこか目的を絞るなりしないとどうしようもないようだ。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ああ、これは私が落としたプレゼントです。ありがとうございます」
 真っ赤な服のおじいさんは柔和な顔でそれを受け取るが、よくよく見ればその顔に焦燥と疲れが見て取れる。
「ええと、それで合っているなら聞きたい事があるのですが」
「はい、なんでしょうか?」
「……失礼ですが、爆弾騒ぎとは関係ない。で良いんですよね?」
 トゥタールの言葉に男の笑顔が引きつり、しかしどこか諦めたように深々とため息を吐く。
「信じてくださいとしか言えませんが、関係ありません。
 私が事故ってばらまいてしまったばっかりに、SANTA全体に迷惑を」
 今にもよよよと泣き出しそうな男にトゥタールは慌てて「ま、まぁまぁ」ととりなす言葉をかける。
「と、所で違うのであればその中身は何か教えていただいても良いですか?」
「中身、ですかな?」
 男は顔を上げ、それから一旦言葉を途切れさせると
「わかりません。いや、決まっていないと言うべきでしょう」
 そう、答えた。
「分からない? 貴方の物なのですよね?」
「いえ、これは配られる子のためのものなのです。
 何と言いますか、配られて初めて形が決まるのです」
 しばし黙考。
「それは……爆弾にもなる可能性があると言う事ですか?」
 SANTAは僅かながらに押し黙ったが、やがてしぶしぶと頷く。
「しかし、これだけは言っておきます。あるいは配られた子供が爆弾を望むかもしれません。ですが、それはレアケースではないでしょうか?
 今問題になっている通り、十数もの『願い』が爆発物である可能性は皆無なのです」
「……例えば同じ人の願いを受けたとか」
「それもありません。このプレゼントは一年間の功徳が変化したものでもあるのです。故に1人で数十個のプレゼントに干渉するなどまずありえません。
 また、仮にも爆弾テロを行おうと考える者にいかほどの功徳があろうものですか。そのような人にとってこれはただの箱なのです」
「ふむ……」
 その言葉に迷いは無く、まっすぐに言葉は向けられる。
「……もっとも、そこに証拠を見せ付けることなど我々にはできない事です。
 信じてもらうしか……」
 トゥタールはその落ち込んだ顔をしばし見つめていたが、よくよく考えたとしてもプレゼントをばら撒いてしまったという依頼の後で爆発物が見つかるという展開で犯人ではないと言い張る理由は無い。
 無論、そう考えさせることが狙いという可能性もあるが、そう考えては疑惑は永遠に終わりを迎えない。
「とりあえずはわかりました。また見つけたら届に来ますね」
「はい、お願いします」
 SANTAは本当に申し訳なさそうに深々と頭を下げるのだった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「おのれ一般人を巻き込む悪事を企むとは非道なりダイアクトー!
 悪党としての美学も失ってしまったのか!」
「うっさい! 人妻スキー!!」
 なんかダメージが大きい切り返しが着て、胸を抑える『V』
「あ、あれはですねぇ!!」
「ふん。大体悪に美学はあるけど、爆発は悪の正義よっ!」
 そう言われるとちょっと納得してしまう。しかしこのダイアクトー三世の発言、ダイアクトーが爆弾テロの犯人ということだろうか?
 と、少女の後ろで親衛隊の黒服がちょいちょい手を動かしの、あっちに行こうぜとハンドサイン。
「見下げた美学だな! ふん、貴様らなど最早相手にする価値もない!」
「……言わせておけばっ! 今日は泣いても許さないんだからっ!」
「お嬢様、右っ!?」
「ふぇ?」
 間を詰めるべく踏み切ろうとしたダイアクトー三世に親衛隊の一人が急に声を掛けると
「っわっ!?」
 思いっきりつんのめってそのまま転倒。しかも場所が悪い事に積み上げられていた段ボールに頭からミラクルダイブして埋まってしまった。
 なんというか、いつも通りである。
 しばしどうしたものかと頬を掻いたりしていた『V』だが、親衛隊の「こっちこい」サインに従ってその場を離れる。
「黒服さん、マジでダイアクトーの仕業なんですか。この騒ぎ?」
「そんなわけあるか。お嬢様は俺たちが手配したモノだと勘違いしてるだけだ。
 お前も知っての通り、ウチはお嬢様以外は趣味で動いているからな」
「……まぁ、ある意味あの人が一番趣味に走ってますけどね。
 ともあれ、爆弾は違う、と?」
「ああ。誰だか知らんがお嬢様に変装して犯行予告をした連中が居る」
「連中?」
「一人じゃない。近くにいたんだがみすみす逃げられてしまったよ。
 ともあれお嬢様があの調子じゃ撤回もできん。こっちはここぞと動き回る律法の翼を相手に半分が大立ち回りさ」
 確かに今日の黒服は彼を含めて2人しかいなかった。
「一応ファンクラブの戦闘員を総動員してプレゼント探しに走り回ってるさ。
 爆弾も3つばかし発見した」
「……ふむ」
「こちらもお嬢様が余計な事を始めないようにある程度気晴らしをさせなければならないからな。
 できれば穏便に頼む」
「……ともあれ、そちらが犯人でない事はなんとなくわかりました。らしくないですしね」
「ご理解いただけて助かるよ。
 ともあれ情報があればこちらにも回してくれ。一刻も早く集結させないと本気でうちのせいにされかねん」
 ヨンは頷いてもぞもぞと動き始めた段ボールの山を見る。
 面倒になる前に今は撤収すべきだと判断し、彼はその場を後にするのだった。

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というわけで神衣舞です。
まっかなはなのぷれぜんと 第二話をお送りします。
今回のシナリオは最初に書いてる通り場所を指定しないとプレゼント自体には絡めませんのでご了承を。
では次は年明けになりますが、リアクションをよろしくお願いします。
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