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【inv12】『まっかなはなのぷれぜんと』
まっかなはなのプレゼント
(2010/12/02)
「諸君!」

 男はウォッカと葉巻で焼けたダミ声を響かせる。
 そこはさながら軍の司令部という様相だ。壁際には様々な地域の地図が表示されたモニター。そして同じ制服で統一されたスタッフがそれを見上げ、次々と処理を行っている。
「我々はついに理想の拠点を発見した!」
 男の背後にある100インチを軽く越える大画面モニターには一つの町並みが写し出されていた。
 筋骨隆々、頬には左目まで走る古傷。そのためかアイパッチが彼の片目を覆い隠している。
 何よりもそのオーラが違う。それに刺激されてか、もともとの錬度が桁違いなのか。声を拝聴する者達は微動だにせずマスターと崇める男を見上げる。
「多重交錯世界《ターミナル》。こここそが我らの理想郷だ。
 思えば多くの同胞が志半ばに消えていった。歴戦の猛者達がここに戻る事適わなかった……!」
 その声を聞く者達の表情にほんの僅かな変化があるのは、先輩を、同胞を、そして手塩に掛けて育てた後輩を失ったからか。
「だが、見よ! この世界にある『扉』というシステムさえあれば我々はその目的を適確に遂行できるのだ!」
 声に出さず、しかし歓喜のオーラが場を満たす。
「だが、無論安易に喜んではならない。そして君達を招いた理由はそこにある」
 男はニヤリを笑い、居並ぶ猛者を見渡した。彼らは自らが選抜したエリートなのだ。
「現時点を持ってオペレーション・ニューゲートの開始を宣言する。
 君達は現地クロスロードの先行駐在員と合流後、各世界への移動を開始。任務の遂行に当たれ!」

 ザッ と、一糸乱れぬ音と共にするのは敬礼。

「往け! そして新たな一歩を踏みしめるがいい!!」

 男は真っ赤な戦闘服に包まれた腕をびしりと伸ばし、高らかに開始の一声を吼えたのだった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「めんどくさ……」
 金髪ツーテール少女が言葉通りの表情を浮かべていた。
「ったく。で、場所は?」
「分からないわ」
「はぁ?」
 声はどこかから。しかし姿が見えないことをことさら気にする事無く、とりあえず不満感満載の疑問符を口にする。
「あんたが分からないって、どーいうことよ?」
「冬だもの。雪も降ってるし」
「……あー」
 今は降っていないものの視線をめぐらせれば降り積もった雪を認める事が出来る。
「じゃあ量もわからないわけ?」
「ええ。ただ無意味やたらに仕掛けては居ないでしょうから、場所も限られてると思うわ。
 管理組合本部に近付いたのはさっさと捕らえたんだけど、あっさり自決」
「本当にめんどうね。探し回るような仕事、あたらしらには向いてないって分かってるでしょ?」
「分かってるわよ? だからあなた達がするのは捜索じゃないわ」
「……」
 え?と首を傾げ、それから見る見る嫌そうな顔に変化。
「ダイアクトー三世って使えると思わない?」
「ちょ! あたし一人にやらせるつもり!?」
「だってそこそこ体術できる女の子貴女くらいじゃない」
「……別の手段考える」
「どうぞ。いい案だったら採用してあげる」
 姿無き声はそれっきり。
 一人残された少女は盛大に溜息をついて、目の前の雪を蹴っ飛ばした。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「サンタクロース、ですか?」
 そういえばクロスロードもいつの間にか12の月だ。雨が雪として降ることもままあるようになってきた。
「ユキヤ君は知ってるのかい?」
 秋口からやや着る物がもっさりしてきたグランドーグが書類を手に聞いてくる。
「ええ。クリスマスって行事の時にプレゼントを持ってくるおじさんですね」
「配給みたいなものかい?」
「いえ。ええとですね……」
 説明しようとして一旦口ごもる。というのも煙突から進入して子供の枕元にプレゼントを置いて去っていくという説明はどうかなぁと思ってしまったのだ。
「……まぁ、配給に近い物じゃないですかね」
 日本風のクリスマスなんかは単なるケーキを食べてプレゼントを貰う祭りでしかない。そんなものしか知らない以上、詳しく説明しても誤解を招くだけだろう。
「ふーん。まぁ冬場は食料も少なくなるしね」
 妙な納得をした上司に苦笑いをするしかない。
「で、サンタクロースが来る、と言いますと?」
「そのままだね。彼らが《ターミナル》の『扉』を使ってその配給をしたいらしいんだ」
「……はぁ」
 ユキヤの知るクリスマスはキリスト教にまつわる物だから地球世界独特のものだと認識していた。現にグランドーグはそれを知らないらしいし。
「で、クロスロードでの物流はウチだろ? 主なところは他世界への配達を行う中央本部で行われるんだけど、ついでというかクロスロードでも配りたいんだって」
「……ああ、街の中の配達はうちの支部ですものね」
 そうそうと竜人は頷く。
「今年は実験らしいんだけど、上手く行くなら来年以降もやるんだって。
 彼らも配送のプロだって言ってるし、あまり気にする事も無いと思うけど事務所を使うから一応ね」
「……はぁ」
 それにしても。
 参考にと手渡された資料にはサンタクロースという『種族』だと明記されている。
 妖怪種、もしくは妖精種に仮分類され、業や功徳を生命エネルギーに変換して生きている。
「それで『良い子にプレゼント』かぁ」
 他人の善行を貰って、その一部をお礼として対象の願望に添う形に練成する。そういう種族だと書かれている。
 あるいは無から有を作り出すようにも見えるため、神族系に分類される可能性もあると追記されていた。
 ちなみにどこの学者が追記したのかは知らないが「社会人になれば清濁併せ呑む事を共用され純粋な功徳を積みにくいため、子供のみとなっているのか?』という言葉が苦笑を誘う。
「功徳とか精神エネルギーで生きるとか言われてもピンときませんね」
「魔法が無い世界じゃそうだろうね」
 コーヒーを入れながら応じる。
「彼らの基本サポートはPBで充分だろうし、まぁ仲良くやってよ」
「はい」

 とまぁ、そんな会話があったわけだが。
 そのときはまさかあんな事が起こるとは誰も思っていなかった。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
さて、また珍妙な事を考え付いたのでシナリオを開始しましょう☆
12月になるとTRPG大饗宴がやりたくなる神衣舞です。これで理解できる人は相当濃いと思いますw
というわけでショートシナリオのつもりですが楽しく参りましょう。
ちょっと更新ペース早くしたいが……まぁ、年越してもいいよね?
……ね?w
まっかなおはなのぷれぜんと
(2010/12/15)

 雪がちらほら舞う季節────冬。
 ある程度の文明レベルの者からすれば冬とは死の季節だ。全ての色が白と灰に染まり、人々は春の到来を待ちわびるように家に閉じこもる、それだけの季節。
 それが色鮮やかにめかしこまれ、ニュートラルロードには人が楽しげに歩く様は圧巻かもしれない。
 クリスマスの文化は地球世界からの来訪者を比較的多く有するこの街に確実に影響を与えている。白と灰の季節を電球飾りが彩り、大量生産品である化学繊維のコートが閉じこもるだけのはずだった人々を外へと向かわせていた。

 だが、クロスロードにとって冬とはあまり良い季節ではない。
 旧暦の末に起きた『大襲撃』。そして新暦一年の末に起きた『再来』。未探索地域を巡る探索者達もこの時期は遠出を控え、しかし周囲への警戒を強くする。
 二度ある事は三度ある。その可能性は誰の頭にもあるのか防衛任務の参加数はぐんと増えていた。
 しかし、広がる荒野にうっすらと積もる雪。
 そこを踏み荒らす足音も遠く、クロスロードは静かで華やかな冬の日々を続けていた。

 ◆◇◆◇◆◇◆

「プレゼント、ねぇ?」
 Ke=iは白い息を吐きながら純白の酒場へと続く道を歩いていた。
 プレゼントを配り歩く奇妙な種族が居るらしい、とは聞いたが酔狂だなと思うだけだ。
「しかしまぁ、落し物を懐に入れても誰も咎めないからねぇ」
 クロスロードに落し物を届けるようなルールは無い。センタ君が拾った物は管理組合の落し物管理センターに届けられるらしいが、まぁ落とした方が悪いと考える者の方が圧倒的に多い。それが人に贈るような立派な品物であるならばなおさらだ。
 この町の排熱量はかなり低い。また石畳は雪が積もりやすく、たまにセンタ君が並んで雪かきをしている姿が目に入る。気温は氷点下に行かない程度で溶けてべちゃべちゃにならないからマシかと思う程度だ。
「車が走るにはしんどい環境だね」
 この調子だと四輪はともかくバイクは厳しいだろう。
 そんな事を考えながら歩いているとやがて純白の酒場に辿り着いた。
「こんにちわ」
 店内の暖気がぶわっと体を包んでほっとする。暖炉の日は昼間とあって控え目だが、外と比べれば圧倒的に暖かい。
「いらっしゃーーい」
 可愛らしいウェイトレス服を着たヴィナがとててと空いた皿を手にしながら声を掛けてくる。最近は寒いせいかいつも足をニーソックスが覆っている。
「ごちゅーもん?」
「いや……ああ、あったかい物何か頂戴」
「はーい」
 一休みするのも良いかと適当な席に座り、周囲を見渡す。午後過ぎとあって客足はひと段落したらしく、ぽつぽつと残る客は暇を持て余してのんびりしに来ただけかもしれない。
「どうぞ」
 ホットココアを持ってきたのはアルティシニだった。丁度良いと受け取りながら
「ねぇ、この辺りにプレゼント落ちてなかった?」
「プレゼントですか? ああ、あのサンタとか言う人たちの?」
 依頼関係は把握しているらしい。
「私は見ていませんね。フィルさんのほうが詳しいかと思いますが」
「ふぃるは仕入れに行っちゃったよ?」
 ててこと歩くハム君の上に乗っかったヴィナがそんな事を言う。
 と─────
「……」
「……」
 アルとKe=iの視線がハム君へ。正確にはその顔の、膨らんだ頬へ。
「ハム君。それは?」
「うにゅ?」
 ヴィナが覗き込むと、目だけでハム君が見返す。
「……ハム君。べえしなさい、べえ」
 暫くじーっとしていたハム君だが、観念したかのようにべえと口から出したのは梱包された箱だった。
「……」
「えっと、拭くもの持ってきますね」
 アルティシニが苦笑いしつつ店の奥に引っ込むのを見送りながら、これ持っていくのかなぁと彼女はココアを啜った。

 ◆◇◆◇◆◇◆

「ええとですね!」
「ああ、なんだい!?」
 パンクな格好をした男が顔を顰めて耳を寄せる。
「ですからーーー! プレゼントをですね!!」
「ファンからのプレゼントはあのバンド受け取らない主義だぞ!!」
「違いますって!」
 まぁ、何をやってるかというと爆音に近いレベルでガンガンに鳴り響くロックサウンドの中、トゥタールは近くのスタッフにプレゼントの事を確認しようとしていたのだ。
「ですからーー!」
 まぁ、そんなやりとりをいくらか重ねた後、今日参加しているバンドの1つがそんな物を拾ったという話を聞きつけた。しかし楽屋へ入ることはNGだからとライブ終了時に出待ちをすることになった。
「いやはや、凄いですね」
 ロックサウンドは彼にとっては聞きなれたものではないし、クロスロードのかなりの人が聞いた事もないかもしれない。なのに───いや、だからこその人気なのかもしれない。
 出待ちをする人は彼だけではなく、ざっと十数人が参加者にプレゼントを渡すために待ち焦がれるような目でじっと出口を見つめていた。
「これは日を改めた方がいいかもしれませんね」
 とてもじゃないが会話ができそうな雰囲気ではない。
 出直すかと振り返ると
「っ!?」
 目の前に女性が立っていた。
「あんたかい? アタシに用があるのは」
 色鮮やかな着物に色々なメタルアクセサリーをつけた彼女は整った顔立ちをにぃと笑みの形に歪める。
「え、あ、えっと。貴女がプレゼントを拾われた方ですか?」
「プレゼント、ねぇ」
 意味深に呟き、ジロジロとトゥタールを上から下へと見る。
「あれはあんたのかい?」
「いえ、依頼で探していまして。落し物の回収ってやつです」
「ふぅん」
 気がつくと、女の手には綺麗にラッピングされた箱がある。
「どういう依頼人かは知らないけど、気をつけることだね」
「え?」
 疑問を呈する瞬間を押し付けられた箱が塞いでしまう。
 と、慌てて顔を上げた時にはその女性の姿は無かった。
「……」
 色々と腑に落ちないことはあるが、とりあえず目的の物は1つゲットした。まずは届けておくとしよう。

 ◆◇◆◇◆◇◆

「これで終わりと」
 返却本を整理し終えたヨンはんーと大きく伸びをする。
 大図書館の蔵書は日に日に恐ろしい量で増えているが、その貸し出し方法、返却方法は古来からあまり変わっていない。パソコンなどで書庫を検索し、その棚まで行って引き出してくる。返却は返却箱に入れておくという形だ。
 余談だが図書館の所蔵印には魔術式が組み込まれており、返却しないと色々と災いが降りかかる。なんでも地下に巣食う研究者達がここを使用させてもらってる感謝とネタで創り上げたシロモノで、呪いに対する免疫を食って威力を増すというとんでもない術式らしい。
 まぁそれはさておき、日に行き来する本の数は数千冊。これを手作業で戻すのはやはりひと苦労だ。
「おや、そちらはおわりかや?」
 ふわりと黒髪の美女が上から降ってくる。文車妖姫を名乗る彼女は書物への思いから生まれた妖怪だそうだ。
 純粋な本好きも多いが、司書員の多くは本に纏わる妖精、妖怪である。そのため本の処理に対してはプロフェッショナルを通り越している彼女達が居るからこそこの図書館は成り立っているとさえ言えるだろう。
 もっとも、そんな彼女達でさえ尊敬する人間種が居るらしいのだが、その人は司書員でもなんでもないらしい。
「ええ、なんとか。妖姫さんに比べれば少ない数ですけどね」
「いやいや、量はあまり関係ない」
 にこりと微笑んで彼女は棚の書物に触れる。
「わらわなどは本への愛情から生まれた存在よ。故に愛情を持って触れてくれる者が居ることが幸いなのじゃ。
 司書員にまでなって本に触れようと言う者は好みこそすれ、批難する理由も無い」
「ありがとうございます」
 本心からの言葉にヨンは頭を下げる。
「これ、礼を言われてはこちらの立つ瀬が無い。ふふ、まぁよい。素直な事は良い事じゃ」
 上機嫌にそう言って彼女はまたふわりと浮かぶ。
「そういえば館長殿がけえきを差し入れてくれたそうじゃ。休憩としよう」
「ああ、はい。あ、ところで」
「なんじゃ?」
「大図書館でプレゼントが落ちてたっていう話聞きませんでしたか?」
「むむ? くりすますとやらの贈り物か?」
「ええ」
「ほぅ、そなた、誰に贈るつもりかや?」
 問われてえ?という顔をし、それから慌てて
「いえ、落し物を探して欲しいって依頼がありまして。
 なんでも空から大量に落としちゃったらしいですよね」
「ああ、あの依頼か。なんじゃつまらぬ」
 本当は違うんじゃないか?という視線を向けられるが、とりあえずヨンは回答をじっと待つ。
「わらわは知らぬ。休憩の時に皆に聞くのが早かろ」
「それもそうですね」
「いえ、私が一つあずかっていますが」
 突然現れた第三者の声ももう慣れたものだ。
「遅いから見に来ました。急がないと無くなりますよ?」
「おお、それはまずい」
 慌ててふわりと飛び上がった妖姫が「そなたらも急がぬか」とせかすのを微笑ましく見上げる。
「あの依頼を受けているなら預けておきますね」
 金髪の見事なプロポーションの美女がラッピングされた箱を差し出す。
「良いんですか?」
「届ける手間が省けましたから」
 サンドラの言葉にヨンは頭を一つ下げて受け取る。
「……」
 が、がっちりと掴んだまま何かを逡巡するように彼女はヨンの方向を見ている。
「えっと?」
「実は本物は外にあります」
「……え?」
 ひゅんとプレゼントが消えてヨンは思わずつんのめる体をなんとか起こす。
「ヨンさん。本当に今の箱を探して居るのですか?」
「……ええ、まぁ」
 ラッピングされ、カードのついた箱が集める目的の箱のはずだ。
「……この箱の中身は何か知っていますか?」
「プレゼントだと聞いていますけど」
「……ではやはり管理組合に連絡を入れた方がいいですね」
 サンドラの言葉の意味を掴みかねてヨンは眉根を潜める。
「この中身は爆発物です。トリニトロトルエンですね」
「……とりとろ?」
「TNT爆弾と呼ばれる物です」
 TNTの意味は分からないが爆弾の意味は分かる。
「ば、爆弾!?」
「簡易結界で被っているので今爆発しても平気とは思いますが、持ち運ぶのであれば爆発しない事をお祈りします」
「ちょっ、」
 本当ですかと口にしようとして口ごもる。彼女はその手の冗談を言うタイプではない。
「……そうですね。安全であるならばもう暫く預かっていただけますか?」
「わかりました。場合によっては下の人たちに解体させますので」
「お願いします。それから」
「はい、大丈夫ですよ。担当分は終わって居るようですし」
「ありがとうございます」
 一礼してその場を去るヨンを妖姫はきょとんと、サンドラは微笑ましそうに見送ったのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆

「さて」
 セラフィーンは夕暮れに染まるサンロードリバーを眺めて、傍らの袋を見た。
 今日一日、とりあえず色んなところを回った結果3つの箱を見つける事が出来たのはまずまずの収穫と言えよう。
 当初エンジェルウィングスを訪れたのだが、サンタの配送については積極的な関与をしていないため得られた情報は殆ど無かった。事故自体はサンロードリバーの川沿いで起きたということだがかなり上空に上がってたらしく広範囲にばら撒かれたと思われるらしい。
 今日一日ではエンジェルウィングスを経由したのでアドウィック探偵事務所とカグラザカ新聞社を回るのがいっぱいいっぱいで先ほど川辺にひっかっていた3つめを拾ったところだ。
 クロスロードは正直広い。南北の行き来こそ路面電車があるものの、東西の行き来の手段が限定的だったりする。そのため色々回ろうとするとどうしても時間が掛かってしまうのだ。また同じような建物が多く、PBが道路情報を元にした案内をするため上空から目当ての場所を探すのが大変であることも付記しておく。
「聖魔神殿まで足を伸ばしても良いでしょうか」
 河原から夕日に陰影を作る立派な神殿の姿が見て取れる。日が暮れる前にあそこまで行く事は充分にできるだろう。
 ふと視線を戻すと少し先のほうでのっぺりとした顔の人族?が集まってなにやら箱をじろじろと見ている。その顔が全部同じなのがなかなかに不気味であるがサンロードリバーで良く見る『インマウ』達だ。
「あの、それ、集めて居るんですけど」
 セラフィンがそちらの方へ声を掛けると同じ顔が一斉にセラフィーンを見た。ちょっとしたホラーだが竜人種の彼女にはそこまでのインパクトは感じられなかったらしい。すたすたと近付こうとした瞬間

 ───背後に熱が膨らんだ。

「え!?」
 次の瞬間、素早く動いたのはインマウ達だった。ぬるりとした動きでセラフィーンの前に立つや自らの体を即席のバリケードにしたのである。
 直後、凄まじい爆音が彼女の耳を打つ。隙間を抜ける熱風が衣服をはためかせ鱗をじりじりと焼く。びしりびしりと肉を打つ凶悪な音が正面で何度も響くが目を開けることもできない。
 やがて、何分くらい経過しただろうか。いや、実際は一分も経過していないかもしれない。身を起こしたセラフィーンが振り返るとぼろぼろになって倒れているインマウ達を別のインマウ達が無表情によっこらしょと担いで水の中へと歩いていく。
「だ、大丈夫なんですか?!」
 ロボットじみた淡々とした行動に上ずった声を上げるが、ボロボロインマウを担いだ一人がびしりとサムズアップを無表情でするので、もう何も言えない。
 麻痺した脳みそでゆるゆると爆心地を見ると、川辺に大穴が開いていた。その場所は間違いなく
「私がいたところね」
 考えられるのはそこを砲撃されたか、或いは────プレゼントが爆発したか。

 はっとして見ればさっきまでインマウ達が囲んでいたプレゼント箱がぽつんと残っている。

「……」
 触れることも逃げる事もできずに居ると何事かと人々が集まってくる中、管理組合の制服を着たドワーフがセラフィーンに近付いてきた。
「爆発したのはプレゼントですか?」
「え? え、ええ、そうと思います」
 いきなりのダイレクトな質問に驚きながらも頷くと、ぽつんと河原に置いてあるプレゼントに別の管理組合の制服を来たアンドロイドが近付く。
「これは大丈夫デス」
「これは?」
 その物言いを訝しく感じたセラフィーンの言葉にドワーフは「災難でしたな」と苦々しい顔をする。
「サンタの落し物を探していたのですね?」
「ええ、そうだけど」
「どうやら、それとは別に。プレゼントに偽装した爆弾をクロスロード中にばら撒いている輩がいるようでな」
「爆……っ!?」
 シッとドワーフが窘める。
「解析の結果、24日に爆発するようにセットされているようだが、機械式の物ゆえ、故障したのかもしれん」
 確かに先ほど水に浮かんでいたのを拾ったばかりだ。それが爆弾だったのだろうか。
「すぐに管理組合から告知が出ると思うが、それまで無闇にこの件を言いふらさないようにお願いします。
「え、ええ」
 別に従う義理は無いが、さりとて触れまわって良い話ではないとは確かに思う。……この街があっさりパニックになるとは思えないが。
「何が起きようとしてるのかしらね」
 ひらひらと落ちてきたプレゼントのリボンを掌に載せて、何が起こっているのだろうとくれなずむ空を見上げた。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
真っ赤なお花の爆弾さんは〜☆
はい、神衣舞です。真っ赤なお花のプレゼント、第一話いかがでしょうか。
ちなみにフラグ1。プレゼントを最初に2つ以上ゲットした人のところで爆発する(=ω=)b
欲張りすぎは禁物ですね。うひひひ
まぁ、群像劇なので1度のリアクションでいろいろ書いても全部するのは無理です。ご了承くださいませ。

さて、なんとか1.5話を書いてUPしておきたいのですが、間に合うか知らないので次回のリアクションもささりとお願いします。
まっかなおはなのぷれぜんと
(2010/12/16)

「ったく、何であたしが……」
 ぶつくさと言いながら手鏡でチェック。赤く染めた髪を下ろして仮面を手にする。
「あーあー」
 喉に手を当てて声を出しつつ目の前の計器を見る。本来の声音から変化し、一致したところでコホンと咳払い。
 遠くから見られることを意識した強めの化粧で顔の造詣は誤魔化している。近くでじっと見ればすぐに分かるが遠目から見ればその姿はダイアクトー三世そのものだ。
 彼女が居るのはニュートラルロードに面するちょっとした雑居ビルの屋上だ。吹き付ける風が寒い事この上ないが文句を言っても始まらない。
 よしと気合を入れる声もダイアクトー三世そのもの。
「聞きなさいっ!」
 張り上げた声が冬の大気をびりびりと震わせ、近くを歩いていた人々が何事かと見上げた。
「この街にあたしからのプレゼントをばら撒いたわ! 喜びなさいっ!」
 ある意味(本人は全く自覚していないが)この町最大の大道芸人であるダイアクトーの登場に周囲は「今度はなんだ?」と期待やら失笑やらの視線が集まる。
 その時には戦闘員がわらわらと集まり始めていた。一体ドコから聞きつけてきたのかというほどの素早さである。
「プレゼントは24日にこの街に綺麗な花を咲かせる。美しい花に逃げ惑い、怯えると良いわ!」
 誰もが何の事かと顔を見合わせる。綺麗な花から逃げるというその意味を図りかねていた。
 実質はファンクラブである戦闘員達の反応はまた少し違う。というのも
「ダイアクトー様、噛まなかったな」
「多分誰かが作ったシナリオなんだろうけど、大抵そういう場合噛むもんなぁ」
「でも、ダイアクトー様、理解してるのかな?」
 まるで子供のお遊戯会を見守る親の会話であるが、どこか違和感を感じているという顔つきである。
「で、今回はどういう話なんだ?」
「いや、俺は聞いていないぞ?」
「こういう大掛かりなシナリオの場合、黒服さんから通達があるもんだけどなぁ」
 親衛隊とも呼ばれる7人の黒服は彼らのリーダー的存在である。まぁそのために真性のロリコンだとも目されているのだが。あと1人くらいドMの変態が居るし。
「のんびり待つのも、必死に駆けずり回るのも自由よ」
「貴様、誰だ?」
 まるで闇から伸びるような声に彼女は反応しない。わずかばかりに視線をずらせばそこには黒服の姿がある。
「誰ってどういう意味? 私の顔を忘れたとでも言うの?」
「詰まらない冗談を言うならば容赦はしない」
 流石に親衛隊の1人を誤魔化せるとは思っていなかったがまさかここまでの接近をいとも容易く許すとは思っても無かった。
 チと口の中で舌打ちして
「誰って、今はダイアクトー三世に決まってるじゃない」
 全く同じ声音で、しかし本物が浮かべる事がまず無い冷め切った嘲笑を見るや黒服が動いた。
 一足で踏み込める距離。必中の一撃はしかし空を切る。
「幻影、だと!?」
 魔術を使った様子は無い。もし使われていたのであれば彼が気付かないはずが無かった。
「悪いけどあんたを相手してる暇は無いの。それに、あんたの方もあたしの相手をしてる暇は無いはずよ?」
 声は違う方向から。
「ッ! 現象使いかっ!」
 極稀に異常な親和性から魔術を介さずに無機物を操作する種族が居る。それと悟った時にはもう遅い。100mの壁を突破されてしまえば超感覚による探査は不可能だ。
 黒服は眼下の騒ぎを睨み、それから不意に視線を上げた。

 どぉおおおおおおおん!!

 轟音。サンロードリバーの辺りで巻き起こったそれは続けてもうもうと爆煙を上げ始める。
「真っ赤な花、だと」
 悟る。つまりあのニセモノは秘密結社ダイアクトーに罪を着せようとしている。
 否────
「それならば爆発した後に犯行声明を出せば良い。先んじたという事は」
 面倒な事に巻き込まれたかと瞑目し、すぐにその場を離れた。
 予想通りであればリミットは宣言通り24日。すぐに戻り対策を立てねばならない。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇
 
「テロ行為だと?」
 作戦指令室に座する男が眉根を寄せる。
「はっ。クロスロードで任務中の隊員一名が事故を起こし、プレゼントが散乱。
 その捜索に携わってた住人が爆薬の仕込まれたプレゼントを発見したとのことです」
「馬鹿馬鹿しい、とは言えないのだな。我々の特性を彼らが信じるには時間が足りない」
 男は机に肘突き手を組んだ。
「で、管理組合からは何と?」
「事実確認のみです」
「安易に疑わぬか。混沌の町の支配者なだけな事はある」
 男はしばし黙考し、やおら立ち上がると周囲を見渡した。
「以後クロスロードでの作戦行動は中止とし、《扉の園》以外での飛行を禁止する。
 この旨を管理組合へと通達せよ」
「はっ」
「私はこれより管理組合に赴く。各世界への対応状況は逐一報告せよ」
「了解」
 お手本のような敬礼が周囲から返る。それを満足そうとも不満足とも見れぬ顔で見渡し、男は椅子を立った。
まっかなおはなのぷれぜんと
(2010/12/27)
「……」
 Ke=iは空中を舞いながらKe=iは手製の装置を眺め見る。
 爆弾騒ぎと言う事で火薬に反応する装置を作ってみたのだが、
「……」
 上手くいかなかったわけではないらしい。
 単純に───────
「反応多すぎ」
 御存知の通りクロスロードはその半分以上が探索者と呼ばれる戦闘要員で構成される。
 そのうち剣や魔法の世界からの出身者はさておき、マスケット銃が出現する以降の技術レベルの世界出身者は銃器を持つ可能性がぐんと上がる。
 無論その全てが火薬式銃であるとは言わないが、その数は推して知るべしである。
 さらには武具を売っている店も少なくないし、火薬にも色々成分はある。とにかく爆発物を探そうとした結果至る所から反応がありすぎて途方に暮れてしまったと言うわけだ。
「……こりゃ駄目ね」
 あてどなく飛び回っても仕方ない。どこか目的を絞るなりしないとどうしようもないようだ。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ああ、これは私が落としたプレゼントです。ありがとうございます」
 真っ赤な服のおじいさんは柔和な顔でそれを受け取るが、よくよく見ればその顔に焦燥と疲れが見て取れる。
「ええと、それで合っているなら聞きたい事があるのですが」
「はい、なんでしょうか?」
「……失礼ですが、爆弾騒ぎとは関係ない。で良いんですよね?」
 トゥタールの言葉に男の笑顔が引きつり、しかしどこか諦めたように深々とため息を吐く。
「信じてくださいとしか言えませんが、関係ありません。
 私が事故ってばらまいてしまったばっかりに、SANTA全体に迷惑を」
 今にもよよよと泣き出しそうな男にトゥタールは慌てて「ま、まぁまぁ」ととりなす言葉をかける。
「と、所で違うのであればその中身は何か教えていただいても良いですか?」
「中身、ですかな?」
 男は顔を上げ、それから一旦言葉を途切れさせると
「わかりません。いや、決まっていないと言うべきでしょう」
 そう、答えた。
「分からない? 貴方の物なのですよね?」
「いえ、これは配られる子のためのものなのです。
 何と言いますか、配られて初めて形が決まるのです」
 しばし黙考。
「それは……爆弾にもなる可能性があると言う事ですか?」
 SANTAは僅かながらに押し黙ったが、やがてしぶしぶと頷く。
「しかし、これだけは言っておきます。あるいは配られた子供が爆弾を望むかもしれません。ですが、それはレアケースではないでしょうか?
 今問題になっている通り、十数もの『願い』が爆発物である可能性は皆無なのです」
「……例えば同じ人の願いを受けたとか」
「それもありません。このプレゼントは一年間の功徳が変化したものでもあるのです。故に1人で数十個のプレゼントに干渉するなどまずありえません。
 また、仮にも爆弾テロを行おうと考える者にいかほどの功徳があろうものですか。そのような人にとってこれはただの箱なのです」
「ふむ……」
 その言葉に迷いは無く、まっすぐに言葉は向けられる。
「……もっとも、そこに証拠を見せ付けることなど我々にはできない事です。
 信じてもらうしか……」
 トゥタールはその落ち込んだ顔をしばし見つめていたが、よくよく考えたとしてもプレゼントをばら撒いてしまったという依頼の後で爆発物が見つかるという展開で犯人ではないと言い張る理由は無い。
 無論、そう考えさせることが狙いという可能性もあるが、そう考えては疑惑は永遠に終わりを迎えない。
「とりあえずはわかりました。また見つけたら届に来ますね」
「はい、お願いします」
 SANTAは本当に申し訳なさそうに深々と頭を下げるのだった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「おのれ一般人を巻き込む悪事を企むとは非道なりダイアクトー!
 悪党としての美学も失ってしまったのか!」
「うっさい! 人妻スキー!!」
 なんかダメージが大きい切り返しが着て、胸を抑える『V』
「あ、あれはですねぇ!!」
「ふん。大体悪に美学はあるけど、爆発は悪の正義よっ!」
 そう言われるとちょっと納得してしまう。しかしこのダイアクトー三世の発言、ダイアクトーが爆弾テロの犯人ということだろうか?
 と、少女の後ろで親衛隊の黒服がちょいちょい手を動かしの、あっちに行こうぜとハンドサイン。
「見下げた美学だな! ふん、貴様らなど最早相手にする価値もない!」
「……言わせておけばっ! 今日は泣いても許さないんだからっ!」
「お嬢様、右っ!?」
「ふぇ?」
 間を詰めるべく踏み切ろうとしたダイアクトー三世に親衛隊の一人が急に声を掛けると
「っわっ!?」
 思いっきりつんのめってそのまま転倒。しかも場所が悪い事に積み上げられていた段ボールに頭からミラクルダイブして埋まってしまった。
 なんというか、いつも通りである。
 しばしどうしたものかと頬を掻いたりしていた『V』だが、親衛隊の「こっちこい」サインに従ってその場を離れる。
「黒服さん、マジでダイアクトーの仕業なんですか。この騒ぎ?」
「そんなわけあるか。お嬢様は俺たちが手配したモノだと勘違いしてるだけだ。
 お前も知っての通り、ウチはお嬢様以外は趣味で動いているからな」
「……まぁ、ある意味あの人が一番趣味に走ってますけどね。
 ともあれ、爆弾は違う、と?」
「ああ。誰だか知らんがお嬢様に変装して犯行予告をした連中が居る」
「連中?」
「一人じゃない。近くにいたんだがみすみす逃げられてしまったよ。
 ともあれお嬢様があの調子じゃ撤回もできん。こっちはここぞと動き回る律法の翼を相手に半分が大立ち回りさ」
 確かに今日の黒服は彼を含めて2人しかいなかった。
「一応ファンクラブの戦闘員を総動員してプレゼント探しに走り回ってるさ。
 爆弾も3つばかし発見した」
「……ふむ」
「こちらもお嬢様が余計な事を始めないようにある程度気晴らしをさせなければならないからな。
 できれば穏便に頼む」
「……ともあれ、そちらが犯人でない事はなんとなくわかりました。らしくないですしね」
「ご理解いただけて助かるよ。
 ともあれ情報があればこちらにも回してくれ。一刻も早く集結させないと本気でうちのせいにされかねん」
 ヨンは頷いてもぞもぞと動き始めた段ボールの山を見る。
 面倒になる前に今は撤収すべきだと判断し、彼はその場を後にするのだった。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
というわけで神衣舞です。
まっかなはなのぷれぜんと 第二話をお送りします。
今回のシナリオは最初に書いてる通り場所を指定しないとプレゼント自体には絡めませんのでご了承を。
では次は年明けになりますが、リアクションをよろしくお願いします。
まっかなおはなのぷれぜんと
(2011/01/06)
「それでうちに来たと」
 マホガニーの机に肘をついて折角の二枚目を緩める男がそう問うた。
「はい、貴方なら何か知っているかなと思いまして」
「V様は交友関係の結び方と使い方を心得ているようだ。なるほど、正義の味方にはバックアップが必要。孤高の正義のヒーローはもはや流行らないか」
 遠い目をしつつ良くわからない事を呟くのは自称探偵のアドウィックだ。
「V様はやめませんか?」
「いいじゃないか。いつでも変身できるんだろ?」
 何故知っている?という言葉をぐっと飲み込む。ことこの男の調査能力について信頼しているからここに居るのだ。
「……ということは、アンゼンリナさんの件も御存知で?」
「もちろんだとも。よっ、人妻ハンター」
 身に覚えがありませんと言っても言いくるめられそうなので無視。
「……で、爆弾をばら撒くメリットのある人に心当たりはありますか?」
「つれないねぇ。
 それについては犯行声明を出したのが居るじゃないか。おっと、娘の不始末を────」
「アドウィックさん?」
 ちょっとばかし声のトーンを冷やすと「冗談だよ」と笑みと共に引いて
「まぁ、ダイアクトー一味で無いのは間違いないだろうね。首領は爆弾を使っても時限爆弾なんてものは使わない。取り巻き連中も後片付け前提で動くから取り返しのつかないような事はしでかさない」
 もちろんそれはヨンだって分かっている。黒服の言は納得していた。
「で、他には?」
「山ほど居る」
 アドウィックはさらりと言った。
「最新の世界コード数、知ってるかい?」
「世界コード……? つまり、扉が通じている世界、ですか?」
 しばらく前に7万だかという数字を聞いた覚えはある。
「そろそろ10万に届きそうらしい。
 その中で、この街を欲しがるのはどれだけ居ると思うかい?」
「……」
 この町の魅力は彼にも重々わかる。暮らしの一つにしたってこれほどの充実ぶりだ。そこには魔法、科学を織り交ぜた確かな技術力が存在している。それを手に入れられるだけでもその価値は計り知れない。
「でも、どうして急に」
「急に、というのは確かにそうだね。だが無かったわけじゃないんだ。
 単にこれほど明確な『結果』が出たのは今回が久々だったと言うだけさ」
「久々、ですか?」
「ああ、久々だね。再来の時にさえそういう企みは実を結ばなかった」
 含んだ物言いにヨンは眉根を寄せる。
「隠すような物言いをする必要があるんですか?」
「ある」
 てっきり趣味だとか言いだすかと思っていた吸血鬼はムと黙り込む。
「正直知らない方が身のためだと思うよ。
 そんなところに堂々と踏み込もうとするのは僕と文ちゃんくらいさ」
「……」
 神楽坂・文。その名前が出てきて思い浮かぶ言葉がある。
「テロの目的は明白だろう。管理組合に管理能力が無いと周知させること。不安は安定を求めさせるからね」
「……そんなにうまく行くんですか?」
「行かないだろうね。それが通用するとすればこの町がもっと単純な種族構成だった場合さ。
 だがテロリストにはその発想は無いのさ。こんなカオスな街、どこの世界にあるって言うんだい?
 これはあくまで無力な市民が居るからこそ意味がある。この町には到底意味を持たない」
「じゃあ……単に被害を出しているだけってことですか」
「そうなるね。だがそうでないとも言える」
 コトリと小さな音。メイドがヨンの前に香りのよい紅茶を差し出していた。
「どうも」
 軽く頭を下げると彼女は目礼して壁際まで下がる。
「で、そうでないと言うと?」
「律法の翼さ」
 やはりその名前が出るかとしかめっ面を強くする。
「彼らはぽっと出のテロリストと違ってこの町の思想、文化を把握している。
 ここぞと取り込める層を取り込むだろうね。まぁ、支持率が広がった所ですぐにどうこうと言うわけではないんだけど。それから」
「ダイアクトーですね」
「彼らは嘘とわかっていてもそれを真実と看做すだろうからね」
 V様の因縁を生んだあのコロッセオでも彼らはパフォーマンスと(ダイアクトー三世以外に)公表されている舞台に乗り込み、マジバトルを仕掛けて来た。
「そのテロリストを捕まえることはできないでしょうか?」
「難しいだろうね。捕まえた所で自害されては仕方ない。そういう種類の工作員ばかりだよ」
「……厄介を通り越してげんなりしますね」
 これまで爆弾が見つかった場所は管理組合本部にエンジェルウィングス本部、ニュートラルロード各所に南北の門と人通りが多いか重要かといういかにもな施設だ。確かに破れかぶれの工作という感じではない。
「なんにせよ、テロリストについての捜索は僕の方でもやっておこう。
 管理組合に報奨金をせしめれそうだしね」
「……お願いします」
 ヨンは一つ頭を下げて、それから湯気の立つ紅茶をぐっと飲み干した。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「これを奥方様にですか?」
 黒服がサングラスの向こうで眉根を寄せる。
 今日のダイアクトー事務所にはひと気が無い。彼だけが留守居で残っていたらしい。
「ええ、せっかくのクリスマスですしね」
「……」
 眉間のしわが濃くなる。そのクリスマスに混乱させられているのだから無理もないだろう。
「何を考えているかは知りませんが。奥方様はしばらくこちらへ出向くことはありませんよ?」
「いえ、そういう内容のつもりはありませんけどね。
 何でしたら中を確かめても構いませんよ?」
 トゥタールの言葉にしばらく迷ったふうの黒服は、やがて「失礼」と言って手紙を改める。
 そしてやはり困惑したようにしばし沈黙する。それからゆっくりとかぶりを振った。
「奥方様からのプレゼントだなんてお嬢様は嫌がるだけですよ」
「本当にそうでしょうかね」
「今のお嬢様であれば。もう少し時間を置いて心の整理がつけばまた話は違うでしょうけどね」
 そう言われると彼も一旦口を噤む。
「お嬢は見た目通りの年なんですよ。で、魔族でありながらもう一方の親が聖職者の長。しかも自分の力を抑えつけているとなると反抗しない方がおかしい。それに─────」
 と、黒服は言葉を飲み込む。
「ともかく……。いえ、この手紙は奥方様に届くようにはしましょう。しかし奥方様も承知していらっしゃると思います。
 それだけはご理解ください」
「いえ。余計なお世話だったかもしれませんが」
 黒服はようやく表情を和らげてもう一度かぶりを振った。
「お嬢のわだかまりが解ける事を望んでいるのは奥方様だけではありません。
 その気持ちをありがたく頂いておきます」
 そう言って、男は深々と頭を下げたのだった。



*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-うみょんと神衣舞です。
まっかなはなのぷれぜんと 第三話をお送りします。
今回はショートですが、次回は「転」のお話になるかと。
律法の翼、いっきまーす☆
うひひ、リアクションよろしくお願いしますね。
まっかなおはなのぷれぜんと
(2011/01/18)
「これをお探しですか?」
 神官服を来たウェアウルフが差し出すのは確かにプレゼントの箱だ。
「昨日発見しまして、管理組合からの通知は存じていますから届けようかと思いまして。
 まだいくつかあろ、あしmpで届けていただけるのであればお渡しします」
「ありがとうございます」
 トゥタールは礼を述べて一度奥へと戻る司祭を見送る。
 双子神殿と呼ばれるサンロードリバーを挟んで立てられた2つの相似の建物。そのロウ側へとトゥタールは訪れていた。
「……ここのは爆弾で無いと良いですね、心情的には」
 特定の宗教と言うものが定着していないクロスロードであってもこの神殿の存在はわりかし奇異に思われる。更に宗教家にとっては顔をしかめざるを得ないだろう。
 というのもこの神殿、共同墓地ならぬ共同神殿なのである。特に一神教の司祭からは嫌悪される事この上ないこの場所だが、しかし人種の坩堝たるクロスロードでそれを声高に叫ぶ者もそう続かない。そういう場所だと割り切って利用するか、はたまた小さな神殿をどこかに構えるのが賢い判断という感じに落ち着いている。
 ────もちろん、落ち着かない連中も居るのだがそれはまた別の話。
 服装も聖印も違う神職の人々が思い思いに祈りを捧げたり、自主的に掃除をしたりしている。その中には年若い子供の姿もあった。宗教家のサガか、それとも信者を増やす確実な手段か。迷い込んだ子供を引き取る聖職者は少なくは無い。
「こちらです」
 彼が持って来た数はなんと3つ。最初のと合わせて合計4つとなる。
「……」
 そして、そのうちひとつはあからさまにカードが無い。
「で、ではお預かりしますね」
 よろしくお願いしますという声を背に、プレゼントを預かって早足に神殿から出る。確認作業は早めに行った方が良いようですねとひとりごちて

「─────」

 視線に気づく。
 視線を直接向けるような真似をせず、偶然を装うようにその存在を視界の端に捉える。黒服───ダイアクトー一味の親衛隊と同じ装いだが基本ガチムチの連中と違ってスマートな人間種だ。
「ダイアクトー……では無さそうですね」
 彼らとの圧倒的な差は無駄に洗練された気配消し。親衛隊の連中はこれから騒ぎを起こす合図とばかりに気配を振りまいている。
「暗殺者の同類でしょうかね……さて」
 踏み込むには間合いが遠すぎるし、捕まえたからとどうなるか不明だ。
「まずはこれを処理しましょうか」
 あちらもこちらに詰め寄る様子は無い。
 トゥタールはなるべく人通りの多い道を求めて歩を進めた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ロウタウン側では朝の4時か5時くらいから朝市が開かれる。これは一般商店が開店する8時まで行われ、住民として登録していない───つまり店舗を持たない人々がフリーマーケットのように売買を行える時間帯だ。
 朝市はロウタウンでしか行われていない。代わりに、ケイオスタウンでは夜市というのが行われる。
 夕方の4時頃から開かれるこれは主に食品を取り扱う店が多い。というのも夜型の住民にすれば朝食であると同時に、歓楽街を有するケイオスタウンでこれから楽しむ、もしくは持て成す人々の腹ごしらえの場所という雰囲気が強い。もちろん酒を提供する店も少なくなく、そのまま居座って深夜まで飲み明かす者も居る。
「さて」
 そうは言っても別に食べ物関係ばかりではない。やや怪しげな物が並ぶ露店を脇目にヨンは賑わい始めた道を往く。
 プレゼントについては管理組合の告知もありそれなりに知れ渡っている。それでもこの夜市に集う売人どもは拾ったそれを平気で売りさばきかねない。
 そして奇しくもその予想は的中した。
「あの……」
「はい、いらっしゃい!」
 一見子供だがホビット種だろう。ニコニコと店主が迎える声を挙げる。
「それ、何か分かってますか?」
「商品です!」
 一応期待して聞いてみたが分かってない───或いは、分かってそう答えているのか。
「……いくらです?」
「2万Cです」
 ……果たして高いのか、安いのか。
「ちなみに売れなかった場合どうするつもりですか?」
「どうすると言いますと?」
「例えば今が23日の午後11時だった場合」
 ホビットは笑顔のまま────ほんの少しだけ目が細められる。
「質問の意味がわかりませんね」
「……」
 どう、相手すべきか。
 危険だとかそういう言葉が通じる類の人種ではなさそうだ。一番手っ取り早いのはお金を支払う事だが……
「おっと値上げしました。5万C」
「なっ!?」
 いきなりの宣言に目を剥く。
「お兄さん。市場は常に動き続けるんだよ。一秒の差で手に入れられなかったりするんだ」
「い、意味がわかりませんよ!?」
「そう言ってる間に20万C」
 ケラケラと笑いながらの発言に白黒させた目を閉じて嘆息ひとつ。
「……機会が無かったと思って諦めましょう」
「そうかい? ところでお兄さんは何でこれが欲しかったんだい?」
「……集めるのが依頼で、爆弾かもしれないからです」
「本気で言ってる? これ、サンタとかが欲しい物を出すっていうミラクルアイテムらしいじゃないか」
 本物ならねとホビットは笑う。
「良い子に与えられる物らしいですからね。自分の物にしようなんて欲を持って懐に入れても意味が無いんじゃないですか?」
「あはは。それもそうだね。じゃあお兄さんこういう取引はどうだい?」
 箱の底面を指で持ち、スナップだけで回転させるとくるくると回る箱を器用に人差し指の上で維持。
「お兄さんが箱を開けた中身を教えてくれるなら、これは挙げるよ」
「……爆弾かもしれませんよ?」
「爆弾じゃないさ」
 さらりと断言する。
「こっちとホビット族。人間種の細工した箱なら一発でわかるさ。
 これはそういうシロモノじゃない。技術で作れるものじゃないからね」
「……」
 確かに相手の願いのままに中身を変える箱なんて高位神族の御技でもそうそうある物じゃない。
「それで譲っていただけるなら」
「はは、お兄さんは人に見られて困るようなお願いはしなさそうかな」
「どうでしょうね。楽しみにしておいてください」
 ぽんと回転しながら宙を舞った箱をヨンは両手でキャッチし、「毎度あり」と言うホビットに微笑んだのだった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

『爆弾3つお預かり』
 センタ君がボールの手を挙げる。その後ろで爆弾判定されたプレゼントを3体のセンタ君がせっせと運び出していた。
「3つも、ですか」
 トゥタールはため息をついて残った一つを抱きかかえる。
 相手の目的が何であれ、それはテロと言うしかない行為だ。宗教的な象徴をその目標に選ぶ心理はわからないでもない。同調したいとは思わないが。
「いったいいくつ仕掛けているんですかね」
 目下増加中という可能性もある。そもそも何のためはさておいても『誰が』もわかっていない。
「今、爆弾はいくつくらい発見されているんですか?」
『39個』
 プレゼントのサイズを考えるとやはり随分な数だ。
「それだけの物資を運び込んだ……? あ、いや、難しい事ではないですね」
 クロスロードと他世界の物資のやりとりはそれこそ日に千トンという勢いで行われる事すらある。クロスロードに齎される物もあれば、このターミナルを中継して別の世界へと行き来する物もあるからだ。そこにたかだか爆弾の100個や200個、まぎれても見とがめられる物ではない。大体武器弾薬だって普通に輸入されているのだから。
「これ、何とかなるんでしょうかね……?」
 今のところ犯人の仕掛けた爆弾は24日に爆発する設定にはなっている。理由はわからないがそれが回収と言う手段がとれる要因だ。
 しかしそれも犯人の心次第。別に今すぐ爆発する設定にできないわけではないはずだ。
「もはやサンタ種の仕業に見せかける必要性も薄い気がしますが……」
 残った一つのプレゼントを手に視線を背に確認する。双子神殿からその視線はずっと追いかけてきている。
「……ふむ」
 トゥタールは僅かに考えて歩きだす。
 路地に入り、ゆったりと歩く先はどんどんと人通りが薄くなる。
 追跡者は1人。それを把握してありきたりの引っ掛けを行う。つまり角をひとつ曲がって近くに潜む。
 数秒あってやや小走りにやって来たのは人間種らしき女性だった。人間種と見るならば年齢は25には至っていないだろう。彼女は焦った顔をして通路の先へと───トゥタールが行っただろう先へと走り始める。
「……プロ、と言う風には見えませんが」
 どう見ても戦闘屋にもテロリストにも縁遠そうな感じだ。一般市民に紛れるのが得意な超一流のスパイ────にしては尾行がお粗末すぎる。
 彼は木箱の影から出ると女の後ろを逆尾行。完全に見失ったと思いこんでいる彼女は困ったように周囲を見渡して、やがて諦めたように俯いた。
「……私に何か用ですか?」
「きゃぁっ!?」
 本気の悲鳴に思わず耳をふさぐ。
「ちょ、何もしてませんよ!?」
「え、あ!? な、何で後ろに!?」
 これが演技だったら見事過ぎる。
「何ではこちらの台詞です。どうして私を尾行していたんですか?」
「……」
 女は瞳を逡巡に彷徨わせ、それから彼の持つプレゼントに固定する。
「……彼を止められる人を探しているんです」
「彼?」
「……爆弾をこの町に仕掛けて回っている男です」
 思わない言葉に息をのみ、それから不安に揺れる女性を見る。
「だから、プレゼント────それに偽装した爆弾を持ち歩いていた貴方を見つけて……」
 そう言えば、と彼はもうひとつの荷物を見る。プレゼント探しの効率UPのために、プレゼントのサンプルを作って持ち歩いていたのである。今回の回収には役に立たなかったがどうやら別の物が釣れたらしい。
「……彼を……説得したいんです。でも、彼のやってる事は即座に殺されたっておかしくない。だから、爆弾を回収している人で話ができそうな方が居ないかと……」
「ふむ。恋人か何か……ですか?」
 女性はしばし逡巡した後に小さくうなずく。
「あっちはそう思ってくれてるか、わかりませんけど」
「……爆弾魔は1人、と」
 その呼称には抵抗があったのだろう。また僅かな間があり、しかし女性は頷いた。
「彼は少し特殊な環境で育ったんです。……そしてそれは爆弾作りの才能として開花してしまった。
 それを組織は利用する事にしたらしいんです。この町を支配するために」
「それを貴方は止めに来た?」
 女は押し黙り、それから一度ぐっと歯を食いしばってからトゥタールを見あげる。
「私は、現地駐在員です。この町の状況を逐次組織に報告するためにここに居ました。
 ……彼は私に巻き込まれただけなんです」
 これはまた複雑なと内心で呟く。
「私の名前はレイヤー。彼の名前はマドゥイック。……身勝手なお願いかも知れませんが、彼を止めるのを手伝ってください……!」
 女性の必死な面持ちを見て、トゥタールは判断をするために沈黙した。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
時間がかかって申し訳ない!!
神衣舞です。というわけでなんか女性が釣れました。
裏ではダイアクトー一味が頭領のご機嫌とりつつ爆弾回収中だったりしますがそれはさておき。

さて次回は解決編前篇となると思います。
リアクションよろしゅーーー。
まっかなおはなのぷれぜんと
(2011/02/01)

「本来プレゼントを貰う子供、ですか?」
 ヨンの質問にSANTAは不思議そうな顔をする。
「ええ、集めきらなかった場合その子供にはプレゼントはあげられなくなるとか、そういう事なのかなぁと」
「……」
 少し難しい顔で考えていた彼は、何かに気づいたようにぽんと手を打つ。
「プレゼントの配布予定なんてありませんよ?」
「は?」
 今度はヨンがキョトンとする番だ。
「余りおおっぴらにするのは好ましい話ではないのですが……
 内々にということであるならば説明いたします」
「……はい」
「我々は『徳』を分けてもらって生きる種族です」
「……徳?」
「はい。善行を行うと徳は溜まります。それを我々は頂くのです。
 そしてその余りをプレゼントと言う形に還元して置いていきます。
 我々以外にも神族の一部が幸運と言う形で加護を付与する代わりに徳を持って行く事もある見たいですね」
「……つまり、貴方がたは『徳』とやらを持っている人を探して、それを貰う代わりにプレゼントを置いていく、と?」
「はいそうです。ほとんどの種族は『徳』を持っていてもそれを利用する事ができませんから、持って行かれた人が困るような事は特にありません。
 まぁ、徳を利用できる能力を持つ種族であれば我々が近づけば気づくので遠慮してますね」
「じゃあ、プレゼントは別にあげてもあげなくても良い、と?」
「極論で言えばその通りなのですが、我々はそういう種族なのです。すでに徳を貰うという行動にプレゼントを生みだすという結果が付随しているのですよ。
 しかし、私はそのためのツールを落としてしまいました」
「ツール? それがプレゼントの箱ですか?」
「その通りです。あれは徳の吸収装置のようなものです。本質的には魔法使いの魔法陣に近いのですが……
 我々はプレゼントボックスを使って徳を貰います。その際に箱には徳がある程度残留します。
 そこに願いというイメージを付与する事で臨む物を形成するんです」
「ではプレゼントボックスを失ったあなたは……いうなれば食事ができない状態、と」
「はい。我々は回収期以外の間にプレゼントボックスを生成します。それぞれがそれぞれのプレゼントボックスを形成するので、他人の物は使えません」
「……なるほど」
 つまり徳を持ってる子をSANTAが見ければ、結果としてその子にはプレゼントが渡されるわけだ。
「子供が対象になりやすいのは純粋な徳というのは聖人君子のような悟りを開いたような人でない限りは精製されにくいからです。
 成長し、思惑が複雑化すると善行に躊躇いや計算が少なからず混じります。それが徳を歪めてしまうのです」
「全部集めてもらえれば越した事はありませんが、多少足りなくてもなんとか今年一年生きていく事はできます。
 しかし、今何よりも問題なのはSANTAという種に対しての疑念が生まれる事です」
「爆弾、ですか」
「はい。徳をエネルギーにする我々はイメージにとらわれやすいのです。マイナスの感情は我々にとっては石を投げられるようなものなのですよ」
 いくら犯人じゃないと言っても、合致してしまった状況で少なからず負の感情を抱く人も居るだろう。
「かつてSANTAの中にそういうマイナスイメージに侵され、黒SANTAとなり果てた者も居ると言います。
 彼らは悪徳を狙うようになり、それを持つ者に悪徳の名残りとして不快な物をぶちまけて去っていくようになったとか」
 聞けば聞くほど神族に近いように思える。
「ええと、不躾ですけど。SANTAって生まれながらにSANTAって事なんですか?」
「んー、生まれるとかどうとかは何とも。我々はSANTAなんですよ。人間種のように子供を産んだり育てたりするわけでもなく、最初からSANTAとして存在し、ずーっとSANTAなんです」
「……不老不死、ということですか?」
「そういう言い方もできるかもしれません。現象に近いのかもしれません」
 ヨンが思い描いたのはどちらかというと精霊だ。最初からそういうふうに発生して、存続していくような種なのだろう。
「なるほど、分かりました。じゃあまた見つけたら持ってきますね」
「申し訳ない、よろしくお願いしますよ」
 とりあえずやましい事はとにはないようだ。
 十全信じるかどうかはさておき、説明に淀みや嘘の気配はなかったように思える。
「何にせよ迷惑なのは爆弾魔、というところでしょうか」
 そう嘯いてヨンは次にどうするかを考え始めた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「……」
 管理組合にその事を全て話してみてはどうか。
 トゥタールの提案にレイヤーが押し黙ってから数分が経過していた。
 今現在、そのテロ行為を止めようとしているにせよ彼女の立場はスパイだ。普通に考えれば自首しても二人まとめて逮捕されて殺されるだろう。
 無論ただそうであるならばこんな提案などしない。トゥタールだってここがクロスロードでなければそんな提案はしないだろう。
 しかし賞金制度の根幹はこの町の安定した運営を阻害する者に大きな賞金を科す。果たして管理組合がどんな決断を下すかはやはり知れたものではなかった。
 それに仮に無難な処置で済んだとしても故郷からの制裁があるかもしれない。もしかするとそちらの方をより強く恐れているのかもしれない。
「或いは────」
 トゥタールは静かに切り出す。
「サンタさんにお願いするのはどうでしょうか?」
「……彼らに、ですか?」
 戸惑うのも無理はない。彼女らは彼らに罪を着せた張本人でもある。
「ええ。彼らの報酬でプレゼントが貰えます。或いはそれで────」
「でも、何を貰えば……?」
 そう問われれば言葉に困る。何かアイテムの一つでもあれば解決する……という状況とはちょっと思えない。
「ああ、でも彼らに協力を仰ぐとかどうでしょうか。少なくともマドゥイックさんを見つけられれば爆弾の位置もわかりますし、彼らにとっては万々歳のはずです」
「……」
 とはいえ、彼らが一番恨むべきもそのマドゥイックである。それが彼女らの所属する世界が黒幕だとしてもだ。
 トゥタールの提案が間違っていると言うわけではない。二人でちまちま探している間にマドゥイックは次々と爆弾を仕掛けているかもしれない。一刻も早く仮の身柄を取り押さえる事が結果的に罪を軽くする事にもなる。爆弾が爆発してしまえばそれも叶わないだろう。
 十数秒。レイヤーは息を止め、そして視線を挙げる。
「分かりました。管理組合に全てを話します」
「……はい。では取次を────」

 コンコン、と壁材をノックする音が路地に響く。

「お取り込み中ごめんねー」
 そこには仮面を付けた少女が居た。
 真っ赤な髪で小柄な体にはパンクな装いを付加したボディスーツ。
「ダイアクトーさん? ……いや」
 記憶を辿るが、違和感がある。
「はいはい、ダイアクトーさんですよっと。そういう事にしといて」
「……」
 自ら違う事を認める発言をして口元を本物ではありえない笑みの形を作る。
 苦笑───
「それで、ダイアクトー三世殿が何の御用で?」
「今の情報を買いたいの。どうかしら?」
「買う? 買ってどうするんですか?
 聞いた話では貴方がたが爆弾魔になっているはずですが─────、いや、貴方が、ですか?」
「そうそう、『秘密結社ダイアクトー』が今回の爆弾騒ぎを起こしてますよっと。あんまり信じてくれてないけどね、みんな」
 適当な調子ではぐらかしつつ少女は仮面の奥の瞳を向ける。
「どうして欲しいの?」
 からかいの響き。トゥタールは僅かに眉根をひそめる。その喉から出る声音はダイアクトー三世と全く同じなのに含む感情でこうも違うのか。
「できればマドゥイックさんは平穏無事に引き渡していただければ、と」
「構わないよ?」
 さらりと承諾の言葉が返ってきて訝しむ表情を濃くする。
「もちろん条件はあるわ。
 そっちの女を含めて『自白しない事』。この事件はダイアクトー一味の仕業です。そういう事にして故郷の世界とも縁を切る事
 もち、マドなんちゃらってのも説得してよね?」
「……ダイアクトー一味に恨みでも?」
「ないよ。そんなもん。どーでも良いし」
 わけがわからない。では何故そんな変装までして彼女らに罪をなすりつけようとするのか。
「説明は無し。質問もこれまで。あたしが聞きたいのはYESかNOか。そのどちらかよ」
「YESと言えば、マドゥイックも助けてくれるんですね……?」
 質問は無し。その言葉を念押しするような沈黙にレイヤーは奥歯を噛み締める。
 そして彼女の視線はトゥタールへ。彼女がNOと言う理由はまず無い。しかしこの条件にはトゥタールの協力が必須だ。
 その視線にどう応じるべきか。彼はゆっくりと二人の女性に視線を巡らせた。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
時間がかかって申し訳ない!!その2!!
ちょっと執筆環境が変わってるので調整中。加速したいなー(ノ=ω)ノ

神衣舞です。というわけで更に女性が釣れました(笑
次回最終回を予定しております。
果たしてその思惑とは──────!

 黒服さんたちが裏で頑張ってるんだけどね(笑
 まぁ、そういうわけでリアクションお願いしますねー。
まっかなおはなのぷれぜんと
(2010/02/12)
「いいでしょう」
 しばし沈黙が横たわり、それを払いのけたのはトゥタールの回答、その音。
「こちら、と言いますか、彼女にとっては破格の条件ですね。
 もっとも、ダイアクトー一味にとっては随分と迷惑な話のようにも思えますが」
 目の前に居る少女は、その姿、声をダイアクトー三世と同じものとしながら、狐のように狡猾な笑みが口元に浮かんでいる。
「別にあの子……あたしは悪の秘密結社なんだから、悪評万々歳よ?」
 偽者ということを隠そうともしないわざとらしい言い間違いをする。
 レイヤーはただ息を呑んでやり取りを見つめていた。自分たちの起こしたことをまるで無かったようにする。魅力的な提案は根が善人である彼女にとっては苦さを堪え切れないようだ。
 それを横目にトゥタールは思考を整理。
「部下の方に伝言があればお伝えしますよ、ダイアクトー殿」
「無いわよそんなもん」
 即答。秘密結社ダイアクトーに恨みも何も無いと言い放った言葉に嘘は無いと言わんばかりだ。
「あたしが欲しいのはそこの女が取引を飲むかどうかの回答。
 その結果がどうなろうと取引を反故にするような事があればペナルティは受けてもらうよ?」
「……」
 女は視線を幾度とさ迷わせ
「……後で彼を殺すようなことにはならないの……?」
「そのつもりなら一番確実な口封じをさっさとするわ」
 死人に口無し。確かに黙らせるならそれ以上に効果的な方法は無い。このターミナルでは死者の復活は不可能とされている。死んだ瞬間その核となる魂がもとの世界に強制連行されるからと言われている。
「……その通りね。受けるわ」
「おっけー。マドウィックとか言うのの確保と取引はこっちでもするけど、あんたたちが先に見つけたらさっさと説得するんだよ?
 嫌だなんて言ったら」
 すっと首の前で手を引く。
「善処しましょう」
 息を呑むレイヤーに代わってトゥタールは恭しく頷いた。
「んじゃ、取引は終わり。悪目立ちしないよーにね」
 笑顔を浮かべると彼女はひらりと適当に手を振って無防備に背を向ける。それは余裕の表れだろうか、そうこう考えている間に少女の姿は街角に消えていった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「変装の名人と光使い?」
「ええ。心当たりはありませんか」
 ヨンの問いかけにアドゥイックはふむと考えるそぶりをする。
「で、何十人列挙すれば気が済むかな?」
「……」
 十万の人口を抱え、その半分以上が探索者としての能力を有するこの町に措いて、それだけの情報では絞り込むまでに至らないらしい。
「で、でもダイアクトーさんのところの黒服さんを撒ける程と限定すればどうですか?
 それに随分とクロスロードの事情に精通しているような感じらしいですし」
「はっはっは。ヨン君。僕はパソコンじゃない。そんな簡単にぽいぽい答えは出ないさ」
 珍しく謙虚な物言いをする探偵にヨンは接ごうとした言葉を呑む。
「……」
「うん。まぁ、そういう事だ」
 頷いてコーヒーを呷る。
 沈黙。その裏にある言葉は「踏み込むな」の一言。
「律法の翼ではないのですか?」
「そうだともっと簡単だったんだけどね」
 急に喉が渇いたような気がして、出された紅茶に口を付けた。
 この男にしてそう言わしめる何か。そう、それはあの時以来。
「もしかして」
「世間話をしようじゃないか」
 遮ってアドゥイックは身を乗り出す。
「この前、この町では『久々』のテロ活動だったと言ったよね?」
「ええ。……」
 チリと記憶が疼き、先ほどの話と合致する。
 詰まるところ『かつてのテロは『5人目』の関与で収束した』という話。
「この町は創設以来何かと騒ぎが多い。そりゃあこれだけの種族を内包してるんだ、ごたごたの十や二十どこからでも生えてくる」
「……」
「だが思い返せば町がひっくり返るような騒ぎは大襲撃に再来。それから創設初期にあったテロ活動くらいなものだ。
 随分と平和なものだと思わないかい? こんな司法組織も警察機構もない町にしてはね」
「……」
 言葉は出せない。これはただ聞くだけの話だと悟っていた。
「これは奇跡なのだろうかね?」
「……紅茶、ご馳走様でした」
 ヨンは立ち上がり探偵事務所を後にする。
 奇跡────そんな都合の良い物でないとするならば。
 そこにはカラクリがあり、そして今現在それは人々に見えない場所に隠されている。
「……どうしたものですかねぇ」
 言葉に白を混じらせて、寒空を見上げる。
「まずはプレゼントを届けておきますか」
 暗闇に踏み込むには明かりも地図も足り無すぎる。吸血鬼はゆっくりと石畳の上を歩き始めた。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「そろそろ時間か」
 男は細い路地で空を見上げていた。彼の腕にはPBは無い。もしあの腕輪にGPSのような機能があれば大事だ。だから彼は携帯食料だけで数日を凌いでいた。
 もうすぐすべての爆弾は爆発し、この町は混乱に陥るだろう。所詮は50程度の爆弾で、捜索の手も入っている。無事起爆するのは数個だけかもしれないが5個も炸裂すれば彼の任務は成功と言える。爆発さえしてしまえば発見された物にも脅威という心理的な爆発が起こる。
 馬鹿げた町だと声に出さず、白い吐息を零す。自分の故郷は同じ人間同士が様々な組織に分かれて殺し合っている。なのに化け物としか思えないような連中が当たり前のように闊歩して談笑してやがる。
 俺は今からその幻想を破壊する。
 不信と疑念を刻み付ける。
 そうすればこの町は変わる。曖昧な体制に疑問を抱き、同じカラーに染まった者たちが個々に集まるだろう。そして別のカラーを攻撃し、主権を抱こうとする。
 そこに上は介入する。武器を売り、人を売り、そして乗っ取る。そのやり口は身体のスペックが一番劣る人間が最も得意とするところだ。
「マドゥイック……!」
 ただでさえ冷たい空気に痛む肺が心臓と共に引きつった。
「っ……!」
 無意識に銃を向けた先、息を切らせて立っているのは
「レイヤー……! 何をしてるんだ! 俺たちはまだ……!」
「聞いて! もうテロなんてやらなくて良いの!」
「何を言ってるんだ! 組織に逆らったら殺されるぞ!」
 彼女の体には爆弾が仕掛けられている。そのスイッチは組織の人間が握っていて……何よりも忌々しいのはその爆弾が俺の作品だという事実。
「体の爆弾なら処理してもらったわ」
「処理……? できるはずが無い。だってあれは」
 自分で作ったから良く解っている。体温を感知し、一定温度以下になると炸裂する。つまり遠隔操作でSTOPしない限り外科手術で取り出そうものなら執刀医もろとも肉くずに変える。
「この町ならできたの。その可能性に早く気づけば良かった……」
 その言葉にさび付いた思考がぎしりと音を立てる。確かにこの町はあまりにも馬鹿げている。だって魔法や超能力が当たり前のように存在しているのだ。
「……じゃあ、本当に……?」
「本当よ。だからもう組織に使われる必要は無いの。この町で静かに暮らしましょう!」
 できるはずが無い。組織に逆らって逃げ延びるにはあの世に行くくらいしか方法は無い。ノータイムで浮かぶ結論がこの町の異常性に霞む。
 ───はっとする。
「やっぱり……無理だ」
「……どうして!!」
「あと1分。それで俺はこの町でもとびっきりの賞金首さ」
 時限装置が作動するまでのリミット。
「だからレイヤー、君だけでもこの町で平穏に暮らしてくれ」
「マドゥイック、仕掛けた爆弾の数を教えて」
「……52だ」
「52……」
 レイヤーは繰り返すように呟いて、そして空を見上げる。
「そう、良かった……」
「え?」
 言葉の意味が解らずにきょとんとする。
「見て」
 彼女は振り返り、空を見上げる。

 そして、時間が来た。

 どぉーーーーーーーーーーーーん!

 遠雷のように響く爆音。しかし何の因果か爆弾作りという才能に卓越してしまった俺はそれが自作のそれでないことを聞き分けていた。それに、爆発の位置が酷く高い。

 どどどどどどどどどどーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん

 そして、路地からでもそれが見えた。

 空に咲く大輪の花。

「……なんだよ、これ」
「花火よ」
 いつの間にか目の前に来ていたレイヤーが俺を抱きしめる。
「良かったわ。間に合った」
「……じゃあ……」
 52という数に「良かった」と言った理由は────
「全部、止めたのか?」
「私たちは幸運だったの」
 彼女は胸に顔を埋めるようにして、そう呟く。
 膝から力が抜けた。彼女を支えきれずに背中から路地へ倒れこむ。
 空いっぱいに広がる花火。同じ火薬を使いながら、その用途を大きく異ならせるそれが一瞬の輝きを描き続ける。
「……説明、してくれ」
「うん」
 言いながら、思う。
 自分は救われたのだろうか、と。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「何なのよこれはっ!!!!」
 ダイアクトー三世様は大変不機嫌だった。
「何と言われても、花火ですが」
 黒服はしれっと応じて「やぁ、冬の花火は映えると聞きましたが、見事なものですなぁ」とわざとらしい言葉を漏らして蹴られる。
「何で爆弾仕掛けないの!」
「いや、ほら。こちらの方が派手ですし」
「ちっがーう! こんなの悪の組織じゃなーーーーーい!」
 腕をぶんぶん振って憤るダイアクトーを周囲がテキトーにあやすのを遠目に、ヨンとトゥタールは空の花火を見上げた。最後にプレゼントを届けた先で行き会ったのである。そしてトゥタールに誘われたままにここまで来たヨンはこうして空を見上げている。
「つまり、川原で爆発したのは仕掛け損ねて暴発したもの、と?」
「そういうことになりますね」
 ヨンの問いにトゥタールはしれっと応じる。
 時限爆弾。そう思われていた物は時限制で打ち上がる花火だった。確かに共に火薬を使ってはいる。
 余りにも強引な展開にヨンはトゥタールを見るが、彼は視線を上空から逸らさない。
「どれだけの人が誤魔化されるんですか?」
「どうでしょうね。ただ随分とダイアクトー一味ががんばって回収したようですから」
 実物を見た人物はかなり少ない。つまり、そういうこととする積りらしい。
「ところでプレゼント、貰いました?」
「……ええ、まぁ一応」
「何が入っていますかね?」
 SANTAの話では願望に即したものが出てくると言う。ただ、願望とは実に曖昧なもので脳裏に浮かべている物と心のそこの願いには差異があると言う。その差異が結果に影響を与えることもあるとかなんとか。
「空けてみないことにはどうにも」
「空けてみますか?」
 トゥタールの問いにヨンは小さく微笑む。
「見られて恥ずかしい物が出てきたら嫌ですし、こっそり開ける事にします」
「なるほど、確かに」
 やがて花火が終わると、まるで計算されたかのように空が白の化粧を撒き散らす。
「雪が」
 ちらほら舞い降りるそれ。空を見上げていた人々は微笑みつつも身を縮めるようにして足早に家に戻る。
「私も帰るとしましょうかね」
「……」
 ヨンは何かを言おうとして、結局口を噤んだ。
「ではまた」
「……それでは」
 二人の探索者は挨拶をして分かれ、
「うがーーーーーーー! あたしは悪なのーーーーーーっ!」
 少女の叫びが寒空に高く響いたのだった。

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はいはい、神衣舞ですよー。
というわけでこれにて『まっかなおはなのぷれぜんと』は終わりです。
元々『真っ赤なお鼻』と『真っ赤なお花(爆炎)』を掛けたタイトルですが、最後は『真っ赤なお華(花火)』で締めくくるととなったりならなかったり。
参加者の問題もありまして裏で進行しているお話には余り関われなかった模様です。
人増えてほしぃなぁ(=ω=)
とりもあえず爆弾集めはダイアクトー一味の人海戦術で何とかした感じですねー。
さてはて裏話関係は今後の展開に期待ということで。

あとは報酬の所に最終獲得プレゼント数と「SANTAへのお願い」を書いておいてくださいませ。
うひひひ。
ではお疲れ様でした。
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