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【inv13】『襲来! (=ω=)』
襲来! (=ω=)
(2011/02/15)

「「「「ひぃぃいいいいひゃっっっっはぁああああああああああああああああああ!」」」」

 冬特有の澄み切った空気に男達の声とバイクの轟音が響き渡る。
 全員が全員モヒカンやらスキンヘッドやらで、服は鋲打ちのトゲ付きジャンパーとボロボロの皮ズボン。鍛え上げられた肉体は寒気に曝されているが気にする様子は無い。
 彼らが跨るバイクも異様だ。無駄に出張ったハンドルや騒音を撒き散らすように調整されたマフラー(但し無音タイプに切り替え可能)。そんな車体には物々しいなんてレベルではない重火器がこれでもかと積載されている。
「アニキ! そろそろ未探索区域ですぜ!」
 最後方を走る大型トレーラからの声が操られた風の精霊越しに届く。
「OKベイベー! 俺達はこの区画を締め上げる!!!
 お前ら、覚悟は良いな!!??」

『ヒャッハーーーーーーーーーーー!!』

「良い返事だ!!」
 リーダー格の大男はニヤリと笑いエンジンを高らかに吼えさせる。

 ナリは色々突っ込みどころ満載だが、彼らは圧倒的な火力で未探索地域を巡る外回りのプロ集団だった。その機動力と卓越した制圧力で大型『怪物』撃破数も指折りである。
「アニキ、狙うんですか!?」
「なんだぁ? びびってんのか?! アア!?」
「違います! 高ぶってんですよ!! やっと証明できるんですからYO!」
 彼らが踏み込んだ未探索地域は北方方面で特に行方不明者数が多い区域だ。再来で発覚したとおり、ここにはフィールドモンスターが居ると目されており、一行のPBからはそれを伝える警告文が揃って読み上げられていた。
「アニキ! 右斜め前からなんかきやすぜ!」
「よっしゃぁ! ぎりぎりまで引き付けてぶっといのお見舞いしてやれ!」
「ヒャッホーーーー!」
「あ、いやっ!」
 声はトレーラーから。その荷台の上に設えられた銃座に座る男が双眼鏡を手に声を揺らす。
「顔野郎ですぜ、アニキ! 大よそ50!」
「ちぃ、面倒だな。近付かれる前に狙撃しろ!」
 顔野郎。それは一言で言うと『(=ω=)』な顔がどういう方法かわからないがずどどどと接近してきては自爆するというはた迷惑な『怪物』だ。
「よっしゃ喰らいやがれぇええええ!」
 ハンドミサイルを担いだ男が目視標準で(=ω=)の先頭へとぶっ放す。

「(=▽=)アヒャ」

 まだ100m以上も離れているのにそんな声を響かせてミサイルが顔面直撃。どんと爆風が周囲に広がり直後に凄まじい数の爆音が連続した。
「ヘッヘッヘ、野郎、アヒャヒャ言ってるぜぃ!」
「次だ! 右方から……なんだぁ? また顔野郎だぞ!?」
「左からも顔野郎だ!」
 ハイテンションを維持していた男達が沈黙し、ぎょっとして周囲を見渡す。
「な、なんじゃこりゃ!?」
 右から左から『(=ω=)』が湧いて出てこちらに迫ってくるのだ。
「う、撃て! 撃ちまくれ!!」

「(=▽=)アヒャ」どーーん
「(=▽=)アヒャ」どーーん
「(=▽=)アヒャ」どーーん
「(=▽=)アヒャ」どーーん
「(=▽=)アヒャ」どーーんどーーん
「(=▽=)アヒャ」どーーんどーーんどーーん
「(=▽=)アヒャ」どーーんどーーんどーーんどーーんどーーん

 数が多いだけで別に強い個体が出てきたわけでもない。次から次に『(=ω=)』は吹き飛んでは自爆するが、

「や、ちょっ!?」
 
 どーーん
 どーーんどーーん
 どーーんどーーんどーーん
 どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど

 爆発が隣の(=ω=)を巻き込み、自爆が連鎖し始めると男達は慌てて身を屈める。そこに襲いかかってくるのは莫大な音と圧力。音と衝撃がぶつかり合って大気を乱暴に叩いてはシェイクする。その震動が男達の体を貫いたのだ。

「が、あ……!」
 手榴弾やミサイルの扱いにも長けた彼らだから耳を押さえ、口を半開きにするという耐爆姿勢を咄嗟に取る事ができたが、そうでなければ鼓膜を破って気絶していたことだろう。
「動ける奴から撤収! 奴ら、まだ来やがる!!」
「動けないやつを車に投げ込め!」
「ぐずぐずするな!」
 立ち直った者から即時の対応。周囲の地面が吹き飛ぶほどの爆発は『(=ω=)』も一時的に退けていた。
「急げ! 次は無ぇぞ!!」
 死に物狂いの逃走劇が始まった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
「いい天気ですねー。寒いけど」
 フードを被ったヨンが澄み渡った空を見上げて朗らかに、しかしややげんなりとそんな事を呟く。
「あなた日光が苦手なの?」
 クネスが呆れたように問いかけるが「得意ではありませんね」と苦笑いで応じる。
「お前ら元気だな」
 ザザの呆れ声はタイヤが土を噛み、車体が揺れる音に消えた。
 彼らが居るのはトラックの荷台だ。そこには彼らの他に二週間の工程を支える食料や道具が積載されている。
 トラックはもう一台追走してきており、合計10人が1つのチームとして移動している。
「元気というか、拍子抜けかしらね」
 クネスは肩を竦めてどこまでも広がる荒野に視線を這わす。
「いきなり管理組合が北の探索を始めるなんて言い始めたからまた何か見つかったんだと思ってたんだけど」
「特にそういう噂は聞きませんでしたね」
「……巡回任務の拡大版のような感じだな。学者のような連中がゾロゾロ居るわけでもなし、目的地があるわけでもなし」
 出発前の説明では5つの班が管理組合の設定したルートをただ走ってくるだけと分かり、あからさまに落胆を見せた者も少なくない。
「北側って特に何か見つかったとかそういう情報には乏しいらしいんですよね」
 ヨンが少しだけ上を見つつ思い出すように呟く。
「大襲撃も再来も南側からの侵攻ですし、桜前線も南方向からですよね。
 東と西はサンロードリバーが通って居て、それぞれにヌシって言われるフィールドモンスターだろう何かが居るって事が噂されているらしいですけど」
「北には話題らしい話題も無いって事ね」
「ええ。防衛任務も北側は襲撃回数も少ないそうで」
 出立前に大図書館のサンドラから聞きかじった事を披露しつつ、思案顔を作る。
「でもそうなると益々なんで北の探索なんてするんだろうって感じですけどね」
「何か掴んだと見るべきか」
 ザザの言葉は誰もが僅かながらに考えた事だが、さりとて公表しない理由が分からない。
「フィールドらしき場所はいくつか目測が付いているらしいのですけどね。そこにアタックを仕掛けるわけでもないですし」
「のんびり揺られてるだけでお金を貰えるなら万々歳と思うんだけど。
 ……でも、暇ね」
 変わり映えのしない景色が延々と続くというのは眠気を誘うが、舗装されても無い荒野ではガタガタと揺れまくるのでオチオチ寝ても居られない。
「怪物でも出ないかしら、と言うのは不謹慎すぎるわね」
「クロスロードから随分離れているんだ。消耗は少ないに越した事は無い」
 ザザが遠くを見ながらぶっきらぼうに応じた。
「そろそろ休息予定のポイントだぜ」
 助手席に座ったサイボーグ男が身を乗り出してそんな事を告げてきた。
「一日目は無事終了と言う所ですかね」
「夜番は必要だがな」
 やれやれと言う感じでザザが窘めた。

 その時──────────────

 ぉぉおおおおおん

「何だ?」
 遥か前方からくぐもった音が響いてくる。太鼓のようでもあるが、
「爆音か?」
 サイボーグの言葉にザザが眉根をひそめる。
「煙も炎も見えないような場所からの音だぞ。メガトン級の爆弾でも使った奴でも居るのか?」
 ファンタジー世界出身のヨンとクネスは爆弾の意味こそ知っているが、見た事あるのはせいぜい手榴弾かマイクロミサイルくらいだ。
「分からねえ。だがフィールドモンスターの攻撃たぁ思いたくないな」
「でも、ルート通りに進んでいるとすればあの方向に進んでいる別パーティは居ないはずですよね?」
 ヨンが慌てて地図を広げて確認する。音の方向は北だ。
「未探索地域探索をやってる連中が居ないとも限らないわよ?」
「それもありますね……でも、どうします?」
「どうもこうもな。どれだけ北上すれば問題の場所に到着するかも分からないし、その脅威も知れない。
 報告するに留めるべきだとは思うぜ」
 サイボーグの言う事は尤もだ。
「どうせもうすぐキャンプを張る地点だ。後ろと相談して方針を決めるべきだろうな」
 それもそうだと皆は頷き、後方のトラックに停止の指示を行ったのだった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 その夜。
 
 野番をしていた獣人とドワーフのコンビに叩き起こされた一行はこちらに近づいてくる一団を迎える事になる。
「助かったぜ、悪いがクロスロードまでこいつを乗っけて行ってくれねえか?」
 モヒカンに世紀末ファッションという一団は誰もかれも土に汚れ、傷を手当する間も無いままここまで来たという有様だった。
 そして彼の指さす先、ボロボロになった彼らの車両には応急手当だけをしたと言う有様の、同じファッションの男が4人ほど苦しげに呻いている。
「何があったんだ?」
 ザザの問いにリーダー格らしい男は何もかもが馬鹿馬鹿しいとばかりに一つ肩を竦めた。
「ちょっと地獄の淵を覗いてきたのさ」

 僅かな話合いの結果、一行は重症者を乗せてクロスロードへの撤退を決定する。
 何よりも、彼らの持ちこんだ情報を早急に伝えるために。

「大量の顔野郎がクロスロードに向かって進軍してやがる」

 それが次なる混乱の幕開けであった。

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(=ω=)
さて、常時クエストでおなじみのこれです。
これがわんさか沸いてくるというお話です。
正直何がどうなったらハッピーエンドかはさっぱりです、わはーw

この後、他のパーティも撤収という運びになり、対『(=ω=)』作戦が立案される事になるのでしょーが。

次回は良いアイディア募集回という感じですかねー。
ではよろしゅー。


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