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【inv14】『舞い散るは花の』
舞い散るは花の
(2011/04/11)
「衛星都市からの連絡員が全滅だと?」

 ヘブンズゲートで統制をおこなっていた管理組合員が信じられないという顔で聞き返す。
「はい。今全員治療に回されているのですが、喋れない状態でして……」
「酔っぱらったのか? 防毒マスクは一定数用意していたはずだが……」
「それが……昨年の酩酊とは症状が違うのです」
「……なん、だと?」
 変化がないとたかをくくっていた組合員は緊急救護施設のある方向を見やる。
「それで……?」
「はい。酷い風邪に似た症状を出していまして……。困った事に機械系の方もくしゃみに似た挙動を繰り返していてまともに話ができないんです」
 男は考え込む。このターミナルに巣食う怪物の中には種族を問わず同じ状態異常を起こさせる怪物もいくつか確認されている。完全耐性を持っていればもちろん抵抗は可能なのだが……
「防毒マスクも効果なし、か」
「皮膚にかゆみもあるようで、恐らく吸引だけが原因ではないと」
「……衛星都市の状況は全く分からないのか?」
「残念ながら。唯一幸いな事は症状が命にかかわる物ではないということです」
 男は「そうか」と深刻さを隠しきれない声で呟いた後に「本部に連絡は?」と問う。
「すでに……。しかし急になんなんでしょうね」
「……観測隊が桜前線に緑が混ざっているという報告をしてきたからな。もしかすると花が落ちた後はそういう症状を発生させるのかもしれん」
「……しかし……」
 どうやってもそれはこのクロスロードまでやってくる。地下都市である大迷宮都市はまだ被害は少ないだろうが、クロスロードでは迎撃せざるを得ない。間違っても扉の園に侵入させるわけにはいかないのだ。
「観測隊の追加派遣を上申しよう。まずは情報を得る事が先決だ」
「はい」
 男は目を細めて遥か南を透かし見る。
 迎撃部隊はすでに出発している。無事に帰ってくると良いのだが。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「確かに緑っぽい色が見えますね」
 防毒マスクのせいか、くぐもった声が漏れる。
「よーし、適当に攻撃を開始する。迎撃部隊の目的はクロスロードにまっすぐ来るコースの桜前線を攻撃。進路をひん曲げる事にある。まぁ、気楽にいこうや」
 軍人風の大男がライフルを担いでそんな事を言う。
「まずは砲撃開始。接近を許したら適当にけん制して重火器部隊の撤収を待つ。
 また数キロ後ろに築陣して砲撃というのを繰り返す」
 周囲には設置型の機関銃なんてものもいくつも見られる。これらは設置も回収も時間がかかるため、前衛部隊の仕事は砲撃終了後の防御行動だ。
「では打ち方はじめ!」
 重なり合う轟音が耳朶を撃つ。いくつもの放物線が虚空に線を描き、ピンクと緑が淡く入り混じる平原へと吸い込まれていった。
 遅れて響く爆音。出だしは上々というところか。
「近づく前に全滅させてやんよ」
 気分よさげにそんな事を言う魔法使いがふいに詠唱を止めたのはびゅうと強い南風が吹いたときだった。
「……?」
 彼だけではない。急に煩いばかりの爆音がぐんと減った。訝しがってヨンは周囲を見ると大量のくしゃみが代わりとばかりに耳朶を撃つ。
「な、なんだぁ?」
 軍人が驚いたように周囲を見渡す。
「花びらは全然遠いぞ。どういう事だ?! っぶえっくしゅん!」
「……」
 なんというか、まずい。そう思った時にぞわりと皮膚にむず痒さを感じた。
「に、逃げましょう!」
「な……い、いや。そう、ぶえっくしゅん! そう、だば。おばえば! ええい。おまえら、撤収だ!」
 鼻水のためにまともに会話できなくなりつつある軍人の声に慌ただしく周囲は動こうとして
「ぶえっくしゅん」
「うぁ。目が! 目がぁあああ!!」
「痒いっ! 何だこりゃ!」
「思考にノイズがっ! 運動系も低下、言語データにえらぶえっくしゅん」
 なんとロボットまでくしゃみのようなものをし始めた。これではアンデッド族とかもう関係ない。
「に、逃げれる人から早く!」

 幸いと言うべきか。この部隊は武具を置き去りにしなければならないという大きな損失を被った物の一人の欠落を出す事無く撤収に成功したが、連絡の取れなくなった部隊も数多くあった。
 準備万端の防衛線はいきなり大混乱へと陥ったのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「大迷宮都市は閉鎖を決め込んだか」
「一応砲撃等は行ったらしいのですが、途中から例の症状を訴える人が増えて撤収を決めたそうです。自動攻撃装置にも原因不明の不具合が発生したらしく……」
 その言葉を聴覚に捉えつつポリゴン風ロボットは状況を整理しはじめる。
「……遊撃は中止らしい」
 同じ隊で遊撃を行うはずだった女性が声をかけてくる。
「そのようですね」
 データベース照合。アインと言う名前を引っ張り出し、そちらへと視線を向ける。
「昨年までに無い症状が発生しており、混乱しているようです」
「……予習は無駄だった?」
「いえ、桜の花弁からは酩酊のエフェクトが確認されたと」
「新型が混じっていると言う事?」
「管理組合はそういう認識のようです。大迷宮都市は迎撃行為を放棄したようですね」
「……そう」
 端正な顔立ちからか、表情を変えないからか。或いはポリゴンロボと並んでいるからか。人形のような少女は静かな視線を虚空へと向ける。
「……花粉症?」
「花粉症?」
『発作的で反復性のあるくしゃみ、鼻水、目のかゆみなどを誘発する花粉アレルギーの総称です』
 疑問符に反応したかPBの解説をデータとして受信し、確かに先ほど管理組合員が語っていた症状と一致すると判断。しかし────
「貴女の世界の症状ですか?」
「……流石にロボットが花粉症になったと言う話は知らない」
 スティルだってそうだ。そもそもロボットにアレルギーなんて聞いた事も無い。
「対策、あるのでしょうかね」
「……アレルギーだから抗アレルギー剤とか?」
「なるほど。と言ってもいきなりの調達は難しそうだ」
 数秒の思考。それからスティルはPBに確認。
「花粉を完全に落とす事は可能ですか?」
『浄化系の術式や、風霊系の術式、或いはそれに準ずる技術により可能と推測されます』
「すでに被害に遭われた方に試してみる価値はありそうですね」
「……それが有効なら風系の魔術で防ぐ事はできそう」
 その言葉でスティルはどこにあるのかイマイチ自分でも理解していないセンサーを働かせる。
「良くないですね」
「……?」
 不意に空を見上げてそんな事を言うロボットにイマイチ感情の掴めない視線が向けられる。
「南からの風がここ数日強いですね。このままでは……」
「……迎撃をする前に全滅しかねない……かもね」
 声音は静かだが、感情の発露が薄いその言葉から戦慄を感じる事ができるのはそれだけ彼女がその未来像に悪寒を抱いたからか。
「悠長に砲台を構えているわけにはいきそうにありません。エアクリーニングでも扇風機でも用意して早急に迎撃をしなければ手遅れになります」
「……私には当てがない」
「問題ありません。そのための管理組合らしいですから」

 その間後、風霊支配系の防御魔術をできるだけかき集め、迎撃を試す事となる。
 そしてそのメンバーの中に、発案者の2人の姿もあったのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「なにが役に立つかわからないものね」
 呆れ半分の言葉はクネスから。
「にゃっはー! この天才が作り上げた発明品は無限の可能性を持つっすス!」
 そんなのにミリ単位もめげはせず、薄い胸を張るトーマは先日のがっくしぶりはどこに行ったのか、自信満々だった。
 端的に言うと、突発的に思いついたバリア膜砲弾が管理組合のお眼鏡にかなったのである。
 まぁ、正確にはその『薄型バリア』という存在が、だ。
 迎撃部隊の証言から、桜前線に混ざる緑は葉桜ではなく、恐らくスギとブナに似たトレント系の怪物であることが推測された。その事からもこの新しい症状は花粉症によく似た物であるという確信が高まったのである。
 風霊系の術や浄化の術を得意とする魔術師に声がかかったのだがいかんせん数が足りない。そこに妙な発明品を持ってうろついているトーマがやってきたというわけである。ちなみにクネスは長距離砲撃用術式を作ってみたのでそのテストを兼ねて訪れていたところでカチあった。
「やれそうじゃな。自動車に乗せた魔道エンジンとエネルギーを直結させればある程度の時間バリアを維持できそうじゃわい」
 顔をあげたドワーフ────ドゥゲストの声に満足そうにうんうんと頷くトーマ。
「時間があれば無線式にしたい所だが、贅沢は言ってられんな」
「ふ、このあたしに任せてもらえれば無線式だろうと────」
「出発は3時間後らしいけど?」
「……、も、もうちょっと時間が欲しいっす」
 しゅんとしぼむ。流石に天才でも時間にはあらがえないらしい。
「でも、このバリア大丈夫なの?」
「し、失礼っスね!」
「防御性能は皆無」
 もう一人、作業を手伝っていた技術者の言葉に声を詰まらせるが、すぐに我にかえり、「そ、そうっす。これはあくまで空気抵抗を抑えるためのものっスから。開発目的が違うっスよ!」とマイフォロー。
「……花粉や花びらを弾くだけなら問題ない」
 青い髪の眠そうな目の少女がトーマの自己弁護にこっくりとうなずき、そのままこっくりこっくりと船をこき始めるが、何か知らないけど手は作業に動いている。
「だ、大丈夫なの? この子」
「……大丈夫。システムの無駄な所を省いて最適化したから」
 なんか質問に答えてきた。まぁ、大丈夫かの対象は思いっきり間違ってはいるが。
「最適化っスか? 砲弾に内蔵するために限界まで最適化してるっスよ!?」
「……」
 応じる代わりに差し出されたのはソフトボールサイズのメタリックなボールだ。武装列車に搭載されている砲塔を想定して作ったトーマ製の物より1周り近く小さい。もちろんトーマの作品は弾丸としての威力を確保するためにそれなりに金属密度が必要だから比較して良いかは微妙だが、確かにリサイズはされている。
「むむむ。言うだけの事はあるっスね」
「ZZzzzz」
「ね、寝るなっス!!!!!!」
 青髪の少女のタンクトップを掴んでがくんがくん振ったりしているトーマから気にせず作業を続けるドゥガストへと視線を移す。
「あたしも同行した方が良いのかしら?」
「超遠距離の攻撃方法があるなら南砦で十分だろうよ。それにこのバリアはさっきも言った通り衝撃にそれほど強くないし、魔力にも揺らめく可能性があるからな。数も用意できん。やる気と暇を持て余している前衛連中に託すのが一番じゃよ」
 この症状を花粉症ではないかと伝えてきた探索者をはじめとする十数人がすでにスタンバイをしているらしい。風霊系術師は浄化系の術を使える神官等のサポートに同行する。都合30人程度のチームだ。一陣として彼らには出てもらい、その間にバリアの量産や風霊系呪符の作成を行う算段で動き始めている。
「数が数じゃ。最後は砲撃が頼みの綱になる。予報じゃ明朝には南砦の有視界内に到達するからのぅ。慌てる必要もあるまいよ」
「それもそうね。彼らの頑張りに期待ってところかしら」
 クネスは軽く笑って自分の構築した術式を再度見直すのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 ……クク
 …………クヒィッ……クヒヒィヒイイイヒイッ
 …………
 ……

 …

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
にゃふー。神衣舞です。
今回は状況説明もいろいろと入りましたので直接の戦闘は少なめとなりました。
前衛系の人達にはちゃんと前で戦える準備ができましたので満足です。トーマちんに感謝(笑
というわけで次回はガチなバトルになります。遊撃戦から南砦での砲撃戦までってところでしょうか。前衛組も後衛組も張り切ってやっちゃってください。

……ああ、あとまぁ。いろいろ裏でたくらんだりとかしてないよ?
 えへ☆
舞散るは花の
(2011/04/20)
わざわざすみません」
「なに、これも司書院の仕事じゃ。地下階層ともなれば妾のような本の化身か、余程禍祓いに長けておらんと無理じゃろうし」
 先を歩くのはふくらはぎまである黒髪を揺らし幻想のように歩く女性。顔立ちも物腰も純和風で、それゆえに司書院の制服が際立つ。
「無理、でしょうねぇ」
 ちらりと視線を横に振ろうものなら強烈な欲求ががつんと脳を叩いてくる。
読みたい。
 何の本すらかも理解できないのに、呪いじみた衝動がぐぉんと脳裏を駆け巡る。
「やめんか」
 それはヨンへの言葉ではない。しかしその言葉に衝動ははたりと消え去り、彼は安堵の息を吐いた。
「やはり無理なようです」
「目を閉じ、ただ往けば良いのじゃが……容易な事ではないからの」
 くすりと妖艶な笑み。
 大図書館地下階。その1階と2階には一般公開するには危険すぎる書物が山と詰め込まれていた。探索者だらけのこのクロスロードでなにが危険かと言うかもしれないが、内容もさることながらここにある本は読み手に、そしてその周囲に多大な影響を与える物ばかりだ。
「故に、下に住みつく輩は狂人と揶揄されるのであろうが。中にはまじないも知らぬ者もおるのじゃが」
「集中力だけで言えば驚異的な人達ばかりですからね」
 二人が向かうのはそのさらに下。当初特別閲覧室として設けられ、今ではこんな場所を選んで住みつく研究者の巣窟となっている。
「さて着いた」
 本棚だけの回廊を抜けた先。薄暗く、心身ともに圧迫されそうな道の先にあるのは近代的で無機質な扉だった。
「妾はそこらで時間を潰しておく故、ゆるり話してくるとよいぞ」
「はい。ありがとうございます」
 フと笑って文車妖姫は軽い足取りで本の樹林へと姿を消す。
 守り手の不在を知った本が誘惑してくる前にヨンがその扉をくぐると、迎えたのはリノリウムの白く清潔な廊下と、一定間隔にある扉の列。
「ええと。ニギヤマさんの研究室は?」
 問いに応じたPBが道順を示す。その通りに歩いていくとやがて一つの扉の前に辿り着く。
「ニギヤマさん、いらっしゃいますか?」
 呼びかけに扉が開く。ひょこりと顔を出したのは小学校低学年程度の女の子だ。
「ヨン ダ」
「こんにちわ」
 ひょこりと手を挙げるその少女に挨拶をすると、「パパ?」とその上に全く同じ顔の少女がのっかかってひょこり手を挙げる。
「ええ。ニギヤマさんは?」
「オクニ イル」
「パパ。ヨン」
 双子、というわけではない。ある意味双子みたいなものだが彼女らのそっくりさんはまだ数百は居る。彼女たちは『森』と呼ばれるクロスロードの外をゆっくり巡る樹木群のコア、そのコピー体である。常識の勉強のためにコピーの数体がニギヤマの研究を手伝っているということだ。まぁ、マッドサイエンティストの近くに居てなんの常識を学ぶのだろうかという突っ込みはとっくにスルーされている。
「んん? おお、ヨン君か。どうしたのかね? あの子の本体なら森だよ?」
「いや、私がなにしに来たと思っているんですか?」
「仮にも生みの親にどういう質問をしているのかね?」
「本気で言ってますか?」
「君にその気があるのなら」
 ふと生み出される笑みは冗談と言うよりも純粋な興味。
「恋愛感情というものがあの子にどんな影響を与えるのかというのもかなり興味があるのだよ。なにしろ精霊種のドライアードは人間を誘惑して虜にするらしいからね。あの子は私の作品ではあるが、共通点はあるかもしれない!」
「……」
「というわけでお父さんは公認するぞ。ささ、男なら据え膳……」
「本題に入って良いですか?」
 にこやかにドスを利かせると「はっはっは。なんだい?」とわざとらしい笑顔を作る。
「これです」
「ん? 袋? ……ほう。外のアレかね?」
 流石というべきか。ぱっと見空気を詰めただけの袋を見てニギヤマは興味深そうに眼を細めた。
「解析をお願いしたいと思いまして。森への影響も心配ですし」
「影響はもちろんあるさ」
 袋を受け取りながら初老の男はさらりと言ってのける。
 背を向けてガラスケースの中に袋を放り込み、密閉。中のロボットアームが袋の密閉を解くように操作しながら彼は語る。
「これは推測だけどね。この花粉も、花びらも。魔術がどうとか、成分がどうとかじゃないんだよ」
 うぃんうぃんと動いていたアームが突然妙な動きを始める。ニギヤマは肩を竦めて電源を落として、別の操作を行う。
「ああ、やっぱりなぁ」
「どういう意味ですか?」
「花びらは防毒マスクで防げた。これはこの花びらに含まれる臭いが問題なのだよ」
 再度立ち上げる。するとアームは何の問題も無く作業を始め、しばらくしても挙動におかしい所は無い。
「臭い、ですか?」
「正確には花弁から香るなにかとそれを知覚する能力が問題、ということになるかな」
 とたんに意味が分からなくなる。
「それはどういう?」
「花弁の臭いを嗅いだ者は酔う」
 ずばりと研究者は言い切った。
「それを前提にすれば、この花粉は『触れた者の免疫を過剰反応させる』だな。免疫と定義してしまえば機械類にも当然備わっているからな」
 科学関係に疎いヨンは眉をしかめるしかない。
「簡単に言えば人には害悪に対しての抵抗力がある。病気であっても呪いであっても、それに抵抗する事ができる。病気や呪いに負ければその影響を受けるが、抵抗力が勝ればそれを受ける事は無い。
けれども抵抗力というものは常に発揮しておけない。
抵抗力は害悪から逃げる時だけ全力疾走するようなものだね。常に全力疾走していれば体は当然ばててしまう」
「……はぁ」
「だがこの花粉はその全力疾走にドーピングしてしまうのだよ。無理やり全力を越えた疾走を強いられた体は当然壊れる。これが被害者に起きている現象だ」
「……ええと、それで?」
「それだけだが?」
 訝しげに言い切る博士。
「いや、ほら。解決策とか」
「皮膚を露出しない事」
 ずばり言い切られてヨンは数秒沈黙。
「……。ええと。森の方は?」
「放っておくしかあるまいな。症状からすれば死ぬ事もなさそうだから通り過ぎるまでの我慢というところか」
「……解毒剤とか、そういうものは?」
「だから毒では無いのだよ。あえて言えば全ての抵抗力を捨てる事だな。無論そんな事をすれば病気にかかってもっとひどい目に遭うがな」
 役に立たないと内心ぼやくが従来の毒とは趣が違う難解な状況を改めて認識する。
「何にせよ一定量以上の花粉に触れたら免疫系にエラーが発生してしまう以上触れないのが一番だ。今回もあの『前線』はただ進行するだけなのだから完全密閉の防護服を着て動きの少ない兵装でやり合えば良い。無論コンピュータ内蔵な武器はシステム保全系からのエラーが発生する可能性があるからシンプルな武器に限られるな。人力の破城鎚あたりが理想じゃないかね?」
「そうですか……それで、森の方は?」
「あの子は心配かね。いやぁ、流石だねぇ」
 ニヤリと笑みを作るおっさんをジト目で制する。
「まぁ、命には関わらんさ。休眠モードに落ち着かせて雨を待つのが一番だからな。そうすれば影響は最小限だ」
「そうですか」
 確か外ではニギヤマが言った通り完全防護状態で攻撃を仕掛けるという手段に動き出しているはずだ。結局それが有効であるだろうという確認をしただけかもしれない。
「私はもう少しこれを解析して見るよ」
「はい、お願いします」
 一礼してヨンは研究所を後にしようとして
「……ん?」
 2人のコピーコアが裾にぶら下がっている。
「これはお父さんとして嫉妬すべきなのだろうか」
 ニィと笑って言う男に「知りませんよ!」とヨンは怒鳴り返すのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「気象操作はこのターミナルでは非常に難しいのですよ」
 スティルの提言に学者風の男があごをさすりながら応じる。
「ほら、気象というのは空だろう? 魔術は100mの壁に遮られるからね」
「なるほど」
「ただ、放水するのは意味があるだろうね。あれが本来のスギなんかと似た特性があるのなら雨の日にはそもそも花粉を飛散させないかもしれないし」
 男は言葉を紡ぎながらスティルの胸元に拳サイズの玉を付ける。
「よし。展開はPBからの指示でできるよ。連続効果時間は30分程度。車両にチャージャーがあるから20分の警告がなったらチャージするように。
 あと、解除の前には必ず浄化を受けるように」
「わかりました。
 ……ちなみに、あのスギは桜が突然変異を起こした物、という推測は成り立ちますか?」
「……分からないね。植物学的に言えば交配もしない別の種だが、このターミナルで起き得ないとは誰も言えない。我々はこの世界をまだまだ知らないからね」
「それでは……人為的に作り出された可能性もある、と?」
「……」
 男は眉根を寄せて、それからしばらくするとフッと苦笑を作って首を振った。
「いやぁ、無いだろうな。それは」
「可能性の上ではあるのでは?」
「人為的に作られたのであれば、あれは怪物ではないさ」
「意思疎通の壁を指していると推測しますが」
「ああ、その通り。やっこさんらが素直に改造手術を受けるもんか」
「強制ということは?」
「無いとも言えないが、衛星都市よりもさらに南下して、あれだけの数のスギやブナを生み出すほどの干渉ができる奴が果たしているかどうか。
 居るとすればそいつ、あるいはそいつらはクロスロードの誰よりも有能な探索者だな」
「つまり、現実味が薄いと」
「そういうことだ。よし。そっちの嬢ちゃんはどうだ?」
「問題無い」
 平坦な声音で応じる黒髪の少女───アインはゆっくりと体を動かしてみている。薄い光を体にまとていることからバリア展開中であることが窺えた。
「そろそろ連中から距離300ってところだ。よろしく頼むぜ」
「はい」
「できる事をやる」
 彼らを含む一行が乗っているのは改造したトレーラーだ。後部のハッチが開くと荷台の奥に設置された送風機が動き出し、外へと風を吹かせる。それに押し出されるように数人の探索者が荒野に降り立つ。
 すぐにハッチは閉まり、代わりに外に設置されたスピーカーから『残量警告が出る前にトレーラー横にある魔力球に触れるように』と声が響いた。
「私たちの任務は倒す事でなく適度に進路を変える事ですね」
「そうね」
 僅かに空気が黄色に見えるのは花粉が濃いからだろう。しかしくしゃみやかゆみという影響は出ていない。
「だが、倒してしまっても良いのだろう?」
 同じ車に乗っていた男がそんな事を言ってニィと笑う。
「こっちとまともに外に出られなくてうっぷんが溜まってるんだ。派手にやらせてもらうぜぇえええ!」
 と、大きな斧を持ってどがどがと走り出し────
 やる気出し過ぎたのかいきなり足をもつれさせて転んだ。
 白けた空気が広がる中、
「うぎゃぁあああ?! かゆぃいい!? ぶえっくしゅん!」
 いきなり男は悶え苦しみ、くしゃみを連発し始める。
「……これは?」
「バリアを破ってしまったのでしょう。
 打撃を受けたりしない限りは普通に攻撃する分には問題無いというスペック表示でしたが」
「……悲惨」
 目を充血させ、顔を真っ赤にした大男を横目にああはなるまいと他の探索者達は動き出す。
 先んじて飛び出したアインがびゅんと大鎌で大気を引き裂く。木の幹を直接切りつけても切断するのは至難の業だ。故に反応を見るために幹を浅く切り裂く。
 悲鳴を上げるようなことはない。ただ傷を嫌がるようにぶるりと身を震わせると彼女を避けるように方向転換。
 今度はなにもせずに近づいてみるが、相手は構わずこちらに近づいてくる。ギリギリまで待っても止まる事がなさそうなのでそれを避けるとそのブナはまっすぐ歩いて行ってしまった。
「なるほど」
 どうやらクロスロードというより北方向へ直進するという特性は聞いた通りらしい。目立った反撃は他に視線を巡らせても起きていないようだ。
 あまり大きな動きになって木にぶつかるのも面白くないが彼女は舞うようにデスサイズを振い、次々に木の幹を傷つけて行くと木々は次々と外側に逃げるように進路転換した。
「反撃は無いようですね」
 いつもは素手だが、今回それではバリアが破損する可能性があるので借り物の小手を身に付けたスティルががんと近くの木を殴りながら確認するように呟く。
 一方的な攻撃が可能と知った探索者達が攻撃の密度を上げていくと周囲は桜吹雪の幻想的な風景と化す。
「……」
「貴女もですか?」
 やや視界が悪くなった空間で、アインはこっそりと持ってきた袋を手にしていた。密閉が可能なジッパー式のもので、採取したサンプルを本国に送るためのものだ。見ればポリゴンロボも同じような袋を手にしている。
「……」
「お互い様ですし、咎めるつもりはありません。そもそも同じような目的の方は数名いらっしゃるようです」
 確かにあからさまに戦闘とは無縁のような風体の探索者も混ざっていた。同じように報告のための採取か、或いは自分で研究するためにここまで出向いたのだろうか。
「派手に衝突しない限りはバリアも問題ないようですし、管理組合も特に咎めたりはしないでしょう」
「……そうね」
「そこで、あの枝あたりを切っていただけませんか? 折るには少々高くてですね」
 表情の起伏が元々少ないためか、それとも本気で飽きれているのか。判断に困るようなジト目でしばらくポリゴンロボを見ていたアインはややってひゅんとサイズを振うと、ぽとりと幾本かの枝が地面に落ちる。
「ありがとうございます」
 例を言うスティルにアインは袋を差し出す。
「これは?」
「私の分も。いくらか切るから」
「オーダーの通りに」
 恭しくポリゴンロボが応じるのを見て、アインは木々を傷つける作業へと向かったのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「ふーん」
 バリアのテストを兼ねた斥候部隊が戻ってきた後。
 斥候に混ざっていた風使いからの話を聞いたクネスは当てが外れたと空を見る。
 もしかすれば南から吹きつけるこの不都合な風も怪物に関係するのではないかと踏んでいたのだが、残念ながらと言うべきか、幸いと言うべきか。ともかくそのような不自然な物ではないという話だった。念のため他の風使いにも問いかけたが結果は同じような物だった。もっとも100mの壁がある以上或いはということもありえるのだが。
 ちなみに葉桜が混ざっているという噂が流れていたが実際はブナやスギの緑がそう見せていた原因であり、桜で葉を付けていた物は結局確認されなかったらしい。
「とにかく攻撃も防御も目途が立ったし、あとは乗り切るだけっぽいわね」
 彼女が居るのは南砦の防壁の上。そこでは北からの風が吹きすさび、彼女は風を背に受けたまま南を見据えている。
 南砦に用意されたのは巨大な扇風機。それから風精など風の操作に秀でた者だ。その全てを吹き飛ばしてしまえばあとは一方的な攻撃も可能になる。とはいえ相手は目視も難しいほどの微粒子。中にはくしゃみをし始める者も発生し、浄化系の術を使える者が砦内を走り回っていた。
「攻撃部隊が再編成されるようね」
 振りかえれば南側の門の内側でトレーラーやバリアの調整をしている姿が見える。可能な限りの迎撃戦を繰り返し、射撃圏内に入るまでに極力減らそうという試みを行う事になったらしい。
「まぁ、幸い準備がまるっきり無駄になったわけでもないし」
 南砦からさらに南側に広がる荒野には塹壕や柵が幾重にも用意されている。乗り越える事も可能だろうが少しでも進路がそれればそれでいいというシロモノだ。
 それ以外にも兵器とは別に投光機が用意されている。これは攻撃目標を指し示すためのもので、進路がクロスロードからそれている木を無視し、攻撃を集中させるために用意した物だ。むやみに攻撃して折角の準備を台無しにしないためでもある。
「とりあえず状況を見守りましょうかね」
 彼女の脳裏には「本当に風は偶然?」という思いが未だにわだかまる。
 しかしこの局面となっては木々を乗り越えて確認に行くというのもなかなかに難しい。
 何にせよ
「しっかりやらないとね」
 遠くから確実に迫りくる土煙りと花粉の色を眺め見て、クネスは目を細めるのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 サァアテ……

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
にゃふー。神衣舞です。
というわけエンゲージです。木は基本的に反撃しないので一方的な展開となっております。当初は宇宙服みたいなの着せるつもりだったんですが。トーマの思いつきがこうも化学変化するとは。相変わらずノンプロットでお送りしております。
次回は南砦直前での攻防戦+αです。
そろそろラストに向けて話が加速します。
くふ。

PS.設定確認のためにアインのキャラシーみて爆笑したのはここだけの話(=ω=)
 トーマ似の母さんってw(いや、研究者なんだろうけどw)
舞散るは花の
(2011/05/03)
「……」
 彼女は自分の部屋で一人悩んでいた。
 彼女の前には一台のノートパソコン。話に聞くメールの設定とやらを試してみようとしたのだが。
「どうすればいいの?」
『ターミナルでは『100mの壁』が存在するため、あらゆる電気的、魔法的通信手段は使われておりません』
 反応したPBが無機質な回答を示す。
『糸電話でも100mを越えるとその声は意味のある音として聞こえなくなります。
 そのためクロスロードでの通信手段は手紙か、掲示板か、あるいは煙花火などとなっています。PBに通知される情報については『派出所』の傍を通った時に自動更新されます』
「作戦決行の時の告知は?」
『派出所で受け取ったデータの中に桜前線に関する物があればお伝えします』
 沈黙すること数秒。
「つまり……メールはできないと言う事?」
『はい』
「……」
 アインはほんの少しだけがっかりしたようなそんな空気を漂わせると、気を取り直したかのようにノートPCを扱い始める。
 レポートを書く分には問題無いはずだ。
 桜前線関係の作戦連絡を確認すると3時間後に交代の枠が参加できそうだ。
PBにその枠への参加を依頼して、アインはキーを叩き始めた。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「さーてと」
 クネスは双眼鏡を手に事態の推移を見守っている。
 バリアシステムのおかげで不確実で散発的になりやすい遠距離砲に頼らないやり方で進められるので南砦の砲撃部隊はラインを突破して来た相手を殲滅するという仕事にとどまっている。たまに抑えが利かなくなった時に、わざと大量に進行させて一網打尽にしたりもしている。
「青三つ」
 上がった煙の色と数を確かめてクネスは周囲に呼びかける。
「一団が進行してくるから飽和攻撃用意。間違っても前線に当てないようにね」
 色つきの光がすっと伸びる。投光機に示された地点に向けて一斉に魔法と銃弾が雨あられと降り注いだ。
「何とかなりそうね」
 とはいえ。どうもすっきりしない物をずっと感じているのもまた事実だ。
「気にしすぎ?」
 誰にと無く呟く。
 この世界はまだまだ謎だらけだ。魔法とも科学ともそりの合わない法則が平然と存在し、来訪者達の首をひねらせる。安易に安心できないのは当然の事だ。
 逆に、心配し過ぎても精神が持たないという意見もあるだろが。
 びゅうと吹きつける生温かい風。冬の寒さを忘れたような心地よいそれにクネスは眉根を寄せる。
 南砦ではその風向きは南方向となっている。これは風を操る能力持ちによる行使の結果で、実際は今も南からの風が吹き続けている。
 この都合の悪い風がどうしても疑わしくて仕方ない。が、桜前線のさらにその先へ調べに行くのは容易ではない。
「……今は確実にお仕事、よね」
 次々と上がる色煙に周囲への指示を飛ばしながらクネスはただ南を睨みつけた。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「ヒッヒッヒ……!」
 さて前線である。
 当初の緊迫感はおおよそ薄れ、前衛組は指示に従いつつ木々の進路妨害を続けていた。
 そんな中、こっそりと前線部隊に紛れ込んだトーマは巨大な装置を設置しつつ怪しい笑いを振りまいていた。
 ちなみにそんなでかい装置を設置しながら『こっそり』できていると思っているのは当然彼女だけである。前線部隊のみなさんはなるべく気付かない振りをしつつ彼女の方へ桜たちが行かないようにと剣や槍を振っていた。
 ちなみに、当初装置を召喚する方法を試そうとしたのだが、そもそも前線の位置は南砦から見ても2〜3kmは離れている。100mの壁にあっさりと阻害されて召喚するのは不可能と言う事に気付いたため『こっそり』大型車両を借りて、『こっそり』現場まで乗りつけたのである。
 あくまで『こっそり』だ。問題無い。皆こちらを注目していないし。
「じゃあ行くっスよ!」
 その『こっそり』の宣言に周囲がぎょっと振り返る。
「いっけー! タイタンストンパー!!」

「「「「ちょ、おまっ!?」」」」

 果たして複数人からなる突っ込みは間に合わなかった。

 ずずぅううん!!

 激しい衝撃と共に大地が強く震え、そうすると当然であるが桜たちを含む多くの地に足を付けている者たちは足元を掬われて────

 何もかもが盛大にすっころんだ。

「ぐっれいとぉーーー! 絶好調っスね! さすがはあたしっス!」
 確かに戦果だけ見れば周囲数十メートルに渡り、木々が根っこを地表に露出させて転倒している風景を生み出したそれは素晴らしいと言えるかもしれない。
 だが、彼女の周りに居たのはもちろんそれだけではない。

「ぶ、ぶえぇええっくしゅん!」
「う、うわぁあああ!? 痒っ! めっちゃ痒っ!!」
「目がぁあああ。目がぁああああ!?」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!!」

 彼女作のこのバリアシステム。
 『転倒するだけで破れる』ような脆いものであることは彼女も当然把握している。
「あ、あるぇ?」
 敵味方に絶大な被害を出した被疑者の腕を慌てて駆けつけてきた浄化・回復部隊ががっちり掴む。
「え、あ、こ、これはっスね。ほら、何事も失敗は付き物と言いましてね?」
「連行しなさい」
「ゆ、許して欲しいっスぅぅぅうう!?」

 そんなハプニングを巻き起こしつつも、桜前線の回避作戦は一応順調に推移しつつあった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「君は桜前線の方には行かんのかね?」
 ずんどうの中をかき回しながらコック姿の老人がカウンターに座る吸血鬼へと視線を向ける。
「ええ。荒事はそんなに得意ではありませんし、お願いしている事がありますから」
「ニギヤマ氏にかね?」
「そんなところです。それに、なんか悪い予感がしまして」
「悪い予感のぅ」
 味見をしつつ視線を虚空へ向けるスガワラ老。
「そんなもん、いつも通りではないかね?」
「そうとも言いますが。それにしても何か妙なんですよ」
「妙と言うと?」
「言葉にできません」
 ふむ、と老人は鼻を鳴らす。普通ならば訝しげな視線を向ける所だろうが、少なからず荒事に携わる者の感覚というものが一概に馬鹿にしてもよい物ではない事は彼もよく知っているのだろう。
「少なからず違和感を覚えている者は少なくないじゃろうなぁ。じゃが、ターミナルで起こる事に普通も異常も無い。それを言えるほど儂らはこの世界を知らん」
「その通りではあるんですけどね。いや、考えすぎならホント、越した事は無いんですが」

 ────その時だった。

 びぃぃいいうぅぅうううおおおおおおおおおおおおお!!!

 台風の日等に聞くであろう強烈な風が外を走り抜けていく音に二人は顔を上げた。

「随分と強い風ですね」
「……」
 ヨンの言葉にスガワラ老はしわだらけの顔を更に歪めて
「サンドラ君」
「はい。南風です」
 何時の間に現れたのか彼女はヨンの後ろに立って険しい顔をする。
「図書館の気密は確保しました。入りこんだ花粉がどの程度かは分かりませんが、大きな影響は見受けられません」
「南風ですって?」
「クロスロード中で軽微な影響がみられるようです」
 突然の突風が花粉を運んできたのだろうが、それにしても
「さっきの風、強すぎましたよね」
「はい。おおよそですが風速32m。花粉被害の前に歩いていた人達が転倒する騒ぎが起きているようです」
「っ……!」
 思わず立ち上がるヨンだが「待ちたまえ」とスガワラ老が制する。
「今外に飛び出しても花粉でのたうちまわるだけじゃよ」
「ですが……!」
「ずっと居ろとは言わん。舞っている花粉が落ち着くくらいはここにおれ」
「それが妥当だと思います。それから、ニギヤマ氏から」
 サンドラの言葉に視線を向ける。
「花粉について、魔法学に基づいた改変の形跡を発見したと」
「……それは!?」
 思い出されるのは先日起きたナニカの大量発生。
「断言はできないと。そもそも怪物の中には無人兵器等の元々作り手が居なければおかしい物も存在します。『もう一つの塔』の仮説から見れば何処かの世界で品種改良されこの世界に怪物として招かれた可能性も否定できません」
 『もう一つの塔』とはクロスロードの中央にある『扉の塔』が来訪者達を迎えるゲートだとすれば、怪物をこの世界へ迎えるゲートであるもう一つの塔があり、違う塔から出てきているために扉の付与能力である言語の共通化が図れないというものだ。
「ともあれ、こうなっては対策は雨を待つか、北からの風に期待するしかありません」
「……でも、それじゃ!?」
「駄目でしょうね。前線部隊のバリアがこの突風に対して性能を維持できる事を期待するばかりですが」

 びぃぃいいううううぅうううおおおおお!

「こうも突風が続けば姿勢を維持する事も至難でしょう。危険ですね」
「……っ!」

 なにか方策は?! それ以上にこの風は一体!?

 心中を荒れ狂うその問いかけの答えは南砦で確認されつつあった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「……っ」
 咄嗟に姿勢を低くして、突風の影響から何とか逃れたアインは自分の体を守っているバリアがまだ維持されている事を確認する。
 前線に赴き武器を振っていた彼女は派手に転倒する敵味方。その背後にある強大な気配に顔を上げた。
 ────その視線の先。半透明のなにかが見えた。

「っ!」
 バリアの数は当然多くない。風術師の制御に花粉防御を任せていた南砦の面々は突然の突風に虚を突かれ、大混乱に陥っていた。
「っくしゅん! 迎撃組に浄化を!」
 体中が痒く、目も辛い。クネスは涙に滲む視界で南の方を見る。
「っ、あれ……」
 近くに居た風霊術師ににじり寄り、ゆすり起こす。
「あれ、なにか判る?!」
「っくしゅ。あ、あう」
 精霊使いの女の子は目をぐしぐしとしながらも必死に目を開けてそれを凝視する。
「あ、あんなの見た事ないですけど……恐らく精霊です。っくしゅ。か、風の。
 でも……強力すぎますし……うぅ。ゆ、歪んでいる」
「歪む?」
 狂った精霊。その本質を歪め、自然の存在でありながら自然を打ち壊すようになった者をそう称することもあると聞くが……
「クネスさん。大丈夫っスか?!」
 駆け寄ってくるのは南砦でお説教を受けていたトーマだ。彼女自身は先ほどまで前線に居たのでバリアを持っていたのだろう。
「これ、バリアっス」
「浄化が使える子に先に回しなさい。状況を復旧させないとまずいわ!」
「そ、そうっスね。じゃあこれと数個渡すんで配るの手伝って欲しいっス!」
 そう言われたら受け取らざるを得ない。だが花粉の影響を振りはらわないと歩くのもキツイ。
「ラスボスの登場ってやつっスかね」
「だったらさっさと倒さないとね……!」

 対桜前線は最終局面を迎える。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 ……
 ……
   ……

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
つーわけで神衣舞です。GW中は遊び惚けているので若干更新が遅いです。サーセン。
というわけでおまたせしました。桜前線です。
次回が決戦回となります。張り切ってリアクションお願いします。

ちなみにバリアシステムについてはPCはなんだかんだで得られるという方向で構いません。また精霊については神霊級です。精霊が強大になって神様の域に踏み込んだって奴ですね。

 というわけでリアクションよろしゅー。
舞散るは花の
(2011/05/16)
「さて」
 対非実体との戦闘マニュアル───照合なし。
 当たり前である。しかしスティルは落胆する事無く目の前の暴風を見上げた。
「……貴方も戦うの?」
 横に並んだのは先ほどまで収集作業を共にしていたアインだった。
「丁度良いです。あれをどうにかする方法を教えてください」
 ポリゴンロボの問いかけに無表情な少女はわずかにかぶりを振った。
「……相手に、実体が無いなら……私には何もできない」
「そうですか。では?」
「囮。……それに、トレントは追い払わないといけない」
「ごもっともです」
 同じく、対精霊攻撃を持っていない前衛は手当たり次第にトレントへの攻撃を再開していた。一方で非実体への攻撃手段を持つ者は攻撃を開始してはいるものの、その全容すら把握できない暴風にどれだけ通用しているのかさっぱりだ。
 スティルは己が道を示すように言葉を紡ぐ。
「直撃を受けなければ、囮にはなりましょう。
 静観するのは埒が明かないので時間稼ぎを行います。
 私が捕まるのが早いか、それとも他の方がどうにかするのが早いか────」
 ぐっと足に力を込めて、スティルは身を前へ。
「────意を持ち、志を以て対処しましょうか」
 アインがトレントへ接近、傷つけるのを開始したと同時にスティルは一直線に暴風へと飛び込む。
「……妙な機械」
 己の無感動を自覚する少女は自分よりも人間臭い事を言うロボを横目に大鎌を振り上げた。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「どーするんスか! あんなデカブツ!!」
 さて、ポリゴンロボが信頼を告げた後方では、トーマがそんな悲鳴を上げていた。
「い、いやいやいやいや。こういう時こそ天才の出番っスよ! 退くな!あたし!
 デブでもはげでもとにかくパトロンをゲットするチャンスなのだわっ!」
「ほんとに落ち着きなさいよ」
 苦笑を浮かべてクネスがトーマの頭をぽむと叩く。
「お、おおおおちおちおちついてるっスよクネっさん!」
「クネっさんって……」
 こうなると呆れるしかない。
 クネスは前方に広がる光景に改めて目を向ける。
 ハリケーン。そうとしか見えない大気の渦に花びらも土埃もなにもかもが一緒くたに巻き込まれ揉まれている。不用意に近づけたそのまま飲まれて大空に放り出されるに違いない。
「これは困ったわね」
 予想はしていたが、まさかこれほどとは思わなかった。これではフィールドモンスタークラスではないか。
「残ってるバリアは?」
「もう全部配ったっスよ! からっけつっス!」
「そう……」
 当然花粉も花びらもここまで届いている。バリアを持つか、自分で風を操れない者はくしゃみに苛まれながら酔っぱらっていることだろう。
「おひょうっ!」
 混乱の余り奇声を発している発明娘はとりあえず置いておくとして。
「無事な人達はすぐに前衛のフォローを!」
「駄目です。暴風のせいで矢弾が……!」
 立っているのも難しいほどの風が時折吹く中だ。弾などまっすぐ飛ぶはずもない。下手に撃てばそんな中で奮戦している前衛部隊を後ろから撃つ事になりかねない。
「っ! そうっス! これ! バリアコーティング弾っス!!」
 ふいにシャキンと立ち上がったトーマがカバンからごそりと弾丸を取り出す。
「こいつなら風を切り裂いて飛ぶっスよ!」
「何発あるの?」
「う……け、結構バリアシステムに転用したっスからね……。30あるかどうか」
 あの狂った精霊に対し、たった30でどうにかなる物か? 
「一応純エネルギー系魔術は届きますが……風を使う術は届く前に支配下に捕らわれてしまいます」
 近くに居た魔術師がそんな事を言ってくる。
「あ、あとこれがあるっす」
 ごろりと出てきたのは弾丸というよりも砲弾と言うべきサイズの弾」
「……武装列車、近くに停めているのよね?」
「確かそう聞いてるっス」
「……対精霊系の魔術か道具を持ってる子は居ない!?」
 クネスの声に反応は無い。ダメかと舌打ちをした瞬間
「あるぞ。コボルト銀の対精霊剣だ」
 目を真っ赤にしてゼイゼイと荒い息を吐く男がそれを杖に歩み寄ってくる。
「単なるコレクションに過ぎん……ゴミだ。どうにでも使ってくれ」
「トーマさん。これ、弾丸に加工できる?」
「ちょ、すぐには……!」
「溶かして弾丸にコーティングするなら?」
「それなりの熱量があれば」
「なら、私が何とかする」
「俺もだ」
 名乗り出た二人の術師がふらつきながらも地面に練成陣を引く。どうやら仙術使いのようだ。描かれた八卦炉陣の中央でぼっと炎が点った。
「そこに投げ込め。長くは持たん」
「わかったっス」
 ぽいと剣をそこに突っ込むと一体何℃あるのか、剣はあっさりと溶けて行く。それはまるでスライムのようにうねり、弾丸へと絡みついた。
「これで、どうだ」
「後は、お願いね」
 気力を使い果たしたらしい。花粉か、花びらかどちらのせいは分からないが、真っ赤な顔をした二人はそのまま崩れ落ちる。
「トーマさん。武装列車に行くわよ」
「分かったっス! あ、この余りのコーティング弾は誰かあれにぶち込んでおいてほしいっス!」
 バリアを確保していた数人の銃師がそれを受け取って構えをとる。
 それを背に二人は走り出した。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 その少女は暴風の中をふわりふわりと浮いていた。
「ずっと関係ないって傍観してるつもりだったけれど、この状況……同じ精霊として見過ごすわけにはいかないわね」 
 帽子とスカートをしっかり押さえたまま、精霊の中核へと近づく。
「……聞いて」
 問いかける声。この風が精霊であるならば、ここからの声も届くはずだ。
「どうして貴方は歪んでしまったの?」

 ─────────

「っ!?」

 返ってきたのは声どこの音ではなかった。言葉が変質したわけでもない。完全な異音。意味の欠片すらうかがわせない程の雑音。
「言葉が交わせない程に歪んでいるの?」
 問いかけに応じるは暴風の拳。くすねておいたバリアでは流石に防ぎきれない。ひらりひらりとなんとか避けながらも同じ精霊がただ討伐される様を見ては居られないという思いでもう一度問いかける。
「……返事を聞かせて」
「危ないですよっ!」
 どん、と横からの衝撃に目を白黒させる。思わず離れてしまった帽子をメタリックな腕ががっちりキャッチし、マナを抱えたまま着地する。
「貴方……何をするの」
 ほんの少しだけ顔に出そうになった嫌悪感。精霊に相対する機械に抱きすくめられてると悟ったマナは帽子を奪い取るように取り返すと、ひょいとその腕からも逃れた。
「御存知ないのですか? 怪物とはあらゆるコンタクトが不可能なんですよ?」
「……」
 PBがそれを事実だと肯定する。しかし、と見上げる暴風は猛威の拳を二人に向けていた。
「くっ!」
 バリアの手前、乱暴に突き飛ばすわけにはいかないが、庇うには間に合わない。しかし同時に視界に感あり。
 黒の少女が代わりにとばかりにマナを引っ張って大きく後方に退避する。その直後、地面が抉れるほどの一撃がずんと響きを立てて打ちおろされた。
「説得は……無理」
「無理……」
 耳にこびりつく意味を為さない雑音に反論の意思は揺らぎ、やがてたち消えた。
「助けてくれた事を感謝すべきかしらね」
 幼女と言って差し障りない容姿の少女はやや落胆を込めてそう、言葉を漏らす。
「貴方は貴方のやれる事をしようとしただけです」
「……成功すれば、それはそれで良かった」
 責められると思ったのに、二人はそんな言葉をかけてくる。
 調子が狂うと少女は少しだけ視線を逸らし、そうして暴風の精霊を見上げた。
「最後まで見届けたいわ。怪物でも同胞だもの」
「……もう少し後退」
「ですね。これ以上の前身はなんとか防ぎたい所ですし」
 二人の背をしばらく見つめ、精霊の少女は祈るように怪物となり果てた同胞へと視線を固定した。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「まったく。次から次に奇妙な事が起きますね」
 ヨンは戦場となっている区域から大きく迂回するように暴風の背後へと回り込もうとしていた。
「なんでぇ。祭り騒ぎと楽しめば良いじゃねえか。
 もっとも、この惨状じゃ、今年はちぃと収穫は見込めねぇだろうがな」
 応じた声はただ豪胆。声の一音一音に畏れを詰めたようなびりびりとした何かを圧縮していた。
「っていうか、シュテンさん、何をやってたんですか?」
 この事態、背後に何か居ると踏んだヨンは一人隊列を離れ、背後に回り込もうとしていたのだが……流石に一人は不安ときょろきょろしていたところ、彼に声をかけられたのだ。
「花びらをちょいと集めようとな。あれを集めたらうちの衆が酒を作ってくれんのよ」
 カカと笑い、鬼は恐ろしい脚力で疾走。ヨンは肩につかまりながらも眉根を寄せた。
「あんな物でお酒を……?」
「おう。俺様くらいになるとそこいらの酒じゃ酔うに酔えなくてな。だがよ、この花びらは問答無用で良い気分にしてくれるからな。絶好の品物ってわけよ」
 確かに怪物の死骸をいろいろと再利用することは珍しい話ではない。場合によっては肉を食う事すらある。
「毒を飲むようにしか聞こえませんね……!」
「なに、酒に漬ければなんでも毒は抜けるって相場が決まってるんだよ。んで、どこまで行けば良いんだ?」
「もう少しあっちの方向へ。風を迂回して線路上へ行きたいんです」
「何がある?」
「……勘が外れていなければ何かあると思います」
「面白れえ」
 防毒マスクも付けている事もあるが、何よりも恐ろしい速度が出ているために会話をするのも一苦労だ。
「っ、停まってください」
「おうよ」
 暴風が線路を正面にしてすでに左斜め、クロスロード側に見える。ここまでくると風は緩やかだった。恐らく精霊はただクロスロード方面へとその猛威を突き付けているためだろう。
 ヨンは用意していた双眼鏡を手に線路上を舐めるように見渡す。
「なんでぃ、あのオッサン」
 が、それより先にシュテンがその人影を見つける。
「あれは……人?」
「ああ、そう見えるな。馬鹿笑いしてやがっぞ?」
 双眼鏡の先、そこには細面の男がクロスロードの方を見て馬鹿笑いをしていた。腹を抱えて笑っているわけではない。そこには『笑い』ではなくただ『狂気』があった。
「気味の悪い奴だな。凶鳥の鳴き声にそっくりだ」
「あれが、元凶でしょうかね」
「知らねえが、気に食わねえな。叩き潰すか?」
 どうするべきか。ここには妖怪種の首領を辞任する鬼が居る。戦力としては申し分ないだろう。
「……やりましょう。どう考えてもあんなところにまっとうな人が居るはずがない」
 ここは踏み込むべきだと判断したヨンがそう呟いた瞬間。

 ぎょろりとその男の首がヨンを見据えた。

「っ!?」

 ぞくりと走る悪寒。その瞬間、シュテンが大きく後ろに走っていた。
「シュテンさん!?」
「やめとけ。あれは触って楽しいもんじゃねえ」
 恐ろしい言葉を聞いた。百鬼夜行を引き連れ、それを襲う対魔師の集団を嬉々として迎い討った鬼の吐く言葉ではない。
「で、でも、あいつを何とかしないと!」
「だが俺たちじゃ無理だ。イバラギのやつが……いや、奴が居てもどうだか。
 とにかくあれ以上踏み込んじゃならねえ。あれは見た目なんかガン無視してやべえぞ」
 それは、ヨンも十分に感じた。
 あれは狂気だ。純粋な狂気だった。あのままあの男の顔を見ているだけでこちらが発狂しかねないほどの狂気。その狂った言葉が形をとって出てきた悪夢だ。
「どうすりゃ良いかわかんねえが。風のをブチ飛ばした方が百倍マシだぜ」
「……まったく、どうして私はああいうのばかり会うんでしょうかね」
「カカ、楽しいじゃねえか。平坦な人生よりもな」
「遠慮したいですね。しかし」
 どうした物か。ヨンは少しも出てこない対策と、思い出される狂気に難儀しながら速度を背に流した。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「準備おっけーっス!」
 武装列車がその鈍重で巨大な砲塔を精霊へと向けた。今あの下では多くの戦士がカツカツの戦いを繰り広げている事だろう。
「コア部位の情報来ました。標準に転送します」
 武装列車のオペレータからの声。標準に補正が入り、暴風に一点のポイントが付いた。
「そいつは空気抵抗にも強いっスからね。下降修正は入れなくて良いっス!」
「って、トーマさんが撃ちなさいよ。あたし魔法使いよ?」
「動力系の制御代わってくれるんならやるっスよ!」
「無理ね。もう、こういう役割は御免なんだけど」
 武装列車のスタッフも暴風に押し込まれた花粉と花びらにほとんど壊滅しており、まともに動けるのは1人だけだという有様だ。
「外れても恨みっこなしだからね」
 言い放って標準を中央へ。
「当たりなさいっ!」

 豪砲一発。

 車体をぐんと揺らした一撃は空気を切り裂く音すら忘れて精霊の巨体へと吸い込まれ。

 そして消えた。

「やったっスか!?」
「そこ、フラグ立てないっ!」
 すかさず不穏当なセリフを吐くトーマにツッコミを入れつつ標準の先を覗きこむ。
「……風、弱まってます」
 武装列車のオペレータの声。そして周囲からのざわめき、そして歓声。
「ほら、やったっスよ!」
 ひゃっほーいと喜ぶトーマにクネスはようやく安堵の吐息を吐いたのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

「随分な被害だね」
 南砦管理官、イルフィナ・クォンクースは苦笑と共に報告書をテーブルに投げやった。
「それとも、あんなのが出てきてこの程度で済んだ、と言うべきかな」
 怪物の特性からか、死者は皆無。負傷者は千単位にのぼり、特に不意に花粉の爆撃を受ける事になったクロスロードでは不慮の事故が多発していた。
「それよりも……移動するフィールドモンスター級怪物、か」
 実際はアンチ武器を受けたとしても1撃で撃墜されたということだからそこまでの力は無かったのだろう。フィールドモンスター特有のフィールドも確認されていない。あの暴風圏がそうだと言えばまた認識も違うだろうが。
「なんにせよ、次から次に妙な事が起こる。まだ4の月だと言うのになぁ」
 青年は目を細め、戦勝祝いに湧く南砦広場を見下ろしたのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 ……
 ……クシッ……ツギ……ハ。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
すっごーーーーーーーーーーーーーーーーーい。遅れてすみません。一週間かよ。あふん。
ども、神衣舞です。これにて今年のお花見は終了となります。
花びらも花粉も散々吹き飛ばされたのであとは丸裸のトレントを適当に蹴散らして終わりと言う感じですね。
さて、妙な連中がうろうろし始めました。今年はどうなるやら。
なにはともあれお疲れ様でしたー☆
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