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【inv17】『物騒な夏の風物詩』
物騒な夏の風物詩
(2011/08/14)

「この先ですね」
 音を立てないように気をつけてはいるが、すでにここは反乱コアのエリア内。その全ての植物は彼女?らの感覚器と言える。
 しかし目に見えた攻撃が全くないのはやはり彼女らもそれどころではないのだろうか。
 そんな事を思いつつヨンは静かに視界を遮る枝葉をそっと持ちあげた。
「……西瓜」
 ひょいと身をかがめたアインがその先を眺め見る。
 確かに西瓜だ。木々が排除されたやや広めの空間にびっしりと西瓜が生っている。
 地球世界基準で言う西瓜との差異はもちろん手足があること。それからジャック・ランタンのように顔にも見える模様がある事だ。
 そして何よりバスケットボールサイズに育った西瓜が急にじたばたと暴れ出し、幹から離脱。ざっざと歩き始める事にある。
「このような場所がいくつもあると言う事でしょうか?」
 西瓜の生産推測点を尋ねたヨンが得た回答。それはコピーコアのエリアに数か所存在するようだという回答だった。
 コピーコアにはオリジナルコアのような中心存在が居ない。それぞれがオリジナルの座を得るために抵抗活動を続けているというのが実情である。そのおかげで森を二つに割っての全面戦争という事態は今のところ心配しなくて良いとのこと。
「誰かが始めた西瓜兵を他のコピーコアが真似し始め、それが広がった上で命令を聞かなくなったと言う事ですね。それにしても……」
 西瓜兵畑の周辺の光景にヨンは眉根をひそめる。
「枯れてる」
 アインが心情を言語化した。物凄勢いで量産される西瓜が容赦なく養分を吸い取っているのだろう。周囲の食人植物達が総じて干からび気味なのである。
「道理で抵抗が少ないわけですね。
 さて、殴りこみますか」
「いや、あの数の西瓜を相手にするのはちょっと……」
 あの西瓜兵。耐久度はそんなにないのは確認済みだ。剣で叩けばさくりと割れる。
 が、この森の植物故に火への耐性はそこそこあるので焼き討ちは効果的でないし、手には成長とともに生成される槍のような物を持っているため、下手に手を出して囲まれると非常にまずい。
「それに、仮に全滅させたとして、今度は大人しくなっている周りが攻撃してきそうですしね」
「なるほど。つまりそこまでが敵なんですね」
 キランと目を光らせたポリゴンロボを二人の残念そうな視線が貫いた。
「……で、どうする?」
「とりあえずいくつか回ってみましょう。
 観察だけなら問題なさそうですし」
「……状況分析、了解」
「ふむ。決戦は後日ですね」
 頷き合い(一人方向性が違うが)一行はそっとその場を離れたのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

『やぁ(=ω=)ノ』
 巨大饅頭は体表面にナニカをそう配置して挨拶した。
「こんにちは。ちょっと聞きたい事があるんだけど」
『なんだ?』
「西瓜とどうしてやり合ってるわけ?」
 率直に訪ねたクネスに巨大ナニカは(=ω=)という顔をして……いやまぁ、いつも通りなのだが、そんな感じで哲学的ななにかを表現したつもりになりつつゆっくりとナニカの配置を変更。
『丸いから、だ』
「……は?」
『ヤツらにそーぐーし』
『戻ってきた』
『100匹にききました』
「……結構戻ってきてるのね」
『どうしてあいつらが』
『きらいですか?』
 よくわからないが、ドラムロール。
『第一位』
『丸いから』
『100票』 
「全部じゃないっ!?」
『うむ』
 ほんの少しだけ=ω=が上下。頷いたらしい。
「じゃあ、あなたが攻撃を指示してるわけ?」
『してないあるよ』
 帰って来た返事は否定。
『100m以上は』
『命令とどかない』
『でもまるいから』
『しかたないね』
 きゅっと眉根を寄せる。何が何だかさっぱりわからない。
「じゃあ、センタ君とも喧嘩するわけ?」
『せんたくん?』
 どうやら知らないらしい。それもそのはず、彼らをクロスロード内に入れるわけにはいかない為、遭遇するとすれば事故のようなものだろう。
「良いわ。忘れて。
 で、彼らを止められないわけ?」
『無理』
『だって』
『まるいもん☆』
 無駄に星マーク造らなくても良いわよとため息。
「……って言うか、しばらくナニカの量産をやめたら?」
『これでも』
『生産量』
『落としてる』
『かんりくみあいな人に』
『おねがいされたから』
「止める事はできないわけ?」
『できない』
『防衛兵器がとまったら』
『困る』
「……で、日にどれだけ造ってるのかしら?」
『日産1000匹』
『その大半が何故か』
『川へれっつらごー』
 そしてあの大惨事ということらしい。
「……面倒ね」
『たいへんだねー』
 人ごとのように記す巨大ナニカをクネスは軽く小突いた。

◆◇◆◇◆◇◆

「報告します」
 管理組合員が書類を片手にぴしりと敬礼。
「西瓜兵が砕けて溶けた水については特に目立った毒性は無し。
 そのまま飲んでも体調に影響は出ないと推測されます。
 ただし種は森の他の種と同様に金属系成分を含んでおり、クロスロード沿岸で発芽が確認されています」
「その芽は?」
「アクアタウンの住民を中心に駆除を行っています。
 幸い西瓜兵はそれほど強くはありませんので目立った問題にはなっていません」
「浄水設備の方はどうかね?」
「フィルターの交換タイミングを増やしていますが種や皮の目詰まりが酷く、供給量に影響が出始めています。
 元々三十万規模の住民に対応できる施設ですので即座に影響がでる事はありません」
 その報告に居並ぶ者ははぁとため息を吐く。
 それは安堵でもあるが、同時に事の厄介さを思ってだ。
 対策までに時間的猶予があるとはいえ、すでにサンロードリバー周辺住民からは甘ったるい臭いに苦情が出ている。西瓜兵はともかく巨大ナニカは管理組合の管轄というところがまた頭が痛いところである。
柵でも張り巡らせたいが、ナニカは饅頭のように伸び縮みする。壁でも立てないとにゅるりとすり抜けてしまうのである。
「ともかく、情報の収集を継続し、川に向かう二つをできるだけ排除。
 その方向で動こう」
「はい」

 騒動はまだ始まったばかりであった。

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にゃふぅうう。神衣舞です。
ちょいお盆休みボケしてます。更新停止してる感じに思えて
ちょい焦ってます(=ω=;
ちゃんと頑張るからねー。みなさんも楽しんでくださいませ☆
ってなわけで、酷い状況が続きます(笑
リアクションよろしゅーーー!

 それにしてももう一つのシナリオ、なにしやう……
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