「やぁっ!」
気合い一閃。パンチがスイカ兵を粉砕する。
続いてもう一発。ばしゅっと水気を含む破砕音とともに果汁や種がそこらかしこに飛散した。
森に単身乗り込み、暴れ回っているのはヨンである。本当は他のメンツを誘って着たかったのだがどうにも見つからず、まあいいやとやってきた彼は西瓜兵を相手に奮戦を続けている。
さてこのスイカ兵。殴ってみると分かるが非常にもろい。
普通の西瓜と比較すればそれなりに硬いが、2m程度の高さから落とすとあっさり割れるくらいの硬度しか持ち合わせていない。その上ずんぐりの丸いボディにちまっとしか手足が生えていないため、動作は鈍く、それなりの数が相手でもいなすのは難しくなかった。
「この調子で行きましょう。って、おや?」
彼が見つけたスイカプラント。その最初のころの光景を思い出し……
「広がってます……ね?」
眺めるそばからにゅるりとツタが伸び、すぐに花が咲き、ぷっくりとした実をつけて行くまでざっと2分程度。
新たに発生したスイカ兵はざっざとヨンを取り囲んでくる。
「……割って散らされた種からですかね?」
いざとなったら氷系の技で根ごとと考えていたのだが、これではキリがない。
「というか、この生え方だと……街の方もかなりまずいのでは?」
その前に、足元が緑と黒の縞模様に埋め尽くされてしまった状態を見て舌打ち。
「そろそろ撤退しますかね」
幸いと言うべきか。コピーコアも食人植物も元気がなく襲ってはこない。
足元のスイカ兵を蹴飛ばしながらヨンは脱出を試み始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふむふむ」
一方の森の片隅ではポリゴンロボがスイカ兵の動きをつぶさに観察していた。
彼らは独立して歩き始めると20匹くらい集まるのを待って一路北へと進軍を開始していた。しばらくすると全ての実が兵士となって何処かへと去り、後には枯れたプラントが残るばかりだった。
「……これでは森が枯死するのでは?」
事実彼もわりかしスマートにこの場所までやってくる事が出来た。普通であれば単身で森に飛びこむなど自殺行為である。
場所を移動し、他の集団を発見。するとそこでスイカ兵は突如お互いを砕き始めた。もちろん中身がこぼれ、そして地面に落ちた種からしばらくするとにゅるり芽が出てくる。
「……他の植物は止めないんですかね?」
とはいえ、止めるにしても割ってしまえば結果は同じだ。実質手出しができないのだろう。
「数が多いのは大変喜ばしいですが、事態は深刻ですね」
スティルは一人呟いて、さてどうしたものかと小首を傾げるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「報告します!」
管理組合員が慌てた表情で対策本部へと飛び込んできた。
「クロスロード西部川沿いにて大量のスイカ兵発生!
対応が追い付きません!」
「っ! 追加で募集をかけろ! 少なくとも川辺から進ませるな!!」
指揮官の言葉に周囲は一斉に動き始める。
脅威は爆発的に増え始めていた。
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夏休みボケで更新が遅れまくってる神衣舞です。
本日より通常運行に戻しますのでよろしくお願いします☆
というわけで余り進捗しておりませんが、事態はどんどんまずくなっております。
さて、何とかする方法はあるのかないのか。
ではリアクションをお願いします。