前触れ
(2011/12/30)
目の前の光景をそのまま表してみよう。
(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)(=ω=)
びしり、と効果音が付きそうな勢いでナニカ達が整列していた。
モバイルを持った技術者たちが計算した場所へと順次配置しつつ、精霊使いや重機を扱う者が爆発を効果的になるように壁や小さな穴を配置している。
「第十三区画、準備終わりました!」
監督官が声を挙げると周囲の人々がわらっと退避。
( =ω=)
どこか哀愁漂わせるナニカ達と作業者たちの一瞬の視線の交わし合いも、流石に十三回目ともなればツボに入って笑い始める者も居るのはさておいて。
「連続起爆開始!」
(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ(=▽=)アヒャッ
どどどどど、とナニカが連なるように爆発。しかしナニカは二度爆発する。
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あらかじめ構築した壁なんかに跳ね返って再び爆発。盛大に土ほこりを巻き上げる。
「よし、作業班、土砂の除去始めるぞ!」
爆発というのはやったところで土砂が消えるわけではない、あくまで硬い岩盤を緩くして、工事をはかどらせるのが目的だ。滑り込むようにブルドーザーや巨人族が土砂をどかしていく。
「このペースで何とかなるのか?」
ザザの言葉はこの場の多くの者が感じているものだろう。規模や速度からすれば圧倒的に早い。それは言われなくても分かる。たった半日の作業で十数Kuの大地が掘り抜かれているのだから驚異的ともいえる。
だが、サンロードリバーの川幅は4kmほど。その水を迂回させるほどの水路を作る事を前提とする限り、どうしても早いとは思えないのだろう。
「そこは上流組の腕の見せ所次第でしょうね」
Ke=iが機器の調整をしながら応じる。
「何かあるのか?」
「上流はアースさんがガンガンやってるみたいよ」
東砦管理官にして通称『英雄』。土の操作にかけてはクロスロードで比類ないと言われている女性であり、それはそのまま集団戦防御のエキスパートである事を示していた。
「なるほどな……。
とは言え悠長にして良いわけでもないんだろうな」
「当然よ。押し寄せてくる水は中途半端な堤防なんかじゃかえって津波化して防壁すら乗り越えてくるわ。そうなったらサンロードリバー周辺は完全に押し流されるわね。
しかも西側の防壁が堰になってクロスロード内に水がたまる事になるわ」
「……おっかねえな」
「今まで治水工事をしようとしなかった事自体が不思議なんだけど……
それは仕方ないわね。なにしろクロスロードができてまだ数年。そんなところまで手が回らなかったっていうのが本音でしょうし」
「だろうな。
ともあれ作業が終わるまで何とかなってくれればいいんだが」
そう呟いたザザの胸中にはロクでもない不安が過ぎる。
と─────
「ほれ、気合いで食えるだろう?
うどんだぞ? 食いたいんだろ?」
そんな感傷をブチ壊すような声に二人は視線を向ける。
見ればマオウとかいう男が湯気の立つどんぶりをぐいぐいと巨大ナニカに押しつけていた。
「キサマは気合いで食べれると言ったな。よし、見せてみろ」
『おおぅ』
その瞬間
ぎゅむり
「うぉっ!?」
ねじれるような音がしたかと思うと、巨大ナニカにぽっかり穴が開いて、そこにドンブリとマオウの腕が入り込み
ぎゅむ
再び戻ってロック。
「こ、こら、私の腕まで捕まえてどうする!?」
『ええと』
表情(?)は変えぬまま、巨大ナニカはナニカ文字を示す。
『オレサマ、オマエ、マルカジリ』
「齧るなぁあああ!!」
「……平和だな」
「平和ね」
このまま何事もなく過ぎれば良いのにと二人はおもうほかなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その光景は壮観の一言に尽きた。
数多のゴーレムが一斉に立ち上がり、移動し、壁として土くれに戻る。
エンドレスの光景はしかし大地に明確な印を残していた。
「圧巻ね」
クネスの言葉にアースは苦笑にも似た笑みをこぼす。
ターミナルにおける「力量」は主に3つの原則で成立すると言われている。
簡単にいえば「元の世界での強さ」、「ターミナルの在籍年数」、「ターミナルでの経験値」の3項目だ。東砦管理官である彼女は2番と3番については恐らく申し分ないだろう。
さらにここに関わってくるのが種族と世界だ。例えば水の精霊は当然のように水の分野には強くなるし、神族は基本ルールを超えて、己の司る性質を強く発露することがある。
だがアースは人間種。しかし土の精霊種や大地系の神族を退けて圧倒的な大地操作の技量を見せつけている。
その事に対する称賛は、しかし苦笑でしか返せない事にクネスは目を細めた。
「ねえ。これって陽動って事、ないかしら?」
「あるでしょうね」
アースはクネスの問いかけになんでもないように応じる。
「だからと言って対処しないわけにはいきません。
陽動としては適切な手です」
「……罠と分かっていても対処せざるを得ない、か。
タチの悪いやり方ね」
「兵法では上策ですけどね。無視して良い策は無視されれば仕掛けた方の労力の無駄で終わりますから」
「で、まぁ。あの怪物が兵法なんてのを使うのが最大の問題なのよね」
考えすぎならば問題は無い。しかしどう間違っても水を堰き止めるような行為を偶然と言えるのだろうか。
「でも、クロスロードの陣容は過去にくらべるもなく強固です。
ここに集った者はここでの仕事に集中すべきです」
「ごもっともだわ」
英雄と称される女性のから視線を外し、周囲への警戒に戻ったクネスは、遥かかなたに人影を見た。
あんなところまで独立して見回りに行っている者は居ただろうか?
或いは、堰を監視している者が交替のために戻ってきたのだろうか?
そう考えつつ眺めていると、そのシルエットに妙な既視感を得る。
「……アルカちゃん?」
そんなはずは無いと思いつつ、唇からこぼれた言葉。
それは誰の耳にも届くことなく、そのシルエットも陽炎のように消え去っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……ヨンさん。また何かしたの?」
「し、心外ですねっ!?」
少しどもったのはそう言われても仕方ないという自覚があるからか。
泡を食ったように砦に飛び込んできたヨンにばったり会ったアインは「何やらかしたんですかこの人は」的な何か悟った視線を淡々と突きつけてみたりしている。
「厄介な物を見たから知らせに来たんですよ!」
「……で、今度は何?」
「今度は、は不要です!
……何と言いますが、食べまくっている怪物です」
「……?」
まぁ、確かにわけがわからないだろう。正直ヨンだって理解しているわけではないのだ。
「怪物を捕食している怪物がいうたということです。
それ以上は私にもさっぱり……。とにかく全力で逃げてきましたから……」
「……大きさは?」
「巨人族とかそういうレベルでしたね。
目測でですけど、10m以上はあるかと」
「……それが、怪物と共食いしてた?」
「ええ、そのように思えました。それから、……クロスロード方面へ歩き始めたんです。
かなり歩みは遅かったのですが、遅かれ早かれここに来るだろうと……」
「気になる情報だね」
声は三人目の者。見れば青髪の青年が真横に立っていた。
南砦管理官、イルフィナ・クォンクースその人である。
「その情報が事実ならば偵察隊の一つでも出さなければならないのだが……
一つ気になる事があるんだ」
危機感を感じない、世間話のような言いようで彼は言葉をつなぐ。
「南側には現在かなりの探索者が防衛任務に出向いている。
しかしそんな巨体を見たという報告は君が初めてだ。
今日現れたと仮定しても、二人や三人、同じ一報を入れてきても良いと思わないかい?」
そう言われては口ごもってしまう。何しろヨンは走ったとはいえ徒歩でここまで来たのだ。駆動機を持った人と速度は比べるまでもない。
「それは……」
「……ヨンさんだから」
アインがさも当然のように言葉を継いだ。
「え?」
「……ヨンさんは地雷を踏むのが得意だから」
「なるほど」
「ちょ、そこ、納得しないでくださいよっ!
いや、信じるなとは言いませんけど、そう言う理由で良いんですか!?」
「聞けば君、妙な事に巻き込まれる性質を持っているらしいからね。
たまにいるのだよ。そう言う人物が。いや、ここに来る者は少なからずそういう性質を持っているものだけど」
イルフィナの言葉に心当たりが無いとは言わない。少なくとも冒険者としてある程度の名を馳せるには効率の良く、そして生き残れるレベルの問題に立ち向かう必要がある。多くの冒険者はそういう冒険に巡り合えずにやがてまっとうな職に就いたり、裏道のごろつき兼護衛に収まったりするものだ。
また、一般人からしてもなんらかに巻き込まれなければこの地に来て、しかも居座るようなことはしないだろう、
「その中でも特に異質な『ヒーロー』という種族をまとめている君の言だ。
無碍にはしないよ」
「……な、何か納得いきませんが、とりあえず信じてもらえて何よりです」
「しかし、困ったね」
イルフィナは東の方を見やりながら髭も生えていない顎をさする。
「私は今から東砦に向かうところだったんだ。
つまりここの指揮官は不在となるわけだ」
「こんな時期にですか?」
もちろん堰の話はヨンも知っている。が、南砦というのはこれまでクロスロードの外門としてあり続けた要所だ。冬という不安定な時期にそこの指揮官が席をはずすというのはいささか不可解だ。
「流石に数十万トンの水をアースだけに何とかしろと言うわけにもいかなくてね。
私はあくまで保険ではあるのだが……。うん、まぁ一人暇人が居るからそいつをここに派遣するとしよう。その巨人は1匹なのだね?」
「……私が見た限りでは」
「ならばよろしい。応用の利かないバカだが、ことタイマンについては信頼が置けるからね」
うんうんとうなずいて、それから彼は襟章を外す。
「というわけで彼の管理を含めて、しばらくこの砦を預かっておいてくれ」
「……は?」
目を丸くするヨンに彼はひょいと襟章を放って寄こす。それはあまり知られては居ないがこの砦の管理官を示す物だ。
「ちょ、本気ですか!?」
「本気だとも。君ならそこそこ有名だし、人を率いる事も慣れているだろう?
水の件が片付いたらすぐ戻ってくる。それまでの間さ。
子細はこの砦の担当官に聞けばいいしね。なに、管理官の仕事なんてハンコつく以外は、有事の際に偉そうに命令しとけばいいのさ」
聞く人に聞かれれば大目玉食らいそうな事を軽く言って彼はくるりと背を向ける。
「……で、暇人って誰?」
人ごとのように様相をうかがっていたアインの問いに「そうだった」とイルフィナは首だけで振りむいた。
「セイ・アレイ。西砦管理官の突撃バカさ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
新暦3年12の月末日。
「衛星都市より連絡が入りました!
多数の『怪物』を確認っ!」
「多数だと? どの程度なのだ」
「それが……測定不能だそうです。
明らかに……大襲撃級……っ!」
この一報はすぐにクロスロード、大迷宮都市や四方砦へと伝えられることになる。
三度目の大襲撃。
その幕が今上がろうとしていた。
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おもにこうなったのはヨンさんのせいです。ええ(笑顔
ども、神衣舞です。
大襲撃はじめました☆
というわけでinv19はこれにて終了
続きは次のシナリオとなります。
三度目の大襲撃は怖いぞー。まぁ、怖い理由も誰かさんがフラグを起動させたせいなんですけどね。ええ。うひひひ