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【inv20】死闘
死闘
(2012/02/23)

「……」
 列車を降りたアインはクロスロード方面へと向かう車両を眺め見る。
 多くの者達がクロスロードへと流れていく。それは衛星都市に根を張ろうとした『住民』たちの姿だ。
 せっかく得た土地はあっさりと無に帰していく。そこに物悲しさを感じてアインは彼らが離れた地、はるか南へと視線を向ける。
 こんな事があっても、この戦いが終われば、来訪者達は再びその土地を奪いに行くのだろう。今度は奪わせまいと多くの力を注ぐのだろう。
 不毛とも言える行為はどうしてか必然のように思えた。
「奇妙な話……」
 結果だけ見れば衛星都市が生まれてからの二年間は無に帰し、無駄であったと言える。
 しかしその経過は時間に刻まれ、その傷をいずれ誰かが手がかりにして進むのだろうと、南の方を見つめ続ける人々の視線が物語っているようで。
「おう、あんたがアインか?」
 突然掛けられた声に振り返れば、そこには気の良さそうな、しかし屈強である男が立っていた。
「話は聞いている。あの吸血鬼は随分面白い場所に居るようだな」
「……巻き込まれ人生」
「探索者としては最良の性質だな。わずかなりともそう言う性質が無ければ夢破れるだけさ」
 辛辣のようで、いつも通りのやや無感情な言葉をヨルムは良いと受け入れた。
「……そういうもの?」
「そういうもんさ。もっとも、そこで死んじまったら意味は無いがな。
 さて、届け物ってのは?」
「これ」
 アインが差し出したのは一枚のカード。
「……これがあの部屋のカギ、か」
「どういうもの、なの?」
「わからんさ。少し先も見えないこの世界。信じられるのは踏破した先だけだ」
「……そう」
 ならば、と振り返る。
 今はクロスロードへと避難せざるを得ない彼らも、一度はそこまで足を届かせたのだ。
 詰まる所、もはやそこは既知の世界で、取り返すこともできる場所なのだろうと。
「確かに渡した」
「お嬢ちゃんは一緒に行かないのかい?」
 そう言われたアインはしばし沈黙し、「どこに?」と問い返す。
「決まってるさ。ここは大迷宮だからな」
 大迷宮にまつわるカギ。それがアインが届けた物────
 この行動が一体どんな結果を招くのか。それは未だ誰にも分からぬことだった。
 わからないから、彼女は────

 ◆◇◆◇◆◇

「こんなところまで同行して良かったのかしらね?」
 クネスの軽口にルティアは緩く笑みを作る。
「聞きたい事があるんですよね?」
「……ええ。『猫』の正体はわかったわ。で、『狂人』って何者なのかしら?」
 ずっと使われていなかった副組合長のための部屋。
 そこに設えられていたソファーをクネスに勧め、ルティアは簡素な椅子に腰を下ろす。遠慮かとも思ったが、彼女の場合背負う翼のために背もたれのある椅子には座れないのだと気付いて腰を下ろす。
「端的に言えば……この世界における9人のイレギュラーの1人。
 『怪物』の側に属し、災厄をまき散らす性を得た者です」
「9人のイレギュラー……うち4人がさっきPBで通達した人たちってわけ?」
「はい。私、アルカさん、ユイちゃん、そしてフィルさん。
 この4人はクロスロードにある扉の塔に初めて招かれた代行者です」
「初めて? それに代行者って?」
「この地の扉はある日一斉に開かれた。所謂『開かれた日』ですが……
私達はそれに先立ってこの世界に到りました。招かれたと言うべきでしょうか」
今までの常識を覆す言葉にクネスは興味を強く向ける。
「その理由はこの世界の命運を決めるための代理闘争だと認識しています」
「認識、ね。誰かに命じられたとかそういうわけではないのね?」
「はい。ただ我々が『バランスブレイカー』と称すべき武具が用意されていました。
 あるいは『神器』と呼ぶべきでしょうか」
 ルティアは何かを思い出すかのように、瞑目し言葉を整理する。
「しかしそれは私達4人にだけ用意されたものではなかった。
相手側のバランスブレイカーの所持者の一人。それが『狂人』です」
先に語られた事実。遥か南にあるという崩れた塔から現れた代行者の一人。
「本名は知りません。あまりにも純粋に壊れた人間。それが私の印象です。
 まさに『狂人』という名の示す通りに」
「精神的に狂っていると言う事?」
「……彼の狂気はそれを凌駕するような物でした。
神族が有する概念存在性。まさに彼は『狂気』が形を持ったモノです」
想像もつかない。そも狂ったモノが形作るとは如何な状況か。
「それで? 貴方達がここにいると言う事は、勝利したと言う事?」
「暫定的には、というべきでしょう」
 わずかに生んだのは苦笑。
「私達はバランスブレイカーが内包する魔力を用いて彼らを封じることに成功しました」
「倒したわけじゃないのね」
「はい。彼らは思い出したくないほど無茶苦茶な相手でした。有していたバランスブレイカーも、彼ら自身の属性も。純粋な戦いでの決着に見切りをつけ、バランスブレイカーが持つ莫大な魔力その物で押しつぶすように封印したのです。
 そうして一応の勝利を得た私達がクロスロードに戻る頃、それは起きていました」
「……時期的には、死を待つような7日間、かしら?」
 最初の大襲撃。その凄惨な戦いを示す名にルティアは首肯する。
「はい。しかしこの地に戻ってきた私達にはその圧倒的な戦力差に対する手段を持ち合わせていませんでした。
 彼らを見捨てるかどうかの決断を迫られた我々は、しかし救う事を選択しました」
「それが救世主伝説の一幕ってわけね」
「はい。そしてそれは綻びを生みました。彼らを封印する力の一部を呼び戻してしまったがために、」
「そして、今、『狂人』は出てきてしまった、と?」
「しかし封印は未だに続いてはいます。十全の力ではない……そう考えているのですが、『狂人』はそもそも自身で戦うようなタイプではありません」
「やっと本題かしらね」
 クネスの言葉にクスリともせず、ルティアは続ける。
「彼の力は恐らく『狂わせる』事。精神ではなく、その物体の概念そのものを歪め、狂わせ、変質させることにあります。そうして生まれた奇奇怪怪な怪物には苦労させられました」
「それって……怪物を食べる怪物も……?」
 噂の一つを脳裏に浮かべてクネスは眉根を潜めた。
「私達はそう考えています」
「……殺せない、とか無いわよね?」
「正直分かりません。ですが、派遣されたのはセイさんと、ティアロットさんです。
 考えられる限り厄介な事を暴力と知性でどうにかする二人ですから、任せるほか無いでしょう」
「……そう。でも第二、第三の奇怪な怪物を作られかねない状況と言うわけね。
 ……大襲撃の折に一番厄介じゃないかしら?」
「……」
 ルティアはしばしの間を置いて、視線を窓の外へと投げた。
「厄介なのは間違いありません。が、サイコロの出目次第では我々に有利に働く可能性もあります」
「どういう意味?」
「あれは間違うこと無き『狂人』です。敵味方の概念はそれに存在せず、ただ己のやりたいことのためだけに行動する存在です。
 現に最初の彼の行動は数多の怪物を一つにまとめてしまった」
「……一つにまとめるって充分に厄介だと思うんだけど」
「確かにそれはそうでしょう。しかしクロスロードが保有するカードのうち、その状況にとても適した一枚が存在します。
 そのサイズがどうであれ、相手が1つであるならば、セイ・アレイという戦士はどうしようもないほどに強力なのです」
 それはこのターミナルという世界が持つルールに基づいた最適化の一つ。
 そして彼が見つけた細い『成長』の先の姿。
「管理組合副組合長だなんて長ったらしい名前に本当は価値なんてないんです。
 あの時から、私達にできるのはこの地を開こうとする意志と共に歩く事だけなんですから」
 だから、と言葉を継ぐ少女はゆっくりと銀の光をはらむ翼を動かす。
「信じます。その間に私達はすべき事をしましょう」

 ◆◇◆◇◆◇

 町は死につつあった。
 急激に景色がモノクロになったかのように、町は静まり返っている。
 周辺からはオートで行われている銃撃音が今も続いている。しかし町が持つ息遣いは確実に失せていた。
 ここは間もなく終わる。
 わずかに残る者達は、それをどうしようもなく感じていた。
 そんな中、エディは一人走っていた。
「墓参りか?」
 そう口にしながらも、そうとは思えなかった。最早そんな悠長なことをする時間は終わっているはずである。
「ったく……。お?」
 動く者の減ったこの街で、それでも動く者は異様に目立つ。長い後ろ髪を見咎めたエディは進路を変えてそちらへと走る。
 方向は恐らく中央のオアシスだろう。益々嫌な予感に襲われて、エディは歩調を早める。
 植林され、緑の溢れる中央のオアシス。
 いつもは静かながらも人の姿を見る事のできるその場所で、少女は幽霊のように水辺にたたずんでいた。
 そのまま水に飛び込んでもおかしくないような、そんな存在感の無さにエディは息を詰まらせ、
「……」
 彼女は振り返り、困ったような笑みを浮かべた。
「最終便、もう詰みこみ始めているぞ」
「そうですか……」
 気の無い声が静かな水辺に飲まれていく。
「ほんの少しだけ、ここで死のうと思っていました」
 やがて、ユエリアはぽつりと言葉を零す。
「一人でも最後まで戦って……。
 でも、ここから出ていく人たちを見て、それはやめにしたんです」
 言葉にほんのわずか熱がこもるのを感じ、エディは気を緩めた。
「だから少しお別れの挨拶をしていました。
 心配させてしまったでしょうか?」
「あんたもまたクロスロードじゃ英雄の一人だ。同行を気にした野次馬にすぎないさ」
「私が英雄でなく、私達が、でした」
 たった一人生き残った少女は水面にもう一度だけ視線を向ける。
「だから約束してきたんです。例えこの地が再び化け物に変わり果てても……
 私の手で必ず取り戻します、と」
「そりゃ心強い」
 そうして全ての来訪者の居なくなった衛星都市は、静かに呑み込まれ、消えていった。

 ◆◇◆◇◆◇

「試射行くわよ?」
 大迷宮都市からやや衛星都市寄りに特殊な武装列車はとどまっていた。
「どうやら怪物の先兵は衛星都市にとりついたようじゃな」
 ここからでは観測する事も出来ないが、衛星都市からの避難状況と防衛部隊からの報告からまず間違いない推測だろう。
「もう少し早くできていればこれである程度防衛はできたのにね」
「いや、それは無理じゃろ」
 Ke=iの悔しげな言葉にドゥゲストは苦笑を返す。
「こちらと逃げる必要がある身じゃ。それに衛星都市の放棄はかなり前から決まっておったから、一度とりつかれればもう為す術は無い」
「……そっか。まぁでも、意趣返しくらいはしておかないとね」
「装填完了しました!」
「砲身角度よし!」
 ドワーフが射撃の指示をだせと目線をくれるのを見て、Ke=iは頷きを返し

「てぇぇぇええええ!!」

 ずんと、音が全身を震わせる。
 莫大な力を受けて放たれた砲弾はあっという間に視界から消えていく。
ややあって、遥か先に立ち上るのは砲弾にしかけた煙幕の煙だ。
「着弾を確認。精度±10%と推測できます」
 遠距離の確認は自然の映像に頼るほかない。目視確認が可能な約四キロ先丁度に着弾した事を確認した一同はまずは成功と小さな歓声を挙げた。
「よぉし。そうとなれば今持ってきた試作弾は全部プレゼントして帰るぞ!
 巡回班は周囲警戒を怠るな!」
「さて、後は混乱弾がどれだけ効果を持つかかしらね」
「元々狂っておるようなやつらじゃしな。死を恐れぬ者が陥るパニックとはなんじゃろうか」
「我に帰る事じゃない?」
 Ke=iの返しにドゥゲストは目を丸くし、それから「なるほど、確かにそうじゃ」と膝を打つのだった。

 ちなみにこの試射の結果、拡散瑠弾がかなりの戦果を挙げていた事は後日確認されている。

 ◆◇◆◇◆◇

「作戦なぞない。相手の性質はおおよそ分かった。
 わしらのできる事は単純じゃよ」
 銀髪の幼女は何一つ臆することのない声音で言い放った。
『性質と言うと?』
「何の事は無い。自己の拡大じゃろうよ」 
 言っている意味が分からないとザザは巨獣の身で眉根を寄せる。
「ぬしとわしの境界はどこにある?」
『……皮膚か?』
「本当に? 例えば竹という植物は1本1本生えておるようでも地下で繋がっておると言う。物質にあらざる所で繋がっておらんと言えるかの?」
『そう言う難しい事は分からん。が、俺にはそうとしか答えようがない』
「ふむ、その割り切りは美徳よの。
 そう言うならば、あれはその皮膚という境界を持たぬということじゃ」
『つまり?』
「あれに触れた生物はあらゆる条件を無視してあれと同じになる。そういうものじゃろうな」
 つまりは間違ってあれに少しでも触れたならば、ここにこうして居られなかった可能性があると言う事か。
「じゃが討伐だけが目的なれば大した問題にない。むしろ対策さえ見えれば好都合というものじゃ」
「セイの技の事か?」
「然様。ぬしよ、こやつの槍技、ありえぬほどに強力とはおもわなんだか?」
 風に踊るゴシックドレスを緩く抑えながら幼女は問いかける。
『ああ、確かに』
「この世界で強くなるにはシステマチックなルールにのっとる必要がある」
 ティアロットは静かに語る。
「それは一見他の世界と変わらぬようであるが、しかし何かの拍子にそこから外れる可能性のあるものでもある。
 そうして、こやつの槍はそのルールを一つ凌駕した場所にある」
 目の前で、この前と同じようにセイは槍を構えている。
「わしはそれを勝手に『絶の一技』と呼んでおる。
 即ちただ到達点を超えた先に到る事のみを信じて磨く終生付き合うべき技じゃ」
 そこまで語り、ティアロットはある詠唱を行う。
 その力は槍に宿り、そして青年はあまりにも自然に、淀みない動きで槍を突き出す。

 接触───

 前の一撃よりも遥かに早い、可視すらもおぼつかないひと突き。
 それは呆れるほどに莫大な『沼』に最初何一つ影響の無いように見えて、

 ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!

 ごぼりとまず何かが大きく歪み弾ける音が響き

 ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 まるで冗談のように沼が沸騰し、弾け始めた。
『毒か何かでも仕込んだのか?』
「何の変哲もない槍のひと突きじゃよ。
 唯一違うのはあやつがそのひと突きに全てを懸け、そしてその結果を微塵も疑わないだけじゃ」
 予測されているターミナル特有のルールの一つ。自己評価による力の増大はその実、縛りでもあるとされる。
 人間種は空を飛べないし、光の速度では走れない。そういった常識が力を縛るのである。
 だが、それを認識せずに進めばどうなるか。
 その答えがここにある。
「残りはわしがやろう」
 荒れ狂う沼。その前に降り立った少女が始める詠唱はまるで歌のようであった。
 それは滅びた国を歌う物。ザザは沼が赤で作られた幻想の王国に囚われるのを見た。

 詠唱は続き、沼は暴れ狂い、そんな中で美しき王国は崩壊を始める。
 沼を巻き込んで────

「これも絶の一技がひとつなのじゃろうな。
───『終末の詩』」
 解き放たれた最後の言葉。
 赤の王国は崩れ去り、その住民にされた沼もまた共に滅び去る。
 幻想的で、しかし恐ろしい光景が目の前で広がっているのをザザは焼きつけるように見ていた。
『俺も、そこに至れるのか?』
「絶の一技の最初の関門は疑わずに信じる事じゃ。
 故に、それを目の当たりにした者はその先に進む資格を得る。
 できるかできぬかは後はぬし次第じゃよ」

 少女の諭すような言葉の果てに、恐ろしき沼は消え去ったのだった。

 ◆◇◆◇◆◇

「衛星都市が落ちましたか」
 次々と飛び込んでくる情報にヨンは表情を歪めていく。
 打てる手は次々と打っているものの、手ごたえが薄いのがなお焦りを感じさせていた。 
「ルマデアさんからの返事は期待して居なかったものの……他の方も音沙汰なしとは」
 リリーもラビリンス商業組合の顔役という事もあり、忙しいのは間違いないだろう。あるいはヨンの提案にメリットが無いと感じたのかもしれない。大迷宮都市はクロスロードと違うルールで動いている。それは一つの独立であり、彼らにとって勝手な押し付けならともかく、管理組合に助けを求める形をとりたくないのかもしれない。
 そんな事を言っている場合でないというのは無論彼女の事だ、分かっているだろう。
 それでもこれから何度起こるかも分からないこの災害を独力で乗り切れなければあの都市はやがてクロスロードに恭順を示すほか亡くなるのかもしれない。
 早まったかと苦虫をかみつぶし、視線を向ける先では軍隊経験のある将軍や参謀が意見を取り交わしている。ヨンの予想と違い、その話題はは引き際についてに終始している。
 対応などとうに決まっていたのだ。ただただあるだけの力を全力で叩き込む。圧倒的な物量で勝る怪物に対し、できるのは可能な限りの破壊力を永続的に叩きこむことだけである。
 その一方でこの南砦は怪物が殺到すれば維持など到底不可能なのである。衛星都市よりも小さく、防衛能力にも欠けるこの土地を堅守する意味はほぼ皆無である。
「預かった砦を引き払う相談をする羽目になろうとは」
 そう思うと気が重くて仕方ない。が、まだ先の話とは言え戦況が劇的に変わらない限り、それは約束された未来であろう。
 ザザ達は未だ戻らず、大迷宮からの知らせもない。
 自分はここで席を温めておいても良いのかと、そんな気分になってくる。
「ヨン様」
「えっと、代理なんですし、様はやめていただけると……」
 急に呼びかけられて我に返りながらも、そんな事を言うヨンに組合員は苦笑。
「お客様……と言っていいのか分かりませんが」
 どこか戸惑うような言葉。それを先導とするように現れた小柄な影に、部屋にいたすべての者が困惑を浮かべる。
「やほ」
 ひょこっと気軽に手を挙げたのは若草色の髪と真っ赤な猫耳を持つ少女。
「アルカ、さん?」
「にゅ。様子を見に来たにゃ。イルフィナっちが吸血鬼君に席を押し付けたって聞いたしね」
「いえ……」
 ヨンは周囲を見渡し、それからコホンと一つ咳払い。
「皆さん一旦休憩にしましょう。根を詰め過ぎても仕方ない。
 私も……アルカさんと少々話したい事がありますから」
 その言葉に反応に困った面々は助け舟だとばかりに頷き、副管理組合長と公表された少女に軽く挨拶をして出ていってしまった。
 そうして残されたヨンは問う。
「それで……アルルムさん。何の用ですか?」
 警戒を露わにしたヨンを前に笑顔を浮かべた猫娘がより一層笑みを濃くする。
「にふ。ちょっとここを遊びの舞台にさせてもらうだけにゃよ。
 そのご挨拶。
このお祭りをたのしみましょうね? んじゃ」
しゅたっと手を挙げ、少女はこの世界では使い勝手の悪いはずの転移術で消え去ってしまう。
「……」
 頭の痛くなる事ばかりだ。早くイルフィナは戻ってこないものかと嘆息し、ヨンはすべき事を脳裏に巡らせる。
 
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
だぁあ、めちゃ時間掛かって申し訳ない。
というわけで衛星都市の放棄が完了し、使用不能となりました。
現状大迷宮都市までの間で攻撃が繰り返されてはいますが、1週間後には大迷宮都市へ列車を派遣するのは困難になる見通しです。
また、ザザさんは望むのであれば『絶の一技』の習得が可能となります。
これはTRPGルール上自由に作り替えられる技を固定する代わりに、格段に威力を上昇させるものと考えてください。
 望むのであればデータは公開いたします。

 それでは負け戦の続くターミナルの未来をかけて、みなさんのリアクションをお待ちしております。
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