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【inv28】『Vampire hunt』
『Vampire hunt』
(2013/03/01)
「面倒な事態、とは?」
 ルティアの問いかけに、アルカはやれやれと言った感じで1枚の紙を差し出した。
「手配書……? これは……」
「確かに面倒ね」
 横から覗きこんだフィルが腕を組んで嘆息。
「管理組合の設定した『賞金首制度』への問いかけにゃね。これは」
「……本人たちには全くそのつもりは無いでしょうけど……。
 で、どう処理されるつもりなのですか?」
「もちろん管理組合からの付加金は0にゃよ」
「……受理するのですか?」
「今まで受理しなかった事例は無いにゃ。だってあくまでこれは賞金首の看板に紙を張る行為に過ぎないんだから。あちしらは単なる看板」
「ですが……」
「あちしらは司法組織じゃない。あくまであちしらが金額を足すのは管理組合として不都合があるから。金を出す人間は別にいるんだからそこから減額はできないし、もしあちしらが拒否しても金が消えるわけじゃない。そうしたら最後、この賞金首システムとは別の、暗殺者を雇うだけの仕組みが生まれるにゃよ?」
 淡々と述べる猫娘の言葉にルティアは言葉を喉に詰まらせた。
「でも、これを受理してもそう変わらない気がするけど?」
 フィルの問いかけにアルカは「だねぇ」と呟いて頬杖を突く。
「まぁ、彼の言動にもいろいろ火種はあったかもしれないけど、それを爆弾に変えたのは彼女の方という事実もあるわ。
 あと、これを単純受理した場合、律法の翼とHOCがどう出るか分かった物じゃない」
「それに、依頼人がこうも大人数だといつもの方法を使うわけにもいかないしねぇ〜」

「いつものほうほう?」

 空気が固まった。
 猫娘は「あ、やば」という顔をし、酒場の女将は頭を抱える。
「アルカさん、どういうことですか?」
「え、ええとにゃね、ほら、うん、まぁ」
「……」
「アルカ、諦めなさい。
 そうなったルティアが赦してくれるはずが無いわ」
「……金さえ払えばだれでも排除出来ると思ってる馬鹿は裏の部隊使ってさくっと始末したりしてたり☆」
「……」
 部屋の温度がぐんと下がった気がする。
 時間すらも凍りつかせそうな沈黙の後、有翼の少女は悲しげにため息をついた。
「気を使っていただけるのはうれしいですが、私とて子供ではありません。
 負うべき物は負います」
「うん。ごめんね。
 ……ま、その辺りも後で話すにゃよ。それも動かそうと思ってるしねぇ」
 一拍の間を置いてアルカは続ける。
「まー、一つ案はあるんだけどね。
 やっていいものかどうか」
「……もう5年経過しているのよね」
 フィルがポツリ呟く。
「クロスロードの掲げる『無法』は様々な世界、種族に単一の法律が適用できないからだわ。でも、この5年で形成されたルールは確かに存在する」
「……それをいっそ法律にする、ですか?」
「法律と言えばカドが立ちそうだし、今まで管理組合が忌避していた司法権や行政権を持つ事になるわ」
「もうこうなると持っても大きな文句は出ない気もするんだけどね。
 まー、持てば自滅するのが目に見えてるんだけど」
「ええ。何か適切な言葉でもあれば良いのだけどね」
「にふ。あちしもそういうものはそろそろ必要だと思うし、その一例になるんじゃないかなって思ってるにゃ」
「それで、どうするつもりなのですか?」
 ルティアの問いにアルカはにっこりと笑った。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 3の月1日。
 下記の者に賞金が掛けられたが、管理組合としては功労を認める者であるため、賞金を掛ける期間を3日間とし、それを過ぎた場合には以後、管理組合への多大な妨害行為のない限り3年間は賞金を受け付けぬ物とする。
 またその場合、掛けられた賞金は掛けた者へ5割返却とし、残り5割は3日間で発生するであろう被害への補てんとする。
 また、

 これまでになかった文句の添えられた賞金首の告知。
 その対象となったのはHOCの代表にしてクロスロードの多くの(幸薄い)男性に憎悪を向けられる男。ヨンだった。

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 というわけでヨンさんの許可も貰ったのでヨンさんをめぐる熱い戦いをやってみようかなと。
 まぁ、それはついでで、本題は前述の通りクロスロードは転換期を迎えつつありますというお話です。
 参加者の皆さまはヨンを襲う側、守る側、自由に選んで構いません。
 昨年の百鬼夜行祭りの二次会のノリでクロスロード屈指のヤバい連中が乱入してきますので張り切ってまいりましょう。
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