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【inv28】『Vampire hunt』
『Vampire hunt』
(2013/05/14)
「おいおい、嬢ちゃん。
 いきなり割り込んできて随分じゃねえか?」
 クセニアが剣呑な視線と銃口を向ける。それを見ても後ろの騎士は庇うことすらしないのは彼女の防御術を信頼しているからか。そも、儚げな少女然したウルテは全く怯えるそぶりも見せない。
「あの感じならどこにでも、何発でも撃とうが少なくとも致命傷にはならないわけだ。
 良いのか? あんな事されたら面白がって、俺は逆にもっと撃ち込むだけだぞ?」
 嗜虐心を最前面に押し出して彼女は笑う。
「しこたま撃ち込んで町の端から端まで転がすってのも面白そうだな」
 言いながら、空けた左手でサインを出す。言ってはみたが、あんな堅固な防御術を掛けられた今のヨンがそんな事を許すはずが無い。鉄壁の守りを軸にインファイトを続けられれば弾切れの瞬間にこっちが食われる。
 ならばここは退くに限る。何しろ相手は長期支援をしないと言い切ったのだ。ならばクソめんどくさい上にムカつくが、ここは仕切り直すべきだろう。
「俺は自分のしたい事をしているだけ。それも『賞金首』を捕まえるために、猫が毛糸の玉を爪の先で転がすように追い詰めようとしているだけだ」
 トリガーに掛かる指先に力を込める。インファイトも考慮した引き金は重く設定しているため、まだ弾は発射されない。
「探索者の義務を果たそうとするのが悪い事かい?」
「悪くはありません」
 応じる声は涼やかに、しかし凛とした響きを夜気に放つ。
「私達も同じです。したい事をしているだけ。
 彼の手助けをしてはいけないというルールもありませんから」
「……ハッ、正義を語るかと思ったら、とんだ我がまま嬢ちゃんか」
「はい。私は我がままです。法で律する事により。多くの安息の代わりに割りを食う者を見捨てようとしているのですから」
 クロスロードに法が無い最大の理由。それは全ての種族、文化風習に対応できる法律など制定不可能だからである。町中で火を使うなとイフリートに命じるわけにもいかない。争いを禁じると武神を奉じる者をないがしろにする言葉だ。
 どこかに妥協点はあるのだろう。しかし針の目を通すような妥協点だけの法律に何の価値があると言うのか。
 故にこの街にあるルールはたった一つ。
 この街の運営に対し、多大な迷惑を及ぼす行為を避ける事。
 それを破った者に対し、町が対策として行った施策が賞金首制度である。
「それでも、私は唱え続けなければなりません。あの大襲撃の、悪夢のような七日間を再び起こさぬために。秩序ある法が必要なのです、と」
 こいつは参ったとクセニアは舌打ちする。彼女は夢見る少女なんかじゃない。己の行為が引き起こす罪すら見据えて主張をする者だ。
───相手にしてらんねぇな。
 既に半分以上の者をヨンの追跡へと向かわせている。
「チ、ヨンの野郎も逃げちまったし、ここは手を退くぜ」
「……その言葉が嘘でも我々は追いません。ただこの場のみ、彼の我らの主張と、手紙に応じて行動を起こしただけですから」
「そいつはありがたい話だぜ」
 できればやっとこさ追い込んだところで来て欲しくなかったと悪態を吐く。が、恐らくはそのタイミングを見計らったのだろう。随分と前から張られていたのだ。
 彼女らを蹴散らす事も考えたが、追ってこないのであればそれは無駄な浪費だ。クロスロードでも有数な組織の一つ。寄せ集めで何とかするには荷が勝ち過ぎる。
 クセニアは残る協力者に撤収を促しその場を去る。
「あと何枚手札を残してやがんのかね、あの吸血鬼は」
 そう、悪態を吐きながら。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「どうぞ」
「ああ、すみません」
 差し出されたコーヒーに手を伸ばす。
「随分と面白い事になっていますねぇ」
 向かいの席に座った女性は楽しそうに新聞を机に広げた。
 今日の朝刊。そのトップ記事のタイトルを見て、ヨンは苦虫を噛み潰したかのような、そんな表情を浮かべる。
「ヨンさんづくしですねぇ」
 同行したブランが感嘆とも呆れともとれる呟きを洩らす。
 町を挙げての大騒ぎ。
 まさにその言葉に相応しい有様が町の各所で発生していたらしい。ヨンの逃走ルート以外にも大小様々な小競り合いが起きていたらしいことが書かれている。
「ともあれ、エンジェルウィングスや登頂者同盟は我関せずですが、施療院なんかは被害者治療に出てますし、妖怪系の人達もいろいろと『化かし』をやっていたみたいですよ。こちらはシュテン氏の指示と言うわけではないようですけど」
 ざっと視線を走らせる。町の者のコメントが目に入る。
 ヨンを批判する言葉は当然あるが、それは大局で見ると「火元でしかない」という意見に集約されている。もしくは、元々あった火薬に足された火だねに過ぎぬと。
批判の多くは賞金を掛けた者への物だ。また、今回に限り特殊ルールを敷いた管理組合への疑問と、それに伴い、管理組合というシステムへの疑問へと広がっていた。
「管理組合からのコメントは『特別ルールに関しては、現時点で彼を助ける者が多く存在している事が、その正当性を示しているでしょう』だそうで」
「誰のコメントですか?」
「イルフィナさんですよ。聞けばスーさんとアースさんも砦から此方へきているそうで」
「四大砦のうち3人も? 凄いですねぇ」
「万が一の抑え役でしょうけどねぇ。管理組合である以上、これ以上の干渉は考えられないですし」
 神楽坂新聞社代表、神楽坂・文は面白そうに眼を細める。
「それで、ヨンさんは私にどんな用で?」
「私の事を記事にしてもらいたのです。
 私自身の事と、この事件の発端であるレヴィさんの加護について」
「お断りします」
 にこりと良い笑顔を作る文。
「え? あ? どうしてです!?」
「お互いにメリットが無いからですね」
 平然と言ってのける彼女に、傍らのブランは「さもありなん」と呟く。
「レヴィさんの事ならうちはとうの昔に知ってますよ?
 で、それを公表したからどうだと言うのですか?」
「え? でも、それで頭が覚める人も……」
「無理ですよ。だってここで退いたら、彼らは自分たちの間違いを認めた上で、何もなしえなかったただの笑い物になってしまいます」
「そも理由が理由ですしねぇ」
 新聞記事に視線を這わせながらブランも相槌を打つ。
「これが何かの罪を犯したヨンさんを追い詰めようとして、それが冤罪と分かった。というなら矛の収めようもあるでしょう。でも、今回は彼らが少なからず持っていた『嫉妬』を『増大』させた上に、『集団心理』で動いてしまった結果ですよね?
 ならば彼らの撤退は、彼らを中途半端に終わらせてしまうだけです」
「だからって3日間が過ぎても変わらないのでは?」
「そうでしょうか?
 管理組合の設定した3日というのは、それだけ暴れたらすっきりするだろうって意味と思いますが?」
「……いや、でもそれで何が変わるので?」
「人を憎むのってすっごいパワーが必要なんです」
 どういう意味だと首をかしげる。そんな様子を見て「それが原因の一つと思いますけどねぇ」と文は微苦笑。
「つまり、無期限にしてゆるゆると恨み憎しみを引きのばすより、三日間盛大に怒り、暴れさせてすっきりさせようとしている、と?」
「そんな理不尽な!?」
 ブランの言葉につい声を荒げるヨン。
「理不尽、ですか。
 確かにヨンさんにとっては理不尽かもしれませんけどね、人の感情なんて大抵理不尽なものですよ?」
 彼女はコーヒーカップを軽く揺すりながら微笑む。
「例えば、運よくクロスロードに先に訪れたから、新聞のシェアを独占できているんだ。とかね」
「……それは」
 理不尽な言いがかりだ。先に来ていれば自分が成功していたと言う根拠のない断定を突きつけている。
「言いたい事はわかりますよね?
 でも、人っていうのは案外シビアな物で、しかもここは冒険者の町。不要な物はさっくり切ってしまうような人達の集まりなんです。
 確かに先んじたという点は認めます。でもそれだけでウチはシェアを維持してるわけじゃない」
 まだ二十歳にも満たないような童顔の女性は、それでも迷いのない笑みで続ける。
「でも、彼らにとってそれが全てで、私達の『主張』なんて言い訳に過ぎないんです。
 人の理不尽さなんてそんなものですよ」
「……しかし……」
「ヨンさんの場合はレヴィさんという要因が分かっているからなおさら理不尽さを感じると思いますけどね。
 でも、レヴィさんはすでにターミナルに居ないって言ったら、これは彼女のせいじゃないって知ったら、どうします?」
 え?とヨンは言葉を詰まらせる。
 それではまるで前提が変わってしまう。自分は、自分の行為が彼らをそうさせてしまったのかと、背筋が凍りつく。
「いやまぁ、彼女のせいですけどね。昨日確認しましたし」
「……確認した?」
 どこか安堵を覚えつつ、しかし、その安堵は適切なのかという疑問を吹き飛ばして、ヨンは身を乗り出す。
「ええ。取材するならまずはそこでしょ?」
「レヴィさんがどこに居るのか知っているのですか!?」
「彼女と遭遇できたのは、記者としての勘からですね。
 ただまぁ、もう私が見つける事はできないでしょうね。彼女は取材に応じただけですから」
 ぐ、と息を詰まらせ、ソファーに座り直す。
「そろそろ時間も時間ですし、まとめましょうか。
 神楽坂新聞としてヨンさんの依頼は正式にお断りします」
 きっぱりと言われるも、荒れる心の動きを何とか抑える事に手いっぱいのヨンは、ただ頷く。
「ですが、神楽坂新聞としてヨンさんに起きている出来事は伝える予定でいます。
 それは今日の夕刊の予定で、彼らの一度目の息抜きのタイミングとなるでしょう」
「それは……」
「これはお祭りなんですよ、ヨンさん。
 渦中の貴方にとっては迷惑な話かもしれませんが、そうなってしまったお祭りです。
 御輿である貴方をいろんな人がいろんなアプローチで迎えるでしょう」
 文はまっすぐな視線で彼を見据える。
「我々はその過程と結果をまとめて、伝え、残します。それが我々の祭りへのアプローチです。
 そして、ヨンさん。
 私個人的としてはヨンさんがこの祭りを乗り切るだけの実力を有していると、思っています」
「……それは、記者の勘ですか?」
「女の勘と言うと、また面白い事になりますかね?」
 勘弁してください、と。ヨンは苦笑いをする。
「ふふ。取材のお礼に一つだけアドバイスです」
 文は言う。
「ヨンさん、貴方が考えるべき事。それは彼女を見つけた時に、彼女に何と言うか。
 それだけだと思いますよ」

◆◇◆◇◆◇◆◇

「せいっ!」
 錫杖を振り抜けば、敵が飛ぶ。
「いい加減嫌になってきたな」
 時間は少し遡る。夜明けを目前にして雷次はその場に座り込みたいという欲求を跳ねのけて先へと進む。
「こっちだ! やられてるやつがいるぞ!」
 囮役を真っ当できているという事を幸いと思うべきか、割に合わぬ事を災いと嘆くべきか。
「負け戦の殿軍じゃあるまいに」
 言ってて悲しくなったので気を改める。それにしても、もう囮役も終わりで良いのではないだろうか。何しろ今までは闇夜に紛れて誤魔化してきたが、流石に明かりも露わになれば騙すのも不可能だろう。
「罠にも随分引っかかったようだし。つか、俺、働き過ぎじゃね?」
 ヨンにどれくらい請求してやろうかねと呟いて、迫りくる足音に意識を向ける。
 これを凌げるかどうか、流石に体が重い。術も体もいい加減使いすぎた。
「こりゃ、観念すべきかね」
 無論そのつもりもないが、楽勝と言う言葉は遠い。
 と、その更に後ろから駆動音。この期に及んで増援とかやめてくれとぼやくが
「な、なんだ!?」
「ぐぁぁあ?!」
 と、混乱と共に悲鳴。その上で駆動音は止まらず此方へと向かってくる。
 舌打ち一つ、雷を杖に纏わせれば
「ちょ、タンマ!?」
 聞き覚えのある声と共にブレーキ音。ついで地面を擦るような音と共にそれは雷次の目前で停車する。
「あっぶな」
「ん? 一之瀬じゃねえか。
 どうしたんだそのバイク」
「ええ、ちょっと借りました。ちょっと非合法ですけど」
 詰まりは奪ったと言う事か。
「とりあえずこの路地から抜けましょう。ちょっとシャレにならない数集まってますから」
「助かったぜ、って言っておこうか。流石にへとへとだ」
 バイクの後部座席にどかりと乗ったのを確認し、一之瀬はバイクを発進させる。
「ヨンさん上手く逃げられてますかねぇ」
「逃げられてなきゃ俺が苦労してないさ」
「それもそうですね」
 アクセルを吹かして大通りへ。途中捜索しているらしき一団を見つけたが、強引に突破。こちらを追い掛けてくるかとも思ったがそうでもなかった。
 もうそろそろ朝市の時間だ。適当とも言える感じで広げられた露店の中には腹を刺激する香りを放つ店も数多くある。
「おい」
「ああ、賛成です」
 最後まで言わずとも一之瀬は頷く。彼とて一晩中夜の町を動き回っていたのだ。疲労も相当なものである。
「どうやって合流するかの作戦会議もありますしね。まずは一旦落ち着きましょう」
「そうだな。幸い俺達を襲ってたわけではなさそうだし」
「こちらを優先的に狙うメリットなんてありませんからね。向こうがチームで、計画的に協力者を潰せる状態ならともかく、賞金稼ぎの大半が個人行動ではこっちの相手をしても一Cの得にもなりませんし」
「だな。あそこでいいか」
 適当な屋台に近づき、注文する。粥の店らしく、色々な具材が並ぶ中から選んで盛っていくタイプだ。
「で、ヨンのやつはどこまで逃げたんだろうな」
「川を渡れてるとは思えませんからね。こちら側のどこか、サンロードリバー周辺と言うところでしょうか」
「あのあたりはいろんな組織の建物も多いしな。匿ってもらえりゃ話は早そうだが」
「どうでしょうかね。協力してくれる人たちは居ましたけど、なにやら『ちょっとだけ』『一度だけ』みたいなやり方してますし」
「ヨンを助けるってよりは、この状態に対して物申してるだけだよな。あ、これ美味ぇや」
 とにかく空きっ腹に広がる。雷次はまずは一杯と掻きこんで、おかわりする。
「まだ二日目も始まったばかり。折り返し地点にも来ていませんからね。
 賞金稼ぎの動向が気になるところですけど」
「動向?」
「僕ならダイアクトーとか、律法の翼が関与してきた段階で退きますね。割にあいませんよ」
「やりようじゃねえか?」
「そう割り切れる人がどれくらい居るか、ってのが賞金稼ぎ全体の動向になると思いますよ」
 なるほどなと呟いて周囲に視線を走らせる。
 見ればぽつりぽつり、朝早いと言うのにボロボロになったり、疲労の色濃く周囲を見回している者がいる。
「俺達の面はどれくらい割れているんだろうな」
「目敏い、それこそ賞金稼ぎを本職にしている人達には割れてるでしょうね。
 あと、クセニアさん達のところでしょうか」
「あの人、こっち側じゃねえのか?」
「漏れ聞こえた話だと、ヨンさんを狙ってる方のようですね。有象無象を随分とまとめているようで」
「まぁ、友人だなんだって言うのもおかしな話、なのかねぇ」
「割りと良く顔を合わせる知り合い、って気はしますけど」
 友人と言うのはどうんだろうか。と、口にせずに粥を掻きこむ。
「さて、『借りた』バイクも正式に探されると色々面倒ですし、早いところ合流を目指しましょうか」
「そうだな」
 とりあえず食事を終えた二人は、町の中央部へ向けて移動を開始するのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「母上、おはようございます」
 吹き付ける朝の風はまだ冷たい。
 温かさを得るにはまだ早い、大きな斜角を持って刺しこんでくる朝日を横目に二人は親子でもある者達を見る。
「関わってくるとは思っていなかったわ」
「請われれば応じるのも神格が業です」
「純粋に私に会いたかったと言えばかわいげもあるのに」
「貴方を殺した子供が、おいそれ言える言葉ではないですよ」
「だから私の方からばかり、会いに行くのだけどね」
 複雑な立場を確認するような会話。そのやり取りを経て、マルドゥクは半身体を空けた。
「で、何の用かしら。外野の者達」
 ザザは肩を竦めて視線をアインへ。
 吹きすさぶ風に暴れそうになる髪を抑えながら彼女はどこか虚ろな目でレヴィを見据える。
「今回の事の発端は貴方」
「そうね」
「いつもの加護以上の事をしたの?」
「していないわ」
 巨躯の男は壁に背を預けて会話に耳を傾ける。
「ヨンさん、殺されるかもしれない」
「そうね。もしそうならそれが彼の限界だわ」
「貴女のせいなのに?」
「雷が落ちるのは必然、当たるのは偶然。
 私は落雷が発生する頻度を増大させただけで、元々当たりやすい恰好をしていたのは彼よ?」
「ヨンさんが当たりやすい恰好をしていると知って、落雷の数を増やすのであれば、それは貴女の悪意」
「そうとも言えるわね」
 妖艶な美女。その言葉を体現するような黒のイブニングドレス姿の女性は、肌寒い風をいともせずに微笑む。
「……何が目的?」
「この享楽の馬鹿騒ぎが、って言えば良いかしら?」
「貴女が加護をやめれば、これは収まる?」
「一度落ち始めた雷は止まる術を持たないわ」
「でも、あんたがそれを解けば、次の1発は起こらないんじゃないか?」
 ザザの横槍にレヴィは「そうね」と微笑む。
「でも、やめられないわ」
「どうして?」
「私が改めて神格を得掛けているから。
 もうこれは呼吸と同じなの」
 神格を得る、と言う言葉にアインは小さく首をかしげる。
「母上、貴女はこの世界に来た神から、この世界の神に変わろうとしているのか?」
「それほど単純なものでもないのだけどね」
「……他の人でも良いの?」
「構わないわ。でも、彼ほど耐えられる者もそう居ない。彼で無ければ何人死んだでしょうね」
「でも、それはヨンさんには迷惑なだけの話」
「だとしたら?」
 アインは言葉を探すように左手に広がる絶景を見た。
 ここは扉の塔の中腹。朝となり動き得た者達が数多見渡せる。
「貴女が引き受ける?
 でも駄目だわ。貴女は私の力を受け付けない。その理由は貴女自身が良く分かっているはずだわ。
 そう、分からない事を分かっている。だから興味だけで動いているお人形さん」
 その言葉には不思議と悪意を感じない。面白がるような、楽器を適当に叩いて笑う、子供のような感覚。
「ここまで来た賞品をあげましょう。
 貴方達が『面白い』と思える道を示せたなら、私はそれに行動を乗り換えましょう。
 ふふ、でも私、我がままよ?」
 ザザは苦笑いを浮かべ、アインは無垢にして空虚な視線でじっと神の成りかけを睨む。
 祭りはわずかな静けさを経て、大きく動き出そうとしていた。

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 というわけで次回は2日目夕〜夜という予定です。
 一日目を元に協力体制の構築が行われている模様。それを先駆けたクセニアのチームが一番ヨンさんに近づいていると言う感じでしょうか。
 ではリアクションよろしくお願いします。
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