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【inv28】『Vampire hunt』
『Vampire hunt』
(2013/06/16)
「なるほどのぅ」
 大図書館の脇に作られた喫茶店。そこでせわしなく動きながらスガワラ翁は頷きを返す。
「何か無いですかね」
 彼の新作料理だと言う具だくさんのパスタから視線をはずして、大図書館館長へと向ける。
「神族が何故強大な力を持っているか、おぬしらは理解しておるか?」
 問いに対する問い。ザザは視線を彷徨わせ、
「それは、神ごとに理由が違うのではないか?」
 思い浮かんだ答えを口にする。
「確かに経緯に差はあるかもしれぬな。
じゃが「神」と呼ばれるに到るためのステップは大体変わらぬ。
 つまりは『信仰』と『象徴』じゃ」
 それはマルドゥクからも聞いた話。数多の『信仰』により、神の性質は変化する。その事に到ってザザは頷きを返す。
「…それなら、組織の長は「神」に成りえる?」
 アインの言葉にスガワラは目を細める。
「なりえるのぅ。神成りは道を極めた者への畏敬により成立する。聖人というヤツじゃな」
 技術職であれば、高度な技能者は『神の指先』などと言う称号を得る事もある。それも『信仰』の一側面だ。
「あんたもかなり特殊な神であると聞いたが」
 ザザが問いを向けると、スガワラは微妙な笑みを湛えた。
「わしの『原型』はの。
わしそのものは神ではなく、模造品。或いは『原型』の影に過ぎぬ」
 そう前置いて彼は続ける。
「まぁ、わしの元の話で行こうか。
それは元々ただの人にしか過ぎなかった。政敵に敗れ、左遷を喰らった男じゃな。
しかしその前後、特に左遷先で死んでからを首都で大きな異変が続いてしまった」
それはただの偶然。だが、人々はそうと考えなかった。
「故に人々が『異変』と『わし』を『信仰』……『思い込み』で繋げてしまった。
 結果、その『わし』は『厄災』であり、『雷神』でもある存在に成った」
 皿に料理を盛り付けつつ、老人は続ける。
「その時代の者は『わし』を鎮めようとし、『わし』を祭る事で『祟神』から『御霊』に変化させたのじゃな」
 彼を神に変化させたのも、厄神から天神に変えたのも、数多の人間の「思い込み」───「信仰」である。
「さて、『祟り神』にされた『わし』には『祟り』を齎す機能しか存在しない。そんな『わし』がもし「楽しい事を代わりに提示しろ」と言ったらどういう物か、と言う事になる」
 アインは困ったように口を小さくへの字にする。
「……そんな感覚、あるの?」
 思い至った結論は問いの根幹を否定する物。しかしスガワラは大きく頷き、
「その通りじゃ。その『わし』には人間の感覚は無い。なにしろ本人の人間性を無視して作り上げられたモノじゃからな」
 そこに人としての扱いは無いと老人は言う。
「結果もやはり人扱いはせず、『天神』という「他の役目」を付与して鎮めたに過ぎん」
「その理屈なら……そもそも、レヴィがその条件を提示することすらおかしい、か」
「……レヴィさんは人間ぽい感じ」
「まぁ、そこはターミナルの特性もあるのじゃろうが……」
 ターミナルでは長所も短所も含め、その種族、個体特性が減衰する傾向にある。ならば今語られた神族としての縛りも緩くなっていると考えられるべきだ。
「ただ、ターミナルの神族は原則『アバター』を用いておる。これは『言語の統一化』と同じ世界からのギフトじゃな」
 この色々破天荒でフリーダムな世界であっても、神が神としての力を適当に奮う事を嫌っているのだろうか。神族の者はその精神を宿す仮の体を与えられ、この地を闊歩する。
「『アバター』を拒否した者は町の最外郭部に鎮座しておる状態じゃな。しかし、レヴィはそんなアバターを使わぬ神々と同等の力を発露しつつあるのに、アバターを用いる事無く活動しておる。そこがどう影響するかは読めぬな」
「……例外。面倒」
「こりゃ、今はヨンを支援してとりあえず3日間越させる方がよっぽど現実的か?」
 思考のみで推し量れるほど簡単な話しではなさそうだ。と改めて得た認識で呟き、大男は黙してコーヒーを啜る神族の一人を見る。
「……アバターを得た神族は結構人間ぽく普通に日常を生きている?」
 アインもまたマルドゥクを見ていた。カジュアルな服を来てコーヒーを飲む神というのも、世界によっては存在するのだろうが、特異な状況と言って良いだろう。
「なぁ、マルドゥク。お前はこの世界で楽しいと思う物は無いのか?」
 大男の問いに神は一拍の間を置いて口を開く。
「目新しいと思う物は多くある。だが、楽しいと言うべき物は何を指すべきか。
 まぁ、酒の種類が多いのは特筆すべきと思うが」
「……神ってなんでお酒好きなんだろう?」
「酩酊状態というのはチャネリングに適した状態だからじゃよ。故に神と人が触れ合うための物として用いられ、色々な理由が付与されたんじゃな」
「そいつも『思い込み』による『決めつけ』ってヤツか。
……サクラの酒でも持っていくか?」
 『桜前線』の花弁で作られる酒はロボットでも酔うという凄まじいシロモノである。しかも味が良いということでクロスロードの名物の1つになっていたりする。
「でも、珍しい物じゃない……」
「だなぁ」
 世界を巡って酒を集めてくるかとも冗談交じりに考えたが、それで解決するとも到底思えなかった。
「他には無いのか?」
「他に、か。
遊戯の類は余り好かないな。舞いや戦は好む所だが、それとて一過性に過ぎん」
 つらつらと答え、それからやおら彼はアインを見た。
「……ん?」
「一つ、可能性がある」
 アインはきょとんとして、彼を見つめ返す。
「お前、母上にあまり好まれなかったのではないか?」
 お前ではダメだ的な事を言われた事を思い出してアインは頷く。
「それがどうしたんだ?」
「母上は今、感情の神と呼ぶべき存在だ。
 そんなあの人が最も好むのはやはり感情に起因する事だろう。
 『試し』というのも我らが好む行いの一つだからな」
「……ふむ、なるほどのぅ。確かにそれならば彼女の興味は大きそうじゃなぁ。
 が、ふむ……」
「……何? どういうこと?」
 困惑しているのだろうが、表情にも声音にもで無いアインを見てスガワラ翁は苦笑いをする。
「つまりだ。君が母上に明確な感情、好ましくは『嫉妬』を見せる事ができるのならば、あの方の興味は君に向くやもしれんと言う事だ」
 言われてしばし沈黙。それから天井を見上げ、視線を戻し、それから数秒停止して、首をかしげる。
「どうすれば?」
 その様子をしばし呆然と見ていたザザは老人と青年神に視線を投げかけつつ
「おい、これ、信仰を集めるのとどっちが楽なんだ?」
 眉間にしわを寄せて問う。
「そこまでは知らん」
 だが、ばっさりと問いを斬り捨ててマルドゥクは席を立った。
「それこそが君らへの課題、まさしく『試し』だ。
 ならばこそ、為す事で得られる物があるだろう。
他の神は助言こそすれ介在せずだ」
 そうと言って彼は話は終わりと店を出て行ってしまった。
「……感情」
 元よりそれに興味を持って首を突っ込んだこの事件だ。
 自分はどうするべきなのだろうとアインは閉じてしまった扉を見つめる。
「どうなることか」
 ザザもまた、首を突っ込んだ身としてはどう動くべきか、小柄な黒ずくめを横目で見つつ、パスタをつつくのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「やぁやぁ、久しぶりだね、ヨン君」
 メイドに案内され入った事務所で、相変わらず胡散臭さを有した探偵が安楽椅子に座って笑みを浮かべていた。
「大人気じゃないか」
「嬉しくない人気ですけどね」
 ため息を交えつつ応じる。
「で、だ。君の依頼なんだがね」
「まだ何も言っていませんが?」
「言わなくとも分かるさ。私は名探偵だからね」
 きりっとキメたつもりだろうが、相変わらず胡散臭い。メイドがわざとらしく咳払いをすると、彼は居住まいを正した。
「で、彼女の居場所だが、流石に動き続ける相手の居場所を特定することはできないね」
「……動き続けている?」
「それはそうだろう。彼女はこの祭りを楽しんでいるのだから。
 君は家で花火を見るだけで済ませる派かい?」
「……」
 確かに、この騒乱こそを望んでいたのならば、動きまわっている可能性は確かにあった。
「強いて言えば、君の騒ぎが見えるところ。君の傍に居ると思うけどね」
 それが事実として、この一日半、全く気付けなかった以上注意深く探したところでその姿を見つけられるかどうか。
「おびき出す方法、ありませんかね」
「君が殺されるならそれも一つの結末。君のその先が見たいと思わせる展開なら出てくるんじゃないかな」
「残念ながらボクに芝居の心得は無いんですけど?」
「相手は楽屋をのぞける存在だ。芝居なんてそもそも成立しないさ」
 参ったと眉根を寄せる。言う通りである。
「つまり、ひたすらにあがけ、と?」
「それが彼女の望む舞台だろ?」
「それを何とかしたいのですけどね」
「と言ってもね。君の希望はチェスのゲームに負けたくないからとチェス盤をひっ繰り返す行為だ。それを観客が望むと思うかい?」
 そんな事は今さら言われるまでも無い。当てが外れたとヨンは頭を抱える。
 が、
「チェス盤をひっ繰り返せば、観客は怒って声を出しますかね?」
「怒らせて良い相手なのかい?」
 そこの点で問題はあるが、方法の一つには違いない。
「ともあれ、君のアクション次第で彼女は出てくる位置に居る。
それが私の回答だが?」
「場所で無く、手段ですか。
 逃げながら難易度高すぎますよ」
「素直に三日間逃げ続けるのが最良かもね。といっても、もう各組織そんなに手を出さないだろうけど。
 あとは律法の翼の過激派、そこの鬼が勝手に暴れているのと、妖怪連中がウロウロしているくらいかな。
 ダイアクトーは飽きて動いてないようだし」
「妖怪……? シュテンさん所のですか?」
「所属で言えばそこだが、そこまで高位でない連中らしいよ。まぁ、妖怪種は特殊能力というか、一芸の持ち主だから協力してもらえるなら逃げるのはまだまだいけるんじゃないかな?」
「……」
 余り高位でない妖怪種は総じて戦闘力に欠ける。彼らに無理をさせるのは好ましくない。
「それからね、今からが本番だろうから、気合いをいれた方が良い」
「……?」
「おかしいと思わないかい? 今まで君を追い詰めていたのはクセニア君が指揮する連中だけだ。
 では、本職連中は何処に行った?」
 ぐ、と息を詰まらせる。確かに賞金稼ぎを名乗るには甘い連中だけが今まで周囲を嗅ぎまわっていた。この曲者揃いのクロスロードで、賞金稼ぎなんて真似をするような連中が果たして居たか。
「つまりそう言う事さ。
 それに、クセニア君もだいぶ追い詰められているようだよ」
「クセニアさんが?」
「寄せ集めの指揮ってのは簡単にできるもんじゃない。
しかも効率運用となればなおさらで、君は未だに逃げ切っている」
「なるほど……」
「彼女のお陰で暴動じみた動きが無かったとも言える。が、今からはちょっと派手になるかもね」
 それは、クロスロードしては望まざる事態なのではないだろうか。いや、自分は今町の事を気にできるような立場でも無いのだが。
「……川を渡るルート、何か良い案ありませんか?」
「橋」
 質問を予期していたかのように、そしてヨンとしては一番「ない」と思っていた案が飛び出してくる。確かに変装をしたまま路面電車に乗ればとは考えていたが、本職連中が本腰を入れるとあっては危険な案だろう。
「君の特性を考えれば渡し船は無いだろ?
 アクアタウンの協力を得て水中と言う手段もあるだろうが、君が動けないというデメリットはどうしようもない。
 水神を仲間に引き入れられるならば話は別だが、あの存在に意志は無いし、もしそんな事ができるならもう逃げる必要すらないね」
 水神、という言葉に眉根が動く。確かサンロードリバー周辺で活動しているインスマ達が崇めているという存在だったか。そう言えば「水神」もレヴィと同じなのかと疑問が浮かぶが、今は横に置いておく。
「空なんて狙い撃ちしてくださいと言っているようなもんだ。
 結果、陸路。となれば橋以外に手段は無いね。
 ちなみに、扉の園を通過するルートは選ばないように。管理組合から止められるから」
「管理組合が?」
「当たり前だろう? 扉の園での戦闘行為は御法度中の御法度だ。その要因となりえる君が入り込むなんて看過できない。それこそ本当の賞金首モノさ」
 言われれば反論の言葉すらない。
「幸いと言うべきか、2つの橋はニュートラルロード並みの広さがある。戦闘をするにしても充分な広さがあるわけだ。
 障害物に乏しいというデメリットはあるけどね」
「……なるほど」
「それに、川の渡しなんて本職連中がまの真っ先に抑えて情報を確保しているからね?」
 逃げるとなれば誰とて考える事は似たり寄ったりということか。
「さて、君の依頼に対し、納得いただけなかった分の補てんくらいは出来ただろうか?」
「ありがとうございます。行ってみます」
「うん。武勇伝楽しみにしておくよ」
 ひらひらと軽く手を振るアドウィックにヨンは軽く頭を下げたのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「ここも駄目、か」
 一之瀬を外で待たせて入りこんだ集合場所の一つもどうやらはずれらしい。
「こら、ヨンさんのほうも合流は諦めたと見るべきかねぇ」
 護るべき相手とはぐれて数時間。雷次は焦りが心を削るような感覚に顔をしかめた。
 通信手段が無い事。やはりその一点がじわじわと来る。
「しっかし、連中も見つけた様子は無いんだよな……」
 相変わらず町を行けば、恐らくヨンを探しているだろう一団にはすれ違う。が、その動きはあからさまに緩慢だ。相当ダレてきている。組織として半端故の結果だろう。
「あっちがピンチで無いのは幸いとはいえ、このまま町をふらついてたらゲームセット、なんてのは情けねえよなぁ」
 とはいえどうした物か。思いつかないからしがみつくように拠点めぐりをしている。
「……いっそ声出して呼ぶか。向こうが出てこなくても、見つけてくれりゃ、隙見て接触してくるかもしれん」
 無論、自分たちにも監視が付くだろうが、さてメリットとデメリット、どちらがでかいだろうか。
「にゅ」
「にゅ?」
 不意に妙な声が聞こえて、思わず復唱。ハッとして周囲に視線を向けると、片隅に座っている小さな姿一つ。
「ピクシィか?」
「にゅ」
 しゅたっと手を挙げて応じるのは握りこぶし二つ分も背が無い虫の羽を持つ小人だった。
「お前、ここで何をしている?」
 その問いに妖精は自分の体をまさぐるようにして、ぴたりと止まり、焦ったようにまさぐり、帽子を取って中を確認し、絶望的な顔になって涙目になる。
「……な、何やってんだこいつ」
 言語の共通化があるため、これとの会話も可能のはずだ。が、極稀に言語の統一化というギフトを無効(無視?)する存在も居る。これもその類だろうか。
「にゅぅ……」
「……って、もしかして探してるのはそのお前が敷物にしてる紙か?」
「にゅっ!?」
 びっくりしたように飛び上がり、自分が座ってたところに視線を向ける。そこには文字らしきものが書かれた紙がある。それを確認してピクシィはバンザイをすると、それを手に取り雷次へと突き出した。
「俺に?」
「にゅっ」
 文字は普通サイズ。恐らくこの妖精は郵送屋で、書いた者は別に居るのだろう。
「……こりゃ、どう考えるべきかね」
 そして内容はたった二言。
『夕刻、橋』
「こいつ、誰からのだ?」
「にゅー」
 ダメだこりゃと頭を抱える。罠かと考えるが、果たして自分たちをターゲットに誰が罠を張るのか。
「しかも橋って2つあるじゃねえか」
 扉の園の両側にある石の橋と木の橋。これが真実だとしてもどちらを選べば良いのか。選択を間違れば最早合流は絶望的だ。何しろいつまで待てばいいかすらも分からないのだから。
「……でもこれしかヒントがねえんだよなぁ……」
 ならば、夕刻までは活動し、それでもだめならこれに縋るべきだろうか?
 気付けば妖精はどこかに消え、雷次一人が取り残されていた。
「……さて、ホント、どうしたもんか」

◆◇◆◇◆◇◆◇

「守る奴、襲う奴、状況を収めようとする奴……
 遠目に見れば純度も割合も俺たちの方が分が悪い。
 だが、この状況も考え方を変えればまだまだ運は離れちゃいない」
 彼女の言葉を聞くのは、比較的物分かりの良く、指揮の能力のある者達だ。
「そうは言うが、そう思ってない連中も多いぞ」
「しかも横槍が多かった事が一番の難点だ。また追い詰めても横槍を入れられると思えば士気も上がらん」
 彼らとてクセニアに文句を言いたいわけではない。が、四半日消息を見失ったとあって、焦りがそんな言葉を口にさせていた。
「一応手は打ってある。あれを見つけられて無いのは俺達だけじゃない。だからそう言う連中に協力の打診をしておいた」
「と言うと?」
「こちらはギブアップ寸前、ならそちらに協力するって感じでな。
 まぁ、甘い言葉で尻を叩いてきたという感じだ」
「後で揉めそうだな」
 詰まる所利用である。ならば乗せられた方が良い顔をするわけが無い。
「ンな事気に出来る状況でもあるまい」
 すぐにそう返されて周囲の者は口を噤む。
「少なくとも、ヨンがどっか一カ所でじっとやり過ごす事態だけは避けにゃならん。そうなったらもう手づまりだからな。山狩りは必要なんだよ」
「それは否定しない。いや、案の無い以上文句すら無価値だな。こちらも知人を当たって動かしてみよう」
「周りが慌ただしくなりゃ、あいつも考えるだろ。
まあ、実際は動きまわってるかもわからないと言うのが頭の痛いところなんだが」
「もし彼が動きまわっているとすれば、巡回をしている連中が見つけきれていないと言うのが問題……か。
すれ違って気付かぬ程士気も気力も疲弊している可能性があるな」
「だから騒ぎ立てる。そうすればヨンの事だ、じっとしていても夕刻から夜にかけて本格的に動きだすだろうよ。なにしろあっちはバンパイア様だ」
「クセニア殿、一つ良いか?」
 今まで黙っていた一人が口を挟む。
「何だ?」
「本職の賞金稼ぎ連中の動向についてだ」
 その言葉に皆の注目が一気に高まった。
「ぞろり動き始めたようだ」
「今まで大人しくしていたと思えば今さらか」
「むしろ、今だからだろう。我々の戦力は事実上低下。しかしターゲットは中央区に恐らく追い込まれている」
「漁夫の利か。ま、今の作戦立てた俺達が言うのはアレなんだろうが」
 自嘲一つ、クセニアは思考を巡らす。
「連中、ヨンの居場所を抑えてるとかはねえよな?」
「そこまでは分からん。別に集団行動を取っているわけでもない。考える事は一緒だった、という動きだ」
「そいつに便乗するかどうかってのも1つの懸案事項か」
 なんにせよ、手勢が増えたなら好都合。あとはそのまま餌を持っていかれないようにするだけだ。
「今頃賞金稼ぎ連中が動きだした事を広めてやれ。流石に横から魚を掻っ攫われる真似は笑えない。俺達の尻を叩くに充分な情報だ。」
 皆は頷き、行動を開始する。
 それからしばらくして、クセニアは少し活発になった情報をまとめ、一つの流れに注目する事になる。
「橋、か」
 間もなく日が傾く。
 派手な逢魔ヶ刻がはじまりそうだ。


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というわけで二日目中盤です。
もしかすると次回大激戦かなぁとか。
というわけでリアクションよろしゅう。
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