<< BACK
【inv31】『無貌の怪物』
『無貌の怪物』
(2013/11/30)

「事情は分かりました。しかし……恐ろしいですね。四段階目までの性能を発揮して見せたのですか……」
 路地裏。呼び出されヨン達と合流した黒服が神妙な声を洩らす
「ダイアクトーもあんな力発揮するのか?」
 ヨンについてきた雷次の言葉に暫く沈黙を続けた黒服は
「……今のお嬢様がかろうじて制御可能な限界値ですね」
 と、静かに応じた。
「つまり制御しなければもっと上がある、と」
 ダイアクトーに付き従う黒服の数は6人。彼らが忽然と消え、ダイアクトーが強くなるという様を何度か見たヨンはつまりそういう事なのだろうと察し口にするが、それには答えは返ってこない。
「聞くのもどうかと思うが、あれの弱点とか無いのか?」
「何一つ違わずお嬢様であれば、精神攻撃が一番有効ではあるのだろうが」
 あの偽物に知性が無い事が逆に彼女の弱点を消している、というのは何とも皮肉に過ぎる。外付け知性の黒服が不要になったダイアクトーはシャレにならない脅威という事か。馬鹿の代名詞のようなままでは困るが、それはそれで難ありである。
「あの能力を持った挙句逃げに徹せられるとタチが悪いですね」
「素直に変身される前に薬で眠らせますかね」
「クセニアさんが罠は失敗してたようだが?」
「食いつかなかったのですか?」
「どうだろうな。食いつくまで行ったなら薬仕込むのはアリか」
「後は何処まで知性的か、ですね。クセニアさんの罠を覚えられていると厄介です。
 まぁ、施療院によって都合してきますか」
「トーマが持っていた銃は中々に使えそうだし、被害がでかくなる前に連携してなんとかしたほうが良いだろうな」
「同意です」
「力になれなくて済まんな。少なくともお嬢様にはむやみに小動物へ手を伸ばさないように注意しておこう」
「四匹のダイアクトーとか、洒落にならねーから、くれぐれもよろしく」
「……もしそうなったら大襲撃よりもピンチですね、クロスロード……」
 相変わらずわけのわからないところで大ピンチのこの町である。

◇◆◇◆◇◆

「というわけで協力するっスよ」
「まぁ、異論はねえな。時間を掛けると横取りしてくるヤツも出かねないし」
「ヨンさんにも連絡は入れておいたッス。そっちは遠距離で牽制。こっちはもし返信したらそれのディスペル。実行部隊はヨンと雷次さんの二人っスね」
「こうなるとファフニールみたいなデケエやつになってくれれば楽なんだがな」
 調達してきた長身のライフルを撫でて獰猛に笑う。
「狙撃ポイントはヨンさんが罠を設置したところっス。あいつら見張りを立ててるような雰囲気もあるから、不用意に撃ったらダメっスよ?」
「ケースバイケースってやつだ。こっちと報酬は欲しいからな。最善を尽くすさ。
 しっかし。次は食いついて来るのかね?」
「ダメだったら他の手を考えるまでっスよ」
「ンな悠長な真似が出来ればいいんだがなぁ」

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

結果から言えば、ターゲットの特性をある程度押さえた四人の行動で、もう1匹の捕獲には成功した。
が、これ以降餌に食いついてくるターゲットは無し。
思った以上に知性があると踏んだ四人はまた別の手を考える事を強いられたわけだが……

 そう。そこまでは色々厄介な問題はあったものの「捕縛作戦」で済んでいた。
 だが、ここに一つ厄介な要素が紛れ込む。

「……」
 彼女の眼前に居るそれは己の最大の特徴にして、身を守る唯一の手段を忘れたかのように、ただただ恐怖に縮こまっていた。
 彼女が手を伸ばしても身じろぎひとつできない。狩猟の際に、犬に睨まれ動けなくなった鳥と同じ現象だった。
「……ふふ」
 彼女は可愛らしい表情で笑う。しかしその笑みはどこまでも空虚で、そしてどこか邪悪さを孕んでいた。
「面白い物、みーつけた……」
 そして、小さな依頼だったはずの物語は、災いへと発展する。

「三体のファフニールが突如出現し、町の一部を破壊。その後忽然と消えました」
「同じタイミングで?」
「報告にはそうあります」
「……何かが介入した……か」

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

おめでとうございます。2匹目の確保です。
 残り三匹、張り切って捕まえに行きましょう。
 ……うひひ。うひひひひ。
 あ、次回は最初っから何か暴れてますので頑張って捕獲してくださいね☆
niconico.php
ADMIN