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【inv34】『ミュージックフェスタ!』
『ミュージックフェスタ』
(2014/07/11)
「ここには閣下じゃない本物のデーモンも居そうだしなぁ」
 そんな事を呟きつつ指定された集合場所に足を踏み入れる。
 ケイオスタウンにあるスタジオ『デスロード』は、いわゆるライブハウスだ。いつもは薄暗くして、色とりどりの照明を躍らせるそこも、今日は説明会場として使うために通常照明が灯されている。
「よぉ、よく集まってくれたな」
 一段高くなっている舞台の袖から現れた男に視線を向ければ
「閣下だぁ!?!」
 ここ、スタジオ『デスロード』のオーナー、ダーランド・ノヴィアは間違う事無く、デーモン───魔族であった。
「アアン? 地球系世界の出身者にたまに言われるが、なんだそりゃ?」
「あ、ああ。お気になさらず」
 慌てて手を振る桜に訝しげにしながらも、しかし今日は目的が違うと視線を外し、集まった面々を見渡す。
「さて、早速だが今日は簡単な説明と、希望を聞く。
 屋台の希望者は管理組合への届け出票を後で配るからそのつもりで居てくれ」
 双角と厳つい面、赤褐色の肌はデーモンと言うより赤鬼を連想させるかもしれない。そんな彼が指をパチンと鳴らすと、プロジェクターの映像が彼の背後に移った。
「今回の祭り、その地図にある16のポイントに野外舞台を、あとコロッセオと大図書館の公園に舞台を用意させてもらう。16の舞台については半分を予約制。もう半分を当日の飛び入りで演奏者を決める仕組みだ」
 地図を見る限りクロスロード中に分散して舞台が用意されるようだ。
「無論街頭での演奏もOkだ。だが一部特区法に基づく禁止区域もあるから、運営スタッフは把握しておいてくれ。
「舞台の警備とかはするのか?」
「舞台の方は放っておいて良い。どっちかと言うと町中でHeatし過ぎちまった連中が起こすもめごとの対応や、さっき言った禁止区域の確認がメインになる」
「清掃とかは?」
「それはセンタ君が常時やってくれているからな」 
 確かに何百体居るか分からないセンタ君を押しのけて町の清掃に繰り出す必要はなさそうだ。
「案内関係もPBがやってくれるから、大した話にはならん。
 なのでスタッフの主な仕事は会場設営、交代時のセッティング、あと交通整理がメインになると思ってくれ」
「交通整理?」
「客が集まり過ぎて道を埋め尽くしたら困るだろ?」
 なるほどと桜は頷く。
「ま、スタッフだからって縛りつけるつもりはねえ。要請がある時に迅速に対応さえしてくれれば文句は言わねえ。
 なんならうたう歌う方に殴りこんだって構わねえ。そういう感じで宜しく」
 なるほど話が分かる、というか、ロックだな、と言うべきだろうか。
「これは楽しむための祭りだ」
 つまりそういうことらしい。楽しい仕事だと桜は頬を小さくつりあげるのだった。

◆◇◆◇◆◇

「と、言うわけっス!!!」

 ぐっと身を乗り出して自信満々に言い放つトーマを見て、アルカは目を細めるのであった。

「で、いきなりその言葉から始まるのはどーかと思うにゃよ?」
「おっと、天才過ぎて過程を吹き飛ばして結果だけを残してしまったようっスね」
「ええと、落ち着いてくださいね?」
 苦笑と共に現れたルティアがお茶を置く。
「んで? 何をするの?」
「チャーム系の魔術を音響に乗せて放つとかできるっスかね?」
「できるにゃよ」
 アルカの即答にトーマは目をきゅぴんと輝かせる。
「っていうか、それ、科学分野でもできるじゃん」
「え?」
「音楽ってのは元々精神に対する作用があるモノにゃよ?
 不安にさせる音、心を落ち着かせる音、そういう研究知らない?」
「し、し、し、し、知ってるし!?」
 実際言われて思い出したのだが、目線を逸らしてひゅーひゅーと口笛を失敗する。
「魔術にしても種類があるけど、例えば『音』に意味のある魔術であるなら録音再生でも発動させる事は可能にゃよ。
 ただ大抵の録音機材は音の変化を生じるからそのあたりを計算した上で録音させるなら、って事になるけど」
「つまりそこらのカセットテープでセイレーンの歌声を録音しても、再生した音じゃチャームの効果は発揮しない可能性が高いと言うわけっスね?」
「うん。一方で言霊、つまり言葉の並びによる術に関しては、陳腐な録音環境でも正しく相手に言葉を伝える事ができれば機械越しに術を成立させる事ができるにゃ」
「……それは魅了の力を持つ言霊、言葉の羅列で歌詞を作れば、音響に乗せても充分に効果があるって考えて良いっスか?」
「うん。で、最後は『音』を媒介に魔力を乗せるタイプ。これについては録音じゃ全然ダメ。ただし音響による拡散は効果があるにゃ。
 ハーピィやセイレーンの歌声はだいたいこのタイプにゃね」
「魔力の伝導体として音を使うわけっスか」
「言葉その物に魅力の魔力が乗るっていう能力者も居るらしいにゃね。この場合は音程や歌詞なんてのはどうでもよくて、自分と相手が音によって繋がれば術を掛ける事ができるにゃ」
 なるほど色々あるなとトーマは頷きを返す。
「ちなみに今回の祭り、そういうのは規制しないっスか?」
「別に魅了した後に取って食うとか言うなら止めるけど、魅了されるまでだったら本人心地良いんだからほっといて良いんじゃない?」
「実力で勝負する人には不利じゃないんスか?」
「そういうお祭りじゃないでしょ?
 まー、不当な評価って言うならそうかもだけど、この世界では「そこまでが才能」にゃよ。それにあたしだったら『歌で負けた』わけじゃないし、それ以上の歌を作ればいいんじゃないかなぁって思うけど」
 人を魔力で魅了するチート能力に随分と寛容な考えである。
「……って言うか、アルカさん、歌うんスか?」
「アルカさんは歌、上手ですよ」
 ルティアの言葉にそこはかとなく嫌な予感がする。
「もしかしてアルカさんも出るっスか?」
「んー、空いた舞台で適当に歌うくらいはするかもねー」
 こういう人間の「適当」は「ガチ」と同意である。
 ここに大敵を見出したトーマは、今聞いた事を踏まえ、自分の取るべき策をじっくりと練るのだった。

◆◇◆◇◆◇

 というわけで、あっという間にやってきた祭り当日である。
「ん〜♪」
 町の至る所で音楽が鳴り響き、人々の熱狂と混ざり合って特殊な高揚感を生み出している。まだまだ始まったばかりか、比較的緩やかな、明るい曲が多いように思える。もしかするとロウタウン側だからだろうか。
 チコリはのんびりと町を行きながら視線を彷徨わせる。知り合いが参加していると言う話は今のところ聞いては居ないが、飛び込み位やらかしそうなのは多い。
「迷子になっている人とかも居なさそうですかね」
 ちなみに密入国じみたやり方でクロスロードに侵入していない限り、PBのサポートがあるので、少なくともクロスロード内で迷子になる事はほぼ無い。仮に親と離れても近くの無人サポートセンターに案内し、親もその地点へ誘導する事が可能だ。
 そんな事をすっかり頭の外ではあるが、別にそれが主目的では無いので特に問題はあるまい。
「それにしても、不思議な物ですね」
 一言で言えば『音楽』。しかし数多の音の組合せがそれと呼べる物へと化けてしまう。その組み合わせは無限であろうが、なじみが無くとも心に響く音の組合せが至る所から耳を擽る。きっと参加者の誰もが今日の音を胸に秘め、或いは新たな音を生み出すのかもしれない。
 と、チコリはある獣人族の歌手を見た。
 彼女の前には客は居ない。なにしろ彼女は謳っているように見えて、何一つ音を発していない。エアギターとかそういう物かと眺めている者も居るが、遠巻きに見るチコリには道往く者の奇妙な差異に気付く。
「……これも、独特の歌なんでしょうかね」
 耳を澄ませば、同じく獣の属性を持つ彼女の耳には確かに『歌』が聞こえた。
 可聴域。詰まる所音を感知する器官が捉えられる音には範囲が存在し、それを越える音は知覚できない。彼女の歌う歌は一般的な人間型来訪者の可聴域を超えた所で歌われているのだ。
「こういうのもあるんですね」
 チコリの視線に気付いたのか、彼女はにこりと笑みを見せ、高らかにサビを歌いきる。可聴域ぎりぎりの者が不意にその音を捉え、不思議そうにするのが面白い。彼女を見て、理解し、足を止めるのだ。特に人間型のツレが居る場合、その戸惑いっぷりについ吹き出してしまった。
「色々な音に出会えそうです」
 彼女は呟いて次の音を探しに足を進めるのだった。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
今回は平和なシナリオですよー。
ええ。平和ですとも。うひひ。
では次回はお祭り2〜3日目位をお送りします。
『ミュージックフェスタ』
(2014/07/24)
 この祭りがどんなものか、来訪者がだいたい把握してきた三日目。
 一週間続く祭りと把握したからか、初日二日目と打って変わり、気抜けしたような閑散とした印象を受ける。
 街角にはいつもより多くの吟遊詩人やミュージシャンが居るものの、どこか盛り上がりに欠けるといったところか。
 運営側としてもこの三、四日目は最初の二日間の振り返りと最終日へ向けた前準備と見ているらしい。本部主催のイベントも緩やかな物が多かった。
 だがその一方で、こんな状態でも人を集める者が居る。大体はこの地で奇特にも音楽活動を続け、多くのファンを獲得している者だったりするのだが、特筆すべきは「そうでない者」だろう。それはたった一度の機会で多くの聴衆の心を掴むだけの力を持った者という事であり、無論奇異な才能と言える。特にこの数多の文化が混ざりあった混沌の地ではある世界ではフォーマルな楽曲も、別の世界の、別の種族の者にとって「ありえない」可能性は非常に高い。長きに渡り音楽活動を続けていた者にとって、まるで見た事のない材料を使い、料理の世界大会に挑むような心境だろうか。
「ふふふふふ」
 その領域に傲慢にも無理やり入り込もうとする者が居た。
「さぁ、真珠ククのお披露目っス!」
 相変わらず勢いだけのポーズを決めるトーマ。無論周囲がどんな奇異の目を向けていても、それが期待と称賛の視線として変換し認識されている。
「……何をしているのですか?」
 というわけで惜しみなく怪しい雰囲気を放つ彼女を周りは遠巻きに見ているのだが、いたたまれなくなったチコリが冷や汗混じりに問いかける。
「自分が天才である事をかみしめていたっス」
「……迷いなくそう言うセリフが言えるのって確かに凄いと思います」
 いつも通りだなぁと呟きつつ、そろそろ厄介事が起きそうなので「それじゃ」と頭を下げたところ、がしりと肩を掴まれた。
「えっ、えっ……」
「幸運っスねぇ。この伝説の一瞬に立ち会えるとは!」
「……」
 あ、何か始まったと半分諦め気味に思う。胸に抱きかかえてた使い魔がくぅと慰めるように鼻を鳴らしたが、残念ながら何の慰めにもならない。
「この真珠クク、このクロスロードにセンセーショナルを起こすっスよ!」
「このって……その機械がですか?」
 確かパソコン、ノートパソコンとか言う携帯用の演算装置だったはずだ。
「ふふ。ただの機械ではないっス! これこそ科学の力が生み出した完ぺきな歌姫っス!!」
「歌姫……? えっと、機械ですから蓄音器とかラジオとか、そういうのですか?」
「ノンノン! これにはAIが搭載されているっス!
 そしてそれが完ぺきな歌を歌いあげるっスよ! さぁ、機動っ!!!!」
 言い放ち、それから画面を見て地味にカタカタとキーボードを鍵打。最後に勢いよくッターンとエンターキーを打つ。
「……」
「……」
 だが何も起きない。
「あ、あるぇ?」
『えっとー、マスター?』
 やや電子音染みた、しかしかわいらしい声がノーパソから響く。
「どうしたっスか? 早く歌うっスよ!」
『何をですか?』
「何をって歌をっス」
『じゃぁー楽曲を指定してください』
「……そこはぱぱっと作って、ほら、ハリーハリー」
『マスター。学習していない事を機械にやらせようとしないでくださいよー? データがぜーんぜん無いんですからぁ』
 喋り方こそなんか可愛らしい(女性視点からするとちょっとイラっと来るところもある)が、どこか角ばった感じのある声が呆れを表現するように返答する。
「えーっと、今のはトーマさんが悪いと思います」
「ええ!?」
『ネットワーク環境も存在しないクロスロードでは既存楽曲を収集する事もできませんよー?
 最低でも既存楽曲のデータをください』
「でもそれはただ再生してるだけっスよね?」
『あったりまえじゃないですか☆』
 果たしてそれを『歌う』と言うのか。
『クリエイティブな事をしろーって言ってると推測しますけどー、今の私にできるのはランダムで音を並べる程度ですよぉ?
できた物が良いかどうかも私には判断できませーん』
「……oh……」
 天を仰ぐトーマ。
「つまり、この機械は歌えるけど、歌うための情報が無い、という事ですよね?」
『そーでーす。でも規定された音を規定通りに再生する事を『歌う』と定義できるなら、ですけどね〜』
「そこは気分の問題っス! ノープロブレムっス!」
『その「気分」についてもデータがありませんので評価できませって』
 もう一回orzるトーマ。
「くっ……折角最適なノラAIを見つけたと言うのに、なんという落とし穴……っ!
 天才には常に障害が付き纏うっスね……!」
「単なる準備不足のような……」 
 ワンと使い魔が同意の声を上げるが、主人の声と共に届いていない。
 仕方ないなぁとチコリは少し考え
「えっと、とりあえずテストしたいのであれば、大図書館とかに音楽関係のデータブックとかあったと思いますから、渡してあげれば良いのでは?」
 と提案してみる。
「ふ、ふふ。そ、それぐらいプランにあったっスよ!?」
『……なんか、大変な人をマスターにしちゃったみたい?』
「えっと、頑張ってください」
 慰めの言葉も空しい。
「ふふふふ。とりあえずデータっス! こうなったらありったけのデータブチ込んでやるっスから最高の楽曲を作り上げるっスよぉおおおお!!!!」
 ノータイムで猛ダッシュに入ったトーマの背を見送り、それからチコリは使い魔の頭をひと撫で。
「えっと、どこに行きましょうかね」
 出鼻をくじかれたなぁと苦笑いをして、行くあても無く歩き始めるのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「ってのはどうだ?」
 桜の言葉に同じ開場での設営をしていたウンディーネは小さく首をかしげる。
「面白いと思うんだけどなぁ」
「面白いは面白いが、面子集めて曲決めて音合わせするとなると、かなりキツくね?」
 人間種の男性が「なぁ」と隣の獣人に問いかけると
「世界をまたぐと嗜好も変わるがらな。同じ文化圏の仲間を探すべきだと思う」
 という現実じみた回答が返ってくる。
 確かにこの三日間、いろんなところをめぐっているが、種族をまたいだグループというのは余り見た覚えが無い。また、中には騒音にしか聞こえなかったり、素っ頓狂としか思えない構成の曲もあった。下手なだけならそこまでだが「そういう物らしい」ともなれば、自分の演奏もまた、他の異世界人には同じように捉えられる可能性があると言う事だ。
「人間種は比率的にも多いし、人間種で集めたら幅広く受け入れられて良いんじゃないかな?」
 ウンディーネの助言は多分正しいのだろうが、思いついた趣旨とは違うなぁと口をとがらせる。
「なんかこう、だからみんなでやれるようなのって無いのかな」
「数多の種族に通じそうな演目はあるぞ」
 ぬと現れた鬼は百キロは軽くあるドラムセットをずんと置いてから指を二つ立てる。
「ドラムパーカッションとハウルだ」
「ハウルって、ラウドとは違うのか?」
「あくまで生物の特徴としての『遠吠え』だ。音を感知できる種ならば感覚的に心に触れる物ではある」
「それって歌とはまた別じゃね?」
「そうでもない。獣人の歌声などは結構クるものがあるぞ?」
 威嚇や共感という意味で遠吠えを使う獣人族は多い。実際ライオンに吼えられればじんと体に響く物がある。本能に叩き付けると言う意味ではひとつの選択肢、なのだろうが、果たしてそれは「音楽」なのだろうかと眉根を寄せる。
「ドラムパーカッションも言わずもがなだな。
 リズムの基本は心音に共通する」
「理屈は分かるけどなぁ……」
「楽しそうだからやりたいというのは理解できる。
 が、馴染まぬ音楽を短い期間で何とか取り繕っても残るのは悔恨だけという結果もありえる。それは決して楽しい物ではあるまい」
 一理ある。ともなれば最初に言われた同じ種族の者を探すというのは正しい提案なのだろうか。
「ただ提案としては好感が持てる。その提案に適切な良い曲があるのなら乗るかもしれねえな」
 獣人がばんと背を叩いて過ぎゆき、アンプの接続を開始するのを見て、桜は考える。
「どんな奴と、何をするか、か」
 デスロードや大図書館に行けばスコアはいくらでも見つかるだろう。 
 しかし大量に並べて「さぁどれだ?」というのは誘う側としては間違っているという指摘でもある。
「どうすっかなぁ」
 自分がやれる楽器、三味線の音色を想い浮かべる。その独特の響きは『興味』こそ与えるかもしれないが、それは果たして『共感』だろうか。
桜は自分も作業に戻りながら、彼らにすべき『提案』を考えるのだった。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
というわけで次回後半戦です。
多分あと2話で終わりかな。このお話はあくまでお祭りをのほほんと楽しむ感じですのでどうぞ自由によろしく。
『ミュージックフェスタ』
(2014/08/16)
 自分の歌に合わせて可愛く吼える使い魔の子犬を横目に、というか、緊張しないようにそっちをなるべく見ながらチコリは歌を続ける。
 この数日間、ミュージックフェスタをぶらついたチコリは、思い付きに反してやたらと多い聴衆に驚きながらもある結論に達していた。
 つまるところ「歌」単体に飽きている。飽きているというのは言い過ぎだが、ピンキリの歌手が歌いまくった結果、聴衆の耳が上位層を平均値と捉えてしまい、普通に考えれば充分職業としてやっていける歌も聞く対象から除外しはじめたのだ。
 そうすると必然的に聞くべき物が減ってくると。+αの比重が大きくなっていく。
 チコリの思い付きはその+αの一例、つまりパフォーマンスというものに偶然HITしていた。もちろんそれ専用でもない使い魔が美声で歌えるわけもないが、小さな犬が歌に合わせて吼える姿は微笑ましい。歌のレベルなど(酷い言い方ではあるが)どうでも良いとばかりに観客が集まっていると言う事だ。可愛いは正義。
 他にも目立つものといえば楽器の類だろうか。例えば楽器で無い物を楽器として演奏する者、シンセサイザーのように一つの楽器で数多の音を放つ物、馬鹿でかい、複数の楽器を組み合わせた物などが注目を集めているようである。
 そんな中でも歌単体で人を集めている者も居る。彼ら本戦出場確定の者達と、その他の様々な要素を織り交ぜて五日目のクロスロードは昼過ぎを迎えていた。

 予想しなかった数の拍手に顔を真っ赤にしてぺこぺこと頭を下げていたチコリは、ふと観衆の向こう側に不穏な影────もとい、いまからなにかやらかしそうな影を見た。
 というか、なんか顔がヤバイ。
「くっくっく、もはや我が覇道を阻む者は居ないっス!」
『……』
 呆れるという表現ができるのならば、できたてのAIにしては高性能と言うのも頷ける。
『私を作った事は評価に値しますけど、それ以降はぶっちゃけ私の手柄と思いますけどー?』
「何を言っているっス? すべてこの天才的な頭脳が導き出したストーリーっス!
 さぁ、ここに曲も揃った。フィギュアも絶賛作成中っス!
 今こそ、我が偉業を世に知らしめるっス!」
『まー、私としては良いんですけどね〜』
 ノートパソコンから流れ出すイントロ。ポップな感じはアイドルが歌うような媚びた、もとい可愛らしさを前面に押し出したものが街角に響き渡る。
 彼女が何をして来たかと言うと、とりあえず既存曲を覚えさせて演奏し、『萌え属性』なるなんとも不思議な物に運悪く、……魅了された者を確保。その中で作曲の才能がある人をピックアップして曲を作らせたのである。
 とまぁ、経過はどうであれ、ようやくオリジナル曲を手に入れたAIの歌姫はその歌声を披露するに至ったのだ。
「さぁ、聴衆よ! これが新時代のミュージックっスよ!!」
 いつも通りの大仰なポーズの元、その歌は─────

 ・・・・・
 ・・・・・

 五分後。
 あるぇ〜? という顔で立ち尽くすトーマの姿がそこにあった。
『続けます?』
 歌い終わったククが画面から問いかけるが、眉間をおさえたトーマは数秒のためらいのの後、そう主人に問いかける。
「い、いや、ちょっと待つっス」
 ノートパソコンから流れ出た曲も歌声も、決して悪い物ではない。無論最高かといえば色々と突っ込みどころはあるが、平均点は充分に超えていると思う。あと萌え属性による補正もあるはずだ。しかし街往く人々は何事かとトーマを見て、暫くその音を聞き、首をかしげて去ってしまうのである。
「おかしい、すべて揃ったはずっス。な、何が起きたっスか!?
 はっ!? ま、まさか!」
 がばっと顔を上げるトーマ。
「未来に行き過ぎて、時代が付いて来れてない────!」
「いや、えっと、トーマさん?」
 その寸劇を暫くどうしようかと眺めていたチコリだが、このままだとまた違う方向に暴走しそうだなぁと思い、しぶしぶ声を掛ける。
「おや、良く会うっスね。まさか、いや、この音に惹かれてやってきたんスね!」
「え、ええと。曲とはか可愛くて良かったと思いますよ?
 でも……」
 チコリは少しためらい、それから子犬の頭を撫でて、決心したように言う。
「ラジカセで曲流してるようにしか見えないのは、今回のイベントの範囲外では無いでしょうか……?」
『デスヨネー』
 チコリの余りにも的確すぎるツッコミに即座に同意するクク。
「……そ、そんな落とし穴があったなんて……!?」
 唯一、己の発明品の余りにも重大な欠点に今さらに至った自称天才ががっくしと膝を付く。
「機械さんが歌うのは面白いと思うのですが……普通に機械の人、歩いて喋って歌いますからね」
 周囲を見ればロボットやらアンドロイドやら、サイボーグやらを探すことは難しくない。
「時代じゃなくて、場所が悪かったと言う事ですね。
 というか、見た目?」
 ナノテクノロジーにまで手を届かせた世界とも繋がっているこのターミナルで、単に手に持ったノートパソコンから歌を響かせたところで、よほど劇的な曲で無ければ人が集まらないのも当然というものだ。
「こ、このパーフェクトでビューティホーな計画が、こんなところでとん挫するなんて……!」
「でも……見せ方」
 ぽつりとチコリが呟いた言葉にぴくりと反応するトーマ。
「あの、ほら、私くらいの歌でも、この子と歌ってたら結構お客さん見てくれたんですよね。そういう事じゃないでしょうか?
 ほら、見た目トーマさんがあやし……いえ、機械持ってつっ立ってるだけですし」
 あの怪しいオーラで逃げて行った客も少なくないだろうなぁと思ってもここは口を噤んでおく。
「なるほど、ビジュアルっスね! それなら今、ククのフィギュアが絶賛作成中っス!
 それを利用して……!」
「でも、アンドロイドとかにしたら結局目新しさは無いような……」
「くくく、この天才、エンターテイーーメントに関しても天才であるはずっス!
 必ずや! この町の誰もを魅了する、最強の歌姫を作り上げるっスよぉおおお!!
 優勝は頂きっスぅううう!!!」
 水を得た魚……というか、アドレナリン注入された雄牛のような暴走っぷりで走りだしたトーマの背を見送り、チコリは空を見上げる。
 今日は5日目。明日から決勝戦みたいなもので、そこに今から入り込むのは無理なんじゃないかなぁとか、思いながら。
 まぁ、トーマに言っても無駄なので、チコリはどこか空いてるステージ無いかなと考えながら町をぶらつく事にしたのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「どうだ?」
「俺は乗った。面白そうだしな」
「私もやるー。適当で良いんでしょ?」
「適当じゃなくて、一応基本となるリズムは合わせるんだぞ?」
「えー? どうやって?」
 桜の提案したパーカッションパフォーマンスは呼びかけたスタッフに比較的好意的に迎えられた。未経験者も含んで二十人ほどが賛同してくれたのは予想外だったが。
 というのも数日の祭りに当てられてか、何かやりたいと思ってた者は元々少なくは無かったのだが、音楽と言う物はどうにも敷居が高く見える。
 ましてやプロがひしめく中に割り込むとすれば気遅れもするだろう。
「いや、でもパーカッションって単純な分、難しいんだぜ?」
「どうせ余興だ。楽しいが優先だって」
「ってことはネタに走るか」
「バケツとかモップとか、そこらの機材使おうぜ?」
 桜の言葉に「いいねぇ」と声が上がる。
「よっしゃ、じゃあ未経験者こっち集合。経験者はあっち。経験者はいくつかパートに分けて、サブを未経験者割り振るか。誰か編曲できるか?」
「オデ、デキル」
 無骨なトロールが手を上げたのに皆がぎょっとするが、話を聞けば元々トロールの軍楽隊で、この世界に来てからも音楽に興味を持ち活動していたらしい。リズムパーカッションは自分の庭と言う事だ。
「よっしゃ、時間無いが裏方の作業もあるんだ。休憩や睡眠はちゃんととれよ。
パートわけは休憩時間が同じヤツをなるべく集めたほうが良いな」
 どんどん決まって行く内容に気を良くしながら桜が提案すれば
「進行係が居るから、こいつにわけさせようぜ」
「ダーランドさんにはこっちから許可とっておくよ。十分くらいなら時間ねじ込ませられるだろ」
 と、いろんな言葉が返ってくる。
 練習時間は恐らく合わせても十時間も無いだろう。が、やると決めたからには楽しんでやる。
「合わせは明日の夜。明日の昼前までにここのパートはリズムを提出な」
「おー!」
 誰かが桜の背をばんと叩いて去っていく。
 周囲の者達が楽しげに相談している。
 そんな空気の中、提案した以上、後悔はしたくないなと呟いて、桜は星空を見上げるのだった。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
というわけで次回が恐らく最終回となります。
さてはて、のんびりと進行しておりますが、一応は大惨事にはならないはずです。
ええ。誰かが変なことをしなければ。

というわけでリアクション宜しくお願いします。

  
『ミュージックフェスタ』
(2014/09/21)

「あれ? アルカさん?」
 ケイオスタウン側のニュートラルロード合流地点に設けられた特設会場で、観客としてやってきていたチコリは意外な人物を発見する。
「にゃ? やほー」
「アルカさんが決勝に出られなかったのですか?」
 町をぶらぶらしている間にチコリは彼女の歌を聞いているが、彼女の歌は圧倒的に何かが違った。あとから考えるとまるで複数のアルカの歌声を合唱しているような、そしてそれが完ぺきに唱和したことによる圧倒感があった。
周囲で聞いていた観客も、まるで時を止められたかのように一分ほど硬直し、それから夢から覚めたかのように、何が凄かったのか、感覚と記憶が曖昧なままに拍手を送っていたと思う。
「あちしはそもエントリーしてないし、呼ばれても辞退するにゃよ。あちしはバードでもシンガーでもないし」
「でも、完ぺきな歌声でしたよ?」
「そりゃーねぇ。完ぺきじゃなきゃ死ねるし」
 会話がかみ合ってないのかと眉根を寄せる。
「あれ? あちしの魔術見た事無かったっけ? ってまぁ、見てもわかるもんじゃないか」
「えーっと、詠唱の事を言っているのですか?」
「うん。あちしのはそういう詠唱プロセスの魔術なのよ」
 後で聞いた話によれば、アルカの魔術は圧縮言語による同時多重展開という特殊な技法らしい。即ち、たった一つの口と喉で数多の音の『和』を放つ事で『複数の詠唱を同時に行った』として結果を顕現させるという離れ業である。そしてそれはたった一音でも外せば全ての魔術が失敗すると言う事でもあり、それだけの魔術に失敗すれば即死しかねないフィードバックが術者を襲うだろう。そりゃ確かに『完ぺきでなきゃ死ねる』わけだ。
「ま、歌うのは好きだから、ちょっと飛び入りしただけって感じにゃよ」
「ちょっとであれは……」
 他の参加者が可哀想だとも思うが、言っても仕方ないか。
「んー、何考えてるのかわかるけど、決勝の面子見て思う事無い?」
 言われてチコリは舞台の上を見る。現在決勝に選ばれた参加者を紹介している最中だが、彼女が確実に決勝に残るだろうと思っていたうちの数人が見当たらない。
「決勝って人気とかで選ばれるのでしたっけ?」
「うん。確かそういうルールだったねぇ。
で、居ない連中は多分辞退したんだと思うにゃよ」
「どうしてです? アルカさんは色々ありそうですけど、他の方は吟遊詩人とか、そういう人たちだったと思いますけど」
「歌う理由と噛み合わないから、じゃないかな」
 『歌』や『音楽』は手段であり、その手段を用いる者の目的が皆等しいとは限らない。アルカのようにただ歌うのが好きだからちょっと参加してみた者も居れば、神聖な物だからと人前で歌う事を良しとしなかった者も居るのだろう。前に立つ者は自己表現の一環として、あるいは生活の糧として「聞いてもらい、評価されること」を望んだ者と言う事か。
 そこに善し悪しは無い。ただこの場に限るならば「人に聞いてもらう事」を主にした者の音楽は、それ故に聴衆には好ましいのかもしれない。
「以上が決勝に残った─────」
 司会が紹介を終えたらしい。いよいよ最終審査に入るのだろうというところで

「まぁてぇぇええええええええいいいいい!!!」

 それは現れた。

 その声音を聞いた事のある者はこのクロスロードには比較的多かろう。
 いろんなところに現れては悪目立ちする存在。ある意味ダイアクトーとスタンスが被ってるとさえ囁かれる彼女はいつの間にかステージの、それを照らす照明の上に立っていた。
「この大天才 トーマ様がプロデュースする存在を欠いて、このステージが成り立つと思って貰っては困るっス!!
 とぉっ!」
 ステージの枠組みからの華麗なジャンプ。
 だが、チコリは「あ」とやや呆れた声を漏らす。なにしろ彼女は、そんな高いところから飛び降りて五体満足に着地できるほど体術が達者でない。
 ごきゃり、と非常に痛い音を「音楽祭」用に設置されたマイクがしっかりと広い、観客のボルテージを一気に奪い取った。
「い、痛くない……っス」
 思いっきり涙目だったが、それくらいで済んだのなら幸運だったのかもしれない。
「え、えー、あー、トーマさん、飛び入りされるのは予選までにしていただきたいのですが……」
 静まりかえった開場の中、真っ先にプロ根性で我に返った司会がそう突っ込む。
「時代は常に変化するっスよ。今完成した傑作は今この時に最高であると証明されるべきっス!」
 大仰にポーズを決めるが、相当足首が痛いらしく、声が震えて涙目になっているのがシュールである。とりあえず舞台袖からスタッフとして参加していたらしいプリーストがやってきて簡単に治癒魔法を掛けた。もうグダグダである。
「ふふ、御苦労っス!」
「あー、委員長、どうします?」
「はっはっは、ロックじゃねえか。良いだろう。じゃあ決勝のオープニング張らせてやらぁ。観客はそれはあくまで欄外として見ろ! それでも評価したいなら票を入れな!」
 双角のデーモン、ダーランドの言葉にトーマはにやりと笑みを返す。
「それでは改めてお披露目っス! クク! 歌うっスよ!!」
『はぁーい』
 そして、突発のオープニングが始まったのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「良くも悪くも『オープニングセレモニー』って感じだったなぁ……」
 桜の言葉を耳に止めたウンディーネのスタッフが首をかしげる。
「あの飛び入りのヤツ? 派手で騒げる曲だったけど、なんていうか、極端な一ジャンルで好き嫌い激しそうだったわねぇ」
 あまり高評価でないコメントに桜は肩を竦める。
 トーマの作った『作品』はもはや『音楽』というより『映像作品』となっていた。
 加減と言う言葉を知らないユイにプロジェクターの製作を依頼した結果、彼女が設計した『空間に映像を投影する』装置は周囲百メートルを塗り替えたのだ。
そうして生みだされた世界で立体映像の少女が黄色い声を全力に歌い抜ける。そういうのが好きな人には好ましく、一瞬でも不快感を得てしまうと悪評価しか生まない、アイドルソング的な何かが展開されたのである。
ついでに言えば常時発動していた『萌え属性』にも問題があった。それを演出として気持ちよく受け入れるなら気にもしないが、良くも悪くも戦闘に従事する者の多い町。そういう精神系の効果に対し、反射的にレジストしてしまう者も少なくないし、そういう効果であると気付けばやはり不快感を得てしまう。
 そんなこんなで数カ月に渡る話題を提供した舞台は「一部の熱狂的なファン」を生みだす事には成功したが、大会の優勝という目標に対しては大失敗という結果に終わったのだった。
「でも、ああいうのに『飛び入り』ってのをやられると、結構キツいな」
 パンク風のスタッフからの言葉に桜は苦笑いをひとつ。
「だからって俺達が遠慮する必要はねーだろ?」
「勿論だとも。ま、最終決戦前の前座ってことで、好きなだけ盛り上がろうぜ」
 周囲からの「おう!」や「ヤー」などの楽しげな賛同の声。
 夕暮れ前、それはケイオスタウン側の活気に火が入れられる時間でもある。進行スタッフの合図の元、桜は己の楽器を手に、舞台へと向かう

 先陣を切るのはあのトロールだ。大型のドラムセットを肩に担いで舞台に上がり、派手にどしんと設置。シンバルが鳴り響き、幕間の弛緩した空気を集める。
 それを逃すまいと始まる力強い打音、そのリズムを中心として次々とスタッフが音を引っ提げて乗り込んで行く。
「それじゃあ決勝の準備をしている間に、スタッフ有志による飛び入りを演らしてもらおう! 楽器ってのは決められた物だけじゃない! なんでも楽器になるのさ!
 叩いてリズムをとって、乗れりゃ、そこに音楽はある!
 種族を越えて、世界を越えても、お前ら、分かっている事だよな?」
 司会のノリのいい言葉に次々と音が加わって行く。
 力強いリズムに数多の音が飛び込んでは去っていく。誰もが足で、体でリズムをとりたくなるような、『振動』が観客を駆け抜け、揺さぶって行く。
 リズムは一定間隔ごとに早くなっていく。その切り替えごとにメインを切り替え、音を作る。バケツを並べて叩いてみたり、タップダンスで音を作ったり、ゴーレムをフェアリーが叩きまくって音楽にしたり──────
 ゆっくりと『終幕』へ向かってボルテージを上げるように加速していく。
打音が観客と共振し、笑顔を作り、ニヤリとした笑みを作り、ぐっと握る拳を作り、揺れる体を作って行く。
(うわ、高揚感半端ねぇな、おい!)
 どこかふわふわして自分がちゃんとやれているのか不安になるが、トロールの叩き付けるようなリズムに間違いは無い。デッキブラシとバケツという変わり種でも音が紡がれ唱和していく。
 心臓の音が、血脈の音が、更に自分を高揚させる。
 そこから引きずり出したのは突如入り込んできたバスドラムの加速する音。クライマックスである事が急に物哀しくなるが、終わりは必要だ。なに、気にいったならばまたやれば良い。それだけの話だ。音楽に制限なんて要らない。
 意識を戻して、最後の最後でケッ躓くなんて格好の悪い事はできない。
 参加者が無意識に、しかししっかりと目配せして笑顔を零し、そして最後の一音を叩き付けたのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「あ、桜さん、おはようございます」
「ん? よぅ」
 一夜明けて。祭りの終わった開場の片づけまでがスタッフの仕事である。朝、職場に向かうチコリはそんなさなか、片づけをする桜とばったり遭遇した。
「片づけですか。気を付けてくださいね」
「おう、そんなヘマはしねぇさ。……そういえばトーマのやつ、あれからどこに行ったんだ? 相当拗ねてたみてえだが」
「あー、えーっとですね……」
 帰り路、チコリはトーマにも遭遇していたのだが、何と言うか……
「多分フィギュア作成に取り掛かってるんじゃないですかね……」
「は?」
 一定数以上のファンを獲得する事は確かにできていたのである。そこでノリで作ったフィギュアを紹介したところ、壮絶な反響があったらしく、必要数の確保のためきっと朝から走りまわっているのだろう。もしくはユイの所に押し掛けているに違いない。
「……なんつーか、タフな嬢ちゃんだな」
「同感ですね」
 祭りは終わった。けれどもきっと来年もまた祭りは開かれるだろう。
 残念な結果に終わった者も、何かを得た者も、そして栄光を得た者も居ただろう。
 様々な音に触れ、不快に思う事もあれば喜びを得た者も居るだろう。
 そんな様々な物を生みだしたそれは、この町の歴史の一つとして確かに刻まれた。
 そして、今日もクロスロードは目覚めて行く。

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 というわけでこれにて『ミュージックフェスタ』終了となります。
 桜さんには報酬として2万を差し上げます。
 また参加者全員に経験値4点を計上します。

 お疲れさまでした。次回のイベントもよろしくお願いします。
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