前歴2年。
つまりは管理組合発足から遡る事2年前、この多重交錯世界は一斉に門戸を開きました。
この日を『開かれた日』と呼びます。
この日から様々な理由で数多の世界の人間がこの多重交錯世界《ターミナル》に足を踏み入れたのです。
それから約一ヶ月でこの世界へ訪れた『来訪者』は約千名程度と言われています。
『来訪者』の大半は人間でしたが、そういう者にとっては『異形』とも言うべき種族も少なからずこの地へと訪れていました。
怪奇なる存在との遭遇は僅かながらの混乱も生みましたが、来訪者の多くが探索者や研究者であった事から順応も早く、やがて協力体制を結び、共同体のようなものが大小いくつか作られたようです。
彼らは《扉の園》の各所に陣取りこの世界の研究を始めました。
『開かれし日』から約半年。
ここに至った世界の中では本格的な入植に乗り出そうとする者が現れ始めます。
特にその意志が強かったのは
故郷たる世界を統一した大帝国『ヴェールゴンド帝国』と
同じく世界を統一していた『永遠信教』です。
『ヴェールゴンドの大征』と呼ばれる事件をきっかけに多重交錯世界に生まれかけていた安定は音を立てて崩れていきます。